なぜ暖かいの?

なぜ暖かいの?
着ると暖かくなるという「吸湿発熱繊維」の肌着。冬の寒さをしのぐ心強い味方ですよね。でも、どうして暖かくなるのか、分かりますか?

問題に挑戦!

問題
「吸湿発熱繊維」は、人間の体から出される水蒸気が水へと変わることを利用した衣類です。なぜ「吸湿発熱繊維」を着るとあたたかいのか、下の文を参考にして理由を答えなさい。

参考:私たちは、体がぬれると、その水分が蒸発するときに、周囲から熱をうばうため、涼しく感じます。

(白百合学園中学校 2019年 改題)
こうした、暮らしに生かされている科学も、理科の知識からたどることができるんですよ。
参考の文がヒントです。
「体がぬれると、その水分が蒸発するときに、涼しく感じる」
これは、「気化熱」が関係しています。

気化熱とは

「気化熱」ということばは、聞いたことがありますか?
その知識をさらに深めると、「吸湿発熱繊維」の仕組みを理解することができます。
横浜国立大学教授で、服の素材や着心地を研究している、薩本弥生さんに聞きました。

まずは、気化熱から。
日常生活の中で気化熱にはどんなものがあるのでしょうか?
薩本さん
「夏の暑いときに、『打ち水』をしますよね。太陽光であたたまった地面に水をまくと、蒸発する現象を『気化』といいますが、その時に、熱を地面から奪って、水蒸気になります。このまわりから奪っていく熱のことを『気化熱』と言います」
液体の水が水蒸気、つまり気体になる際、まわりから熱を奪います。
このときの熱が「気化熱」。
熱が奪われるので、まわりの温度は、下がります。

水蒸気から水へ、そのとき…

では、逆に、水蒸気が水になるときは、どうなるのでしょうか。
薩本さん
「水蒸気だったものがエネルギーを放出して水になる、そういう現象が起きます」
水蒸気が水になるときは、熱を「放出」するんです。
このときの熱を「凝縮熱」といいます。
「凝縮熱」の原理を踏まえたうえで、ここからが、「吸湿発熱繊維」のヒミツです。
実は、人間の体からは、もともと汗をかいていなくても、水蒸気が出ています。
その水蒸気が、肌着が暖かくなることに関係しています。

ウールはなぜ暖かい?

薩本さんが行った実験です。
羊の毛・ウールを湿度30%に乾燥させて、ガラス容器に入れておきます。
これを、湿度70%の室内に出すと…
出してすぐの温度は20.5度でしたが、10分ほどで24.6度に。
湿度、つまり、ウールのまわりの水蒸気の量が変わっただけで、4度以上、上がりました。
その仕組みです。
繊維に水蒸気が、「吸着」します。つまり、繊維が、水の分子を表面の一部に集めて、動けなくさせていました。
これによって、動いていた時に使われていたエネルギーが、熱として放出されたのです。
この現象は湿度が肝心で、室温とは無関係に起きるといいます。
薩本さん
「動いていた水蒸気が動けなくなるということは、余分なエネルギーを、そこで放出しているということです。その放出した分のエネルギーが、熱としてそこに出ていっている状態になっています。打ち水した時の気化熱の逆の、凝縮熱に近いようなことが起きています」
ということで入試問題の答えは、
「体から出された水蒸気が水に変わるときに、周囲に熱を発する原理を用いているから」
となります。

ほかほか布団の秘密!?

この「吸湿発熱」。実は「干した布団」でも起きている、と薩本さんが教えてくれました。
薩本さん
「お日様がやっているのは、水蒸気を飛ばす作用までです。水蒸気を待っているところの『座席』が空いたので、人間の体から出ていった水蒸気が、自由に動いていたのが拘束されて、熱を放出する、ということが起きるんです。それで『あたたかい』という現象が起きます」
私たちが、干した布団で寝るとぽかぽか暖かく感じるのは、お日様の暖かさが残っているからではないんです。
もちろん、取り込んだ直後は太陽の熱で暖かいですけれど、取り込んで少したてば室温と同じレベルになります。

簡単に説明すると…
「お日様に干して水蒸気が飛んで、乾いた状態になった布団に人が入ると、体から出る水蒸気が吸い取られて、今回のテーマである『吸湿発熱』という反応が起きるから」なんです。

冬場の肌着の仕組みもそうですが、まだまだ知らないことは身近にたくさんあるんですね。
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