東京都心 貸しオフィス空室率 11か月連続 上昇続く

企業の間では、テレワークが広がる中、貸しオフィスの契約を解除したり、スペースを縮小したりする動きが広がっています。東京都心では、オフィスの空室率が、先月まで11か月連続で上昇したとする民間の調査結果がまとまりました。

オフィス仲介で大手の「三鬼商事」は、毎月、1フロアの面積が100坪以上のオフィスビルの空室率や賃料などを調査しています。

それによりますと、東京都心の5つの区にあるおよそ2600棟のビルでは、貸しオフィスの空室率が先月は平均で4.82%でした。

これは▼前の月と比べて0.33ポイント高く、11か月連続の上昇となり、▼前の年の同じ月と比べると3.29ポイントと大幅な上昇となっています。

多くの企業がテレワークを推進する中、貸しオフィスの契約を解除したり、スペースを縮小したりする動きが広がっていることが主な要因です。

なかでも、テレワークを導入しやすいIT系の企業が多いとみられる▼港区では6.54%、▼渋谷区では5.23%と特に高くなっています。
ほかの地域の空室率は、▼札幌市が2.74%、▼大阪市が3.54%、▼福岡市が3.87%、▼仙台市が5.96%でいずれも前の月より上昇した一方、▼横浜市は3.58%、▼名古屋市は3.78%で前の月よりわずかに低下しました。

調査した会社によりますと、貸しオフィスは数年単位での契約が多いため、今後、契約更新の時期にあわせて移転や縮小の動きが続き、空室率はさらに高まる可能性もあるということです。

開発続く都心 一方で売却の動きも

東京都心では、貸しオフィスの空室率が上昇していますが、不動産各社は新型コロナウイルスの感染が収束すれば、オフィスの需要は回復するとみて、大規模なビルの開発を継続しています。

このうち、▼三井不動産は東京・中央区の日本橋や八重洲でオフィスビルの建設を進めています。

2025年前後に、貸しオフィスの床面積を2018年と比べておよそ1.5倍に増やす計画です。

▼三菱地所は東京駅の近くに2027年度の開業を目指して地上63階建てのビルを建設を進めています。

▼森ビルは港区・虎ノ門に新たなオフィスビルを2023年に開業する予定です。

大手各社の去年12月時点での貸しオフィスの空室率は、全国で▼三井不動産が3.5%、▼三菱地所が1.8%、▼東急不動産が0.9%といずれも平均を下回り、需要は堅調だとしています。

一方で、新型コロナウイルスの影響などで業績が悪化している企業が都心にある自社ビルを売却する動きも出ています。

▼大手音楽会社の「エイベックス」が港区・南青山にある本社ビルの売却を決めたほか、▼大手広告会社の「電通グループ」は港区にある本社ビルの売却を検討しています。

こうした動きはテレワークが定着し、都心に大きなオフィスを保有する必要性が薄れていることも背景にあります。

専門家「これから2~3年は空室率 上昇か」

東京都心でオフィスの空室率の上昇が続いていることについて、オフィスビルの市場調査やコンサルティングを行っている「オフィスビル総合研究所」の今関豊和代表は「テレワークを導入しやすいIT企業や、意思決定がはやいスタートアップの動きが現在の空室率に表れている。オフィスの賃貸借契約は数年単位で結ばれているものが多いので、大企業などの動きが今後、出てくる可能性があり、これから2年から3年ほどは空室率は上昇するのではないか」と分析しています。

そのうえで、「企業はこれまでは社員の人数によってオフィスの面積を決めていたが、今後は出社率という変数を考慮して面積を決めることになる。オフィスに行くことが前提の働き方に戻るとは考えにくく、会社に行くことで質の高いコミュニケーションがとれるとか、オンライン会議をしやすい設備があるといった新しいニーズに応えられるオフィスが求められるようになる」と話しています。