飲食宅配サービス 他業種から“従業員シェア”本格化

新型コロナウイルスの影響で需要が高まっている飲食の宅配サービスの業界がほかの業種から一時的に従業員を受け入れる「従業員シェア」の取り組みを進めています。人手不足の解消をねらう宅配サービス側と雇用の維持に悩む企業との間の新たな人材活用策として注目を集めています。

宅配サービス大手の「出前館」は、外出の自粛や飲食店の営業時間短縮の影響で取り扱いが増えていて、配達する従業員の人手が不足しています。

このため会社では異業種の企業と提携し、提携先の従業員に配達の仕事を担ってもらう取り組みを先月から本格化させています。配達の件数に応じた料金を会社が提携先の企業に支払う仕組みで、今後、飲食店や観光業など新型コロナの影響で経営に打撃を受けている企業との提携を拡大することにしています。

こうした取り組みは「従業員シェア」と呼ばれ、人手不足が深刻な企業と雇用の維持に悩む企業との間での新たな人材活用策として注目を集めています。

出前館の清村遙子取締役は「短縮営業や休業を余儀なくされている企業の雇用を守る意義があり、観光業や食品会社など連携する企業を増やしたい」と話しています。

“従業員シェア”参加の飲食店は

従業員シェアに参加している企業の1つで神奈川県内で9店舗の中国料理店を運営する会社は、このうちの4店舗を宅配サービスの拠点として活用しています。

中国料理店としての営業も続けていますが、宅配サービスの注文が入れば、ほかの飲食店の商品を従業員が配達します。

この会社は新型コロナウイルスが広がった去年の春以降、休業や営業時間の短縮が相次ぎ、売り上げが大きく落ち込みましたが、調理や接客を担当する従業員の一部を宅配サービスの人材に切り替えることで、およそ60人の雇用を維持できたとしています。宅配の需要が高まったことで、さらに新たに20人の従業員を配達要員として採用したということです。

この会社の潘益強社長は、「ほかの店の料理を運ぶことで売り上げにもつながり、雇用の面でも重要だ。当面この状況は続くと思うので宅配事業に力を入れたい」と話していました。