ミャンマー クーデターから1週間 公務員がストライキの動きも

クーデターから1週間がたったミャンマーでは軍に対する市民の抗議活動がさらに拡大し、若い公務員たちがストライキを行う動きも出ています。一方、国営テレビは「国の平和や人々の安全を脅かす行為は法で裁かれなければならない」とする声明を伝え、軍としては抗議の動きをけん制するねらいがあるとみられます。

ミャンマーでは今月1日、軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領などを相次いで拘束し、非常事態宣言を出して全権を掌握しました。

こうした軍の動きに対する市民の抗議活動はミャンマーの全域に拡大していて最大都市のヤンゴンでは8日も数万人規模のデモが行われ、大勢の人が幹線道路に出てスー・チー氏らの解放などを訴えました。
またデモの参加者らによりますと、若い公務員たちの間では軍の統治を拒否する意思を示すためSNSでストライキを呼びかけあっていて、教員からも賛同する動きが出ているということです。

一方、ミャンマーの国営テレビは8日午後「国民への要請」とする声明を速報で伝えました。

声明は「民主主義の名のもとに他人に対する強要や脅迫などの違法行為が行われている。国の平和や主権、人々の安全を脅かす行為は法に従って裁かれなければならない」としています。

この声明がどの機関から出されたかは明らかにされていませんが、軍としては拡大を続ける抗議活動をけん制するねらいがあるものとみられます。

首都のネピドーでは8日、抗議活動をしていた人たちに向かって警察が放水を行い、ロイター通信は目撃者の話として複数のけが人が出たと伝えています。

スー・チー氏の弁護士「いまも連絡とれていない」

アウン・サン・スー・チー氏が率いる政党、NLD=国民民主連盟から依頼を受け、スー・チー氏の弁護を担当するキン・マウン・ゾー弁護士が8日、NHKのオンラインでのインタビューに応じました。

この中で、今月1日に軍に拘束され、首都ネピドーの自宅で軟禁されているスー・チー氏についてキン・マウン・ゾー弁護士は「法律上、捜査当局に拘束された人は弁護人と面会する権利があるが、いまも連絡が取れていない」として、詳しい状況はわかっていないと述べました。

そのうえで、当局に対し、スー・チー氏との面会を繰り返し求めているにもかかわらず、拘束から1週間たったいまも認められていないことを明らかにしました。

キン・マウン・ゾー弁護士は「スー・チー氏らを守るためにできるだけのことをする。国際社会にはミャンマーで何が起きているのか真実を知ってほしい」と述べ、国際社会に対し支持を訴えました。

経済顧問を務める豪人男性も拘束

オーストラリアのペイン外相は、ミャンマーでアウン・サン・スー・チー国家顧問の経済顧問を務めるオーストラリア人の男性が拘束されたと明らかにしました。

拘束されたことが明らかになったのは、オーストラリア人の経済学者、ショーン・ターネル氏です。

ペイン外相は8日の会見で「オーストラリアはミャンマーの状況を深く憂慮している。ターネル氏は直ちに解放されるべきだ」と述べ、現地のオーストラリア大使館が情報収集を続けていると明らかにしました。

複数のメディアは、ミャンマーでの今回のクーデターに関連して外国人が拘束されたことが明らかになるのは初めてとみられると報じています。

クーデターを起こした司令官を知る元将軍は

クーデターを起こしたミャンマー軍のミン・アウン・フライン司令官を知る、隣国タイの元将軍が8日、NHKの取材に応じました。
取材に応じたのは、ミン・アウン・フライン司令官と親交の深かったタイのプレム元首相の側近で、陸軍の元将軍のピサヌ・プタウォン氏です。

ミン・アウン・フライン司令官は軍出身のプレム元首相がおととし亡くなるまで、毎年2回タイを訪れ元首相と面会し、ピサヌ氏も同席していたということです。

ピサヌ氏は、ミン・アウン・フライン司令官の人物像については「とても静かで穏やかな人だった。軍政から民政への移行期だったためタイを訪れた際には、必ず本屋に行き、現代の世界情勢について知識を得ようとしていた」と話していました。

また、ピサヌ氏は、ミン・アウン・フライン司令官がプレム元首相から繰り返し助言を受けていたことを明らかにしたうえで「プレム元首相が司令官に、『民主主義はそれぞれの国にあった形にするべきだ。欧米の民主主義をそのまままねても、各国の伝統や文化が異なり、うまくいかない』と伝えると彼はそれに同意していた」と述べました。

一方、ミン・アウン・フライン司令官が総選挙のやり直しを行うと主張していることについて「それぞれの国にあった形の民主主義にするという考え方を自分の国で今後生かすのではないか」と話していました。

ジェトロ ヤンゴン事務所「長期化を心配している」

クーデターの経済面への影響についてジェトロ=日本貿易振興機構のヤンゴン事務所はNHKの取材に対し「ここ数日でデモの参加者が増えていて、工場で勤務する人たちが休暇をとってデモに参加する動きもみられる。現時点で貿易や物流には大きな影響は出ていないが、ミャンマー最大のヤンゴンの港でもデモが行われていて、長期化を心配している」として事態が長期化することに懸念を示しています。

そのうえで「今回のクーデターでミャンマーに対する海外からの新規投資に影響が出ないか注視している。また、今後、国際社会が制裁などの動きに出た場合EU=ヨーロッパ連合などへの輸出関連産業にも影響が出てくる可能性もある」と指摘しています。

現地の日本人「相当な数の市民が抗議活動」

ヤンゴンの海外人材派遣会社で働く今村昌史さんは「先週は何事もない日常どおりの雰囲気だったが、6日から相当な数の市民が外で抗議活動を行うようになり急に状況が変わってきた」と話しています。

今村さんはまた「市民の間では8日は仕事を休んで抗議活動に参加しようという風潮になっている」とも話していて、8日は多くの企業が休んでいるということです。

さらに、8日は7日よりも抗議活動の参加者が増えているようだとして「ヒートアップしている感じがする。もし暴動が起きたりするとちょっと怖い」と話していました。

また生活への影響については、スーパーマーケットは通常どおり営業しているところもあるということですが、先週末に一時遮断されたインターネット通信について「いつ何が起きるかわからない状態だ」として再び遮断されるのではないかと心配していました。

そして今後の状況について今村さんは「不透明なことが多すぎてなかなか生活のめどが立たず、みんな落ち着かない状態で過ごしている」と話していました。

タイとの国境の街では

ミャンマー南部の国境の町では、アウン・サン・スー・チー氏が率いる政党の旗が8日も複数の住宅に掲げられているのが確認でき、軍に対する不満の高まりがうかがえます。

NHKは8日、ミャンマー南部の国境の町、ミャワディーについて川を挟んだ対岸のタイ側の高台から取材しました。

高台からは軍に対する抗議活動は確認できませんでしたが、スー・チー氏が率いる政党、NLD=国民民主連盟の旗が8日も複数の住宅に掲げられているのが確認でき、軍に対する不満の高まりがうかがえます。

ミャワディーに隣接するタイ側の町、メーソートに暮らすミャンマー人の男性は「クーデターは絶対に受け入れられない。今後、軍がデモ隊を弾圧するのではないかと心配している」と話していました。

ミャンマー経済と軍

ミャンマーでは軍事政権が長く続いたため、経済面でも軍に関連する企業の影響が残っているとされています。

大手ビールメーカー「キリンホールディングス」が提携を解消する方針を発表した大手複合企業「ミャンマー・エコノミック・ホールディングス」は投資業のほかにも鉄鋼業や木材業などを手がけているということで、幅広い経済活動に軍の影響力が及んでいることがうかがえます。