WHO 武漢調査チーム 「研究所からウイルス流出可能性低い」

新型コロナウイルスの発生源などの解明に向けて中国・武漢を訪れているWHO=世界保健機関の調査チームは現地での活動を終えるのを前に記者会見し、アメリカのトランプ前政権が主張していた、武漢にある研究所からのウイルスの流出について、その可能性は低いとする見方を示しました。

日本を含む各国の専門家で作るWHOの調査チームは、先月29日から武漢での本格的な調査に入り、これまでに感染拡大の初期に多くの患者が確認された海鮮市場やコウモリのコロナウイルスの研究で知られ、アメリカのトランプ前政権がウイルスが流出した可能性があると主張していた「武漢ウイルス研究所」などを視察し、関係者からの聞き取りを行ってきました。

調査チームのメンバーは9日夜、中国側の専門家らと合同で現地で記者会見し、この中でWHOのピーター・ベンエンバレク氏は「武漢ウイルス研究所」からウイルスが流出した可能性について「極めて考えにくい」と述べました。

理由については、研究所でのウイルスの管理状況を調査した結果だなどと説明しています。

一方、中国政府が冷凍食品などを通じて海外からウイルスが運び込まれ、ヒトへの感染が広がった可能性があると主張していることに関しては、どんな条件のもとでそうした状況が起き得るのか、具体的に調査する必要があると指摘しました。

さらに、ベンエンバレク氏は、新型コロナウイルスはコウモリなどの宿主から他の生き物を介し、ヒトに感染するようになった可能性が考えられるとして、今後、さらに調査を進めていく考えを示しました。

今回の調査では、中国共産党のもと感染の封じ込めに成功したとアピールする展覧会など、中国政府の宣伝色の強い施設の視察にも多くの時間が割かれました。

調査チームのメンバーは10日、武漢を離れ、帰国の途につく予定です。

アメリカ政府「調査結果を詳しく検討」

WHO=世界保健機関の調査チームが中国・武漢にある研究所からウイルスが流出した可能性は低いとする見方を示したことについて、アメリカ、ホワイトハウスのサキ報道官は9日の会見で記者から同意するかと問われたのに対して、「われわれは感染拡大の初期の情報について中国とWHOに透明性が必要だと懸念を表明してきたが、今回の調査には直接関わっていない。調査結果を詳しく検討することを楽しみにしている」と述べ、WHOから調査結果を受け取り、アメリカ政府としても内容を検討する考えを示しました。