トヨタ 最終利益見通し 1兆9000億円に大幅上方修正

トヨタ自動車は、今年度1年間のグループ全体の最終利益の見通しを公表し、これまでの1兆4200億円から1兆9000億円に大幅に上方修正しました。車の需要が回復する中、アメリカや中国、日本などの主力の市場で販売が大きく伸びたことが主な要因だとしています。

トヨタ自動車は10日、去年12月までの9か月間の決算を発表し、グループ全体の売り上げは前の年の同じ時期と比べて15%減少して19兆5252億円、最終的な利益は14%減少して1兆4680億円でした。

新型コロナウイルスの影響で販売が一時落ち込み、前の年の実績を下回りました。

一方、今年度1年間の業績については、グループ全体の最終利益の見通しをこれまでの1兆4200億円から1兆9000億円に上方修正しました。

トヨタは、去年秋の中間決算の発表の際に最終利益の見通しを7000億円近く引き上げましたが、それに続く大幅な上方修正となります。

主な要因について会社では、世界的に車の需要が回復する中、アメリカや中国、日本などの主力市場で新型車を投入し販売を伸ばしたことや、生産現場の感染対策を徹底して稼働を維持したこと、さらに、車の製造にかかる費用をさらに低くしたことなどを挙げています。

また、今年度1年間のグループ全体の販売見通しもこれまでの942万台から973万台に増やし、新型コロナウイルスによる落ち込みからの回復が鮮明になっています。

トヨタ自動車の近健太執行役員は、オンラインの会見で「当たり前のことを当たり前にやったことの成果が出た。新型コロナウイルスの感染が広がった今期は新車の投入を当たり前のように始めるのも大変だったが、実際にできた。将来に向けた種まきをしっかりと継続し変革を加速させていきたい」と述べました。

“半導体不足 影響は限定的”

世界的な半導体不足の影響について近健太 執行役員は、オンラインの会見で「ひっ迫している状況はトヨタも同じだが、それによって減産があるかというとそういう状況ではない。半導体不足は『ことしの夏くらいまで続く』という声もあるが、部品を調達する部署や取引先が確認しているところでは、そこまでいかないかもしれないと感じている」と述べ、影響は限定的だとしたうえで、夏まで長引かないのではないかという見方を示しました。

また、影響を最小限に抑えた要因については「仕入れ先に対して確度の高い車の生産計画を長いものでは3年先まで示したり、在庫も1か月から4か月分を保有していたり、1次メーカーだけでなくさらにその取り引き先のメーカーとも緊密に連携をして1日に10回ほど電話会議をするなどコミュニケーションを取ったりしたことが基礎になったと思う」と述べました。

“原価抑制 徹底も利益につながった”

また、利益の見通しを大幅に上方修正したことについて近 執行役員は「経済の復興が自動車産業の使命だとして、販売店やサプライヤーなどと連携して取り組んできた。予定どおりに新車投入を行うことなど、当たり前ことをやるのが大変な時期だったが実際に行うことができた」と述べました。

また「工場が稼働していない時は、製造過程の費用をさらに抑えられないかネタ探しをやるなどした。稼働が再開すると固定費を抑えた状態で高い稼働を続けることができた」と述べ、原価を抑える活動を徹底したことも利益につながったという認識を示しました。

豊田社長「今回の発言は誠に遺憾」

一方、東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会の森会長による発言について、スポンサー企業のトヨタ自動車は、10日、決算に関する会見で豊田章男 社長のコメントを明らかにしました。

コメントでは「『スポーツを通じて平和で差別ない社会、すべての人々が参加できる社会を目指す』というオリンピック・パラリンピックの精神に共感してスポンサーになることにした。しかし、今回の発言は私たちが大切にしてきた価値観と異なっていて誠に遺憾だ」としています。

またコメントを代読した長田准 執行役員は「トヨタが何を大切にしているのか、世界をどのように見ているのかを正しく理解してもらうには沈黙をしてはいけないと判断した」と述べ、コメントを発表した理由について説明しました。