大企業 非正規労働者の一部に休業支援金 先月8日以降から支給

休業手当が支払われない人を支援する「休業支援金」について、厚生労働省は大企業で働く非正規労働者の一部を対象にすることを決め、緊急事態宣言の影響を踏まえ、先月8日以降の休業に対して、支援金を支給することになりました。

「休業支援金」は、新型コロナウイルスの影響で企業の指示で休業したにもかかわらず休業手当が支払われない人を支援する制度です。

中小企業で働く人を対象に1日、1万1000円を上限に賃金の8割が支給され、厚生労働省によりますと、先月28日の時点で84万9384件、金額にしておよそ672億円が支給されました。

一方で支援金の対象ではない大企業で働く人から休業手当が支払われないという相談が相次ぎ支援を求める声が出ていました。

このため厚生労働省は、「休業支援金」について大企業で働く非正規労働者の一部を対象にすることを決めました。

対象は契約上、勤務する日が明確に決まっていないアルバイトなどのシフト制労働者や1日単位の日々雇用で働く人、それに、人材派遣会社に登録し、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」で働く人などです。

厚生労働省は緊急事態宣言の影響を踏まえ、先月8日以降の休業に対して支援金を支給することにしていて、対象の期間は宣言が解除された月の翌月末までとする方針です。

厚生労働省は申請の受け付けを今月中に始める予定で、詳細については今後、公表するとしています。

「雇用調整助成金」の助成率引き上げも

企業が従業員に支払う休業手当についての支援を強化するため、厚生労働省は「雇用調整助成金」の要件を一部、緩和しました。

厚生労働省は、今回の緊急事態宣言を受けて「雇用調整助成金」の助成率を大企業も最大100%に引き上げ、助成金を活用して従業員に休業手当を支払うよう呼びかけています。

一方で、去年1月24日以降に従業員を解雇するなどした場合は、助成率は大企業と中小企業のいずれも最大で80%となっていました。

厚生労働省は、緊急事態宣言が出された地域で要請を受けて営業時間の短縮などを行っている企業や、売り上げが30%以上減少した企業は、先月8日以降に解雇などをしていなければ、大企業・中小企業のいずれも助成率を100%に引き上げることを決めました。

厚生労働省は、この助成率の引き上げは緊急事態宣言が解除された月の翌月末までの特例措置とする方針です。

「休業手当支払われず」相談相次ぐ

大企業で働く非正規雇用の人たちからは休業手当が支払われないという相談が相次いでいます。

飲食店で働く非正規雇用の人などでつくる労働組合「首都圏青年ユニオン」には、去年4月からこれまでに電話やメールで1000件近くの相談が寄せられています。

このうち、およそ8割がパートやアルバイトなど、シフト制で働く人たちからの休業手当に関する相談だということです。

中でも、去年12月ごろから目立つようになってきたのが、大企業で働く非正規雇用の人たちからの相談で、生活が苦しくなっているという声が増えているということです。

寄せられた相談のメールの中には、「このままでは生きていくのすら難しい。助けてください」といった、切実な声もありました。

休業支援金 支援拡大の経緯

新型コロナウイルスの影響が続くなか、営業時間の短縮などに伴い、企業の中には従業員を休業させたり労働時間を短くしたりして対応しているケースが多くなっています。

労働基準法は企業の指示で従業員を休ませた場合、平均賃金の6割以上の「休業手当」を支払わなければならないと定めています。

厚生労働省は、新型コロナの感染拡大に関係した休業が企業が指示したものにあたるかどうかは、個別のケースによって異なるとしたうえで、企業側に法的な義務があるかどうかにかかわらず、従業員の暮らしを守るために「雇用調整助成金」を活用して休業手当を支払い、雇用を維持するよう呼びかけてきました。

しかし、中小企業では、資金繰りに余裕がなかったり、従業員の数が少なく事務処理が負担だったりして雇用調整助成金を活用できないという声が相次ぎました。

このため厚生労働省は、休業手当が支払われない中小企業で働く人を支援しようと、去年7月、「休業支援金」の制度を緊急に設けました。

「休業支援金」は労働者が直接、申請することができ、1日、1万1000円を上限に賃金の8割が支給されます。

その一方で、大企業で働く非正規労働者からは休業手当が支払われず、休業支援金の対象でないため、生活が苦しいなどと、支援を求める声が相次ぎました。

とくに、シフト制で働くアルバイトなどからは「企業からシフトを組んでおらず、勤務日が決まっていなければ、休業を指示したことにならず、法的義務はない」として、休業手当を払ってもらえないという相談が労働組合などに多く寄せられました。

厚生労働省によりますと、労働基準法では、勤務日が明確に決まっていないシフト制で働く人を想定していないため、休業手当の支払い義務についても詳しく明記されていません。

このため、企業がシフトを示さずに休業手当を支払わない場合は、法律に基づく指導が難しいということです。

新型コロナウイルスの感染拡大で雇用への影響が広がる中、休業支援金の対象ではない大企業で働くシフト制労働者などの支援をどう進めるべきかが課題となっていました。