新型コロナ 米カリフォルニア州 医療ひっ迫と経済停滞深刻に

新型コロナウイルスの感染者数が最も多いアメリカで、状況が深刻なのが西部カリフォルニア州です。医療現場では、重症の患者が増える一方で看護師の数が不足しています。そして、公立の病院では、経済の停滞による税収減が医療の質の低下にもつながりかねない状況となっているようです。

アメリカ西部カリフォルニア州では、去年11月の感謝祭の休暇のあとから状況が悪化し、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、去年12月には1日当たりの新たな感染者の数が6万人を超える日もありました。ここ2週間は、平均で1日当たりおよそ1万5000人で推移していますが、医療現場に大きな負担がかかっている状況は変わらないといいます。

特に状況が深刻なのがロサンゼルスなどカリフォルニア州の南部です。

こうした中、ロサンゼルス郊外にある公立病院の放射線科の鈴木ありさ医師が今月5日NHKのインタビューに応じました。

鈴木医師は、現在の状況について、「いちばん大変なのは患者の数が多いことです。重症化する患者が多くなれば、病院のリソースは足りなくなります。ICU=集中治療室の病床は満床の状態が続いています」と説明しました。

そして、鈴木医師は、「ICUに看護師を回すために手術室や外来から配置換えをするので、通常の業務をしてくれる看護師が減ってきます。退職した人を呼び戻したり、軍から来てもらったりしたという話を聞きました」と述べ看護師が不足していることを明らかにしました。

また、「ICUでふだんは看護師がやっている業務を医師がボランティアとしてやることはあります。私も患者のベッドを押したり、車いすを押したりということはやりました。アメリカでは医師と看護師の仕事の境目がはっきりしているのでふだんはそういったことは一切手を出しません」と状況を説明しました。

一方、ロサンゼルスなどでは、状況が多少は改善したとして、先月29日に、飲食店の屋外の席での営業などがおよそ2か月ぶりに再開しましたが、経済が停滞している状況は続いています。

これについて、鈴木医師は、「公立病院の予算は売上税から出ているので、税収がないと病院が回らないという仕組みになっています。労働時間の削減だけでなく、退職させられる可能性もあるという正式なメールが2回ほどきました。予算がなければどうしようもありません」と述べ、長引く経済の停滞が公立病院の医療の質の低下につながりかねないという危機感を示しました。