中国 春節の大型連休 人の移動減らすために厳しい対策も

中国では11日、旧正月の春節に合わせた大型連休が始まります。新型コロナウイルス対策として人々の移動を減らすための厳しい対策が取られていて異例の連休になりそうです。

新年を旧暦で祝う中国では12日に旧正月の春節を迎え、これに合わせて11日から17日まで1週間の大型連休となります。

例年、帰省する労働者や観光客など、多くの人が移動しますが、中国政府は、感染リスクを抑え込むためことしは今いる場所で過ごすよう呼びかけています。そのうえで、農村部に帰省する人にはPCR検査を義務づけるほか、帰省後も検査や健康状態の報告を求めるなど、厳しい対策を取っています。

こうした対策によって春節前後の40日間に移動する人の数は、感染が拡大していた1年前よりもさらに2割ほど少ない、延べ11億人余りになると見込まれています。高速鉄道や飛行機の利用者が大幅に減るほか、多くの人が集まる会食も控えるよう呼びかけられていることから、景気への影響は避けられない見通しです。

中国では先月、一時、新型コロナウイルスの感染者が増加しましたが、このところは、国内での感染者は1日当たり10人を下回る日が続いています。

しかし、政府は、来月5日から最も重要な政治日程の1つである全人代=全国人民代表大会の開催を首都・北京で控えていることもあって感染状況に神経をとがらせていて今回は異例の連休になりそうです。

「健康コード」システムの利用促す

感染拡大を防ぐため政府が強化している対策の1つが個人情報や行動履歴などをもとに感染リスクを示す「健康コード」と呼ばれるシステムの利用です。

スマートフォンで氏名や電話番号などの個人情報を登録すると、住んでいる地区の感染状況などのデータをもとにリスクが高い順に「赤」、「黄」、「緑」の3段階で感染リスクが示されるもので、去年から運用されていますが春節を前に利用が強く促されています。

北京では、多くの飲食店や商業施設が健康コードを提示しないと入れなくなっています。また、配車サービスを利用する際にも、健康コードに乗車履歴の記録を求められることが増えています。

健康コードは、PCR検査の結果やワクチンの接種履歴とも結び付けられていて、帰省などで移動する際にも必要に応じて提示することになっています。

春節で移動しない人に優遇措置も

帰省などをせず、今いる場所で春節を過ごす人を対象にしたさまざまな優遇措置も各地で実施されています。

北京では、携帯大手各社が20ギガバイト分のデータ通信を無償で提供するサービスを実施しています。帰省の代わりにビデオ電話でやり取りする際などに役立ててもらうねらいです。

また、春節の前後にかぎってデパートなどの一部の店舗で使えるデジタルマネー、200人民元分、日本円でおよそ3200円分が抽せんで5万人に配られます。配られるのは中国人民銀行が発行の準備を進めている電子的な法定通貨「デジタル人民元」で、希望者はスマートフォンのアプリで申し込むことなっています。

さらに、企業の中には、帰省しない従業員や利用客向けの取り組みに力を入れるところもあります。

このうち大手の火鍋チェーンは、国内の800店余りで働くおよそ8万人の従業員に帰省をしないよう呼びかけていて期間中に働く人には売り上げの一部をボーナスとして支給するなど、特別な手当を支給します。

また、店内の個室にタッチスクリーンのモニターを新たに設け、利用客が、離れた別の店舗にいる家族や友人とビデオ電話で会話したり、双方向でやり取りするゲームをできるようにしたりしてオンラインで帰省した雰囲気を味わえるようにしています。

火鍋チェーンの店長は「多くの人が政府の呼びかけに応じて住んでいる場所で年越しをすると思いますが、オンラインでつなぐことで距離を近く感じることができると思います」と話していました。

中国政府 ワクチンの接種を加速

中国政府は、春節を前に感染対策を徹底させるため、新型コロナウイルスのワクチンの接種を加速させています。

中国では、去年7月から医療従事者などへのワクチンの緊急使用を始め、12月には物流や公共交通機関のスタッフなどにも対象を拡大しました。

使われているワクチンは、中国の製薬会社「シノファーム」と「シノバック」がそれぞれ開発したもので接種回数は、今月3日の時点で、延べ3100万回を超えたということです。

北京では、医療機関や臨時会場など200か所余りで接種が進められていて、このうち、文化施設に設けた臨時会場が先月、外国メディアに公開されました。施設内には20のブースが設けられ、看護師が次々にワクチンを接種していました。接種を受けたという女性は「接種後1時間くらいは少し痛みもありましたが、その後の仕事や生活には何の影響もありませんでした」と話していました。

中国政府は、今後、対象を高齢者にも拡大するなどして、多くの人が免疫を獲得することで感染が広がりにくくなる「集団免疫」の状態を目指す計画です。