新型コロナ 抗体保有の割合 5都府県すべてで1%下回る

新型コロナウイルスに感染して抗体を保有している人の割合について厚生労働省が、去年12月に東京都や大阪府など5つの都府県で調査した結果、いずれも1%を下回ったことが分かりました。厚生労働省は「大半の人はまだ抗体を保有しておらず、引き続き感染対策を徹底してほしい」としています。

新型コロナウイルスに感染すると「抗体」と呼ばれるたんぱく質が体内で作られるため血液を検査することで過去に感染していたかどうか調べることができます。

厚生労働省は、感染の広がりを判断する目安にしようと、去年6月に東京都と大阪府、宮城県で抗体検査を実施し、5日、愛知県と福岡県を加えた2回目の検査の結果を公表しました。

調査は、去年12月14日から25日にかけて希望者から無作為に抽出した20歳以上の男女など合わせておよそ1万5000人を対象に行われ、抗体を保有していた人の割合は
▼東京都が0.91%、
▼大阪府は0.58%、
▼愛知県は0.54%、
▼福岡県は0.19%、
▼宮城県は0.14%でした。

このうち東京都は、今回から希望者を募ったうえで調査をした結果、前回を0.81ポイント上回りました。

また、前回と同じ方法で調査した
▼大阪府が0.41ポイント、
▼宮城県は0.11ポイントそれぞれ増加しましたが、
調査が行われた5都府県すべてで依然として1%を下回っています。

厚生労働省は「大半の人が抗体を保有していないことが明らかになった。感染した人でも抗体がなくなっている可能性もあり、引き続き感染対策を徹底してほしい」としています。

前回調査や感染者割合との比較

今回の調査では、2種類の検査でいずれも抗体が確認された人の割合を調べました。

結果は、
▽東京都が3399人中31人で0.91%、
▽大阪府は2746人中16人で0.58%、
▽愛知県は2960人中16人で0.54%、
▽福岡県が3078人中6人で0.19%、
▽宮城県は2860人中4人で0.14%となっています。

また、各地で実際に確認された人口に占める感染者の割合は、抗体検査が行われた時期に近い去年12月7日の時点で
▽東京都が0.32%、
▽大阪府が0.26%、
▽愛知県が0.15%、
▽福岡県が0.12%、
▽宮城県は0.06%でした。

今回、明らかになった抗体の保有率との差は、最も開きが大きい東京都でも0.6ポイント程度となっています。

これについて厚生労働省は「感染者の比率と抗体の保有率の差はそれほど大きくない。保健所などの調査で適切に感染者を見つけ出すことができているのではないか」としています。

田村厚労相“『集団免疫がある』という話では全然ない”

田村厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「自治体ごとに、かなりばらつきが出ているが、いずれの自治体も抗体保有率は1%足らずなので『多くの人が新型コロナウイルスにかかり、集団免疫がある』という話では全然ない。引き続き感染防止に向けて、各地でそれぞれの人たちが努力してもらわないといけない」と述べました。

日本感染症学会理事長「集団免疫獲得とは言えない」

国が行った抗体を保有している人の調査結果について、日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「感染者が最も多い東京でも0.91%で、欧米などに比べると日本はまだ感染者が少なく、感染が爆発的に広がっているような状況ではないように思う。マスク着用や3密を避けるなど、多くの人が感染対策を徹底していることが数値に反映されている面もあるだろう。その一方で、まだ感染した人は少なく、集団免疫を獲得したとは当然言えない状況なので、感染対策はしっかりと継続していく必要がある」と話しています。

また、舘田教授は「今後、ワクチンの接種も始まるが、調査を継続して人々の免疫の獲得状況を確実にとらえて対策に生かすべきだ。また、飲食業など感染が広がることが多い特定の業種の人たちに対して調査を行うなど、どんな環境、どんな場面で感染拡大のリスクがあるのか明らかにすることも必要ではないか」と述べ、調査を感染対策に生かす必要性を指摘しました。