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ファイザーのワクチン 接種6回の予定も採取は5回分のみ 厚労省

アメリカの製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省はこれまで1つの容器で6回の接種を予定していましたが用意した注射器では5回分しか採取できないことを明らかにしました。

一方、ファイザーは1つの容器で6回の接種を前提にしているため現在、計画されている供給量で接種を受けられる人数は2割近く減る計算になり、供給の時期などに影響が出ることも懸念されます。
日本政府は、ファイザーとの間で年内に7200万人分、接種回数にして1億4400万回分のワクチンの供給を受ける契約を交わし、今月12日に専門家でつくる部会を開いて承認の可否を判断する方針です。

厚生労働省によりますと、ファイザーが1つの容器で6回の接種を行う方針を示していたのに対し、これまでに用意した注射器では、シリンジと呼ばれる筒の部分の仕組み上、5回分しか採取できないことが分かったということです。

このため、ファイザーが現在、計画しているワクチンの供給量では日本で接種を受けられる人数が計算上、17%減少することになります。

6回分を採取するためには別のシリンジが必要で、十分な数を確保できるめどは立っていないということです。

このため、厚生労働省は、全国の自治体に対して、1つの容器から採取するワクチンを5回分に変更するよう近く通知する方針です。

厚生労働省は、ファイザーから供給されるワクチンについて接種の回数で契約しているということですが、必要になるワクチンの総量が増えることで、日本への供給の時期などに影響が出るおそれもあります。

ファイザーからは去年12月に「6回の接種を検討している」と連絡を受け、先月になって正式に方針を伝えられたということです。

厚生労働省は契約通りの人数に接種できるようすでにファイザーと交渉を始めていて、「現時点では供給への影響についてコメントできない」としています。
ファイザーは、「バイアル」と呼ばれる容器に一定の決まった量のワクチンを入れて各国に供給しています。

欧米では、ワクチンの内容量が当初、想定していた5回分より多かったことから特殊なシリンジを使って6回分を採取することを認めています。

このうちアメリカでは先月から6回分の採取が認められ、供給を受ける2億回分のワクチンについて、予定を2か月前倒ししてことし5月末までに供給される見通しとなったと現地のメディアが伝えています。

また、EU=ヨーロッパ連合やイギリスも、1つの容器で6回接種することを認めています。

一方、厚生労働省によりますと、日本で一般的に使われている注射器では、注射をした際により多くの薬液が針とシリンジの間に残る構造になっているため、特殊なシリンジを使った場合に比べて必要となる薬液の量が増えるということです。

このため、1つの容器から5回分のワクチンしか採取できず、容器に残ってしまった分は廃棄される見通しだとしています。

各国でワクチンが不足するなか、欧米に比べて供給されるワクチンを効率的に接種に使えないことに、国際社会から懸念の声が上がることも予想されます。

加藤官房長官「ファイザーと調整が必要と聞いている」

加藤官房長官は、午後の記者会見で「6回採取するには特殊なシリンジ=注射器の部品が必要で、特殊なシリンジの必要量を確保するのは非常に困難といった課題もあり、厚生労働省において近日中に自治体向けの手引きを改正し、連絡を行うと承知している」と述べました。

そのうえで「政府としては、すべての国民に提供できる数量について、基本的対処方針にのっとって必要な数量の確保に向けてしっかりと取り組み、接種体制の構築にかかる自治体や医療機関にも正確でわかりやすい情報を提供していきたい」と述べました。

また、接種回数の変更により必要になるワクチンの総量が増えることから、今後の供給に影響が出るのではないかと問われたのに対し、加藤官房長官は「私が承知している範囲では、ファイザーと調整が必要と聞いている」と述べました。

ファイザー「日本で承認されれば契約通りに供給」

ファイザーはNHKの取材に対し、「日本でワクチンが承認されれば、契約通りに1億4400万回分を供給できようにする」などとコメントしています。

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