つなぐ思い ~SMAPと月曜夜10時のなぜ~

つなぐ思い ~SMAPと月曜夜10時のなぜ~
毎週月曜日の夜10時ごろ。ツイッター上には東日本大震災の復興を支援するツイートが相次いでいることをご存じでしょうか。ツイートを見ると解散したSMAPのファンがつぶやいているようです。なぜ、毎週同じ時間帯に? 取材してみると被災地を思い続けることが大きな力になることがわかりました。(ネットワーク報道部記者 成田大輔 大窪奈緒子)

相次ぐツイート

毎週月曜日の夜10時ごろ。
ツイッター上には東日本大震災の復興を支援する言葉が相次いで上がってきます。
「いつもの時間になりました。東北の復興にはまだまだ皆様の力が必要です」
「復興に向けて手をつなごう!」
「小さな一歩から復興に向けて」
ツイートには「#SMAP」「#復興に向けて手を繋ごう」といったハッシュタグが付けられていて、ファンの人たちがつぶやいているようです。
内容は東日本大震災の復興を応援するコメント、被災地の特産の紹介、寄付金の振り込み先などさまざまです。

でもなぜこの時間にツイートが集中しているのでしょうか。

理由は

かつて月曜夜10時はSMAPによるバラエティー番組が放送されていました。
2011年3月11日、東日本大震災が発生したあと、メンバーが毎回、被災地への思いを語り、復興に向け寄付も呼びかけていました。

番組はSMAPが解散する2016年に終了しましたが、被災地への思いを大切に引き継いでいこうとファンが放送していた時間に合わせてメッセージを発信していたのです。
被災地への思いを持ち続ける人たちがこつこつと支援のツイートを続けていて、いまは東日本大震災の被災地だけでなく熊本などのほかの被災地への支援も呼びかけられるようになっています。

エールと特産品紹介

被災地へのエールと共に、特産品などを紹介しているツイートがありました。

連絡をとると40代の女性でした。
いまでも変わらずつぶやきを続ける思いを寄せてくれました。
ツイートを続けているファンの女性
「(番組が終わって)復興支援の呼びかけはどうなるんだろうとファンの中でもつぶやく人は多かったです。それならファンが代わりに呼びかけようと」
ツイートを始めたきっかけは被災地を忘れないという思いでした。
ツイートを続けているファンの女性
「復興はまだ道半ば。今も大変な思いをされている方もいらっしゃると聞いています。絶対に忘れてはいけない、風化させてはいけない。一人一人の力は小さくても集まれば大きな力になります。
頑張れじゃなく『一緒に頑張りましょう』彼らはいつもそう言って寄り添ってくれました。私たちもここの場所で、自分たちにできる事をできる範囲で応援を続けていきたいと思っています」
被災地から離れていても必ずできることがある、そんな思いが文章ににじんでいました。

工房の再生

被災地を忘れないという思いに助けられたという工房もあります。

宮城県の「南三陸ミシン工房」です。

震災後、被災した女性たちが、寄付されたミシンを使って仮設住宅で小物などを作って販売していました。その後、専用の工房を作り本格的に製造を始めます。
しかし震災から5年が過ぎたころから被災地への関心も薄れ、それにともなって商品の売り上げも大きく落ち込むようになりました。

しかし2017年の2月末、突然、注文が入るようになります。
きっかけは被災地を忘れないという月曜夜10時のツイートでした。

「#復興に向けて手を繋ごう」。

そんなタグがつけられ工房が作ったポーチが写真付きで投稿されたのです。
すると、在庫の山となっていた小銭入れやポーチが売れるようになってきました。
ファンからのリクエストで新たに5つ星のマークがついたポーチも作りました。
熊谷安利代表
「売り上げが落ち込み、この先どうしようかと悩んでいた時期に被災地を思う気持ちに助けられました。多くの方にお世話になった私たちの工房です。今度は誰かの役に立つために歩んでいきます。本当にありがとうという気持ちです」
支援の思いを受け取った工房の人たち。

その後、東京の中学校での出前授業でファンから受けた支援を紹介し、被災地を思い続けてくれることのうれしさを語りました。

そして今度は自分たちが誰かのためになることを続けていきたいと、障害者が作った生地を使って商品を作りたいと考えています。

被災地を思い続ける気持ちが支援につながり、支援の輪がさらに一つ広がろうとしています。

つながった思い

この工房を支援するツイートをした女性に話を聞くことができました。

そのツイートは、別のファンが投稿した支援のツイートを見て、自分も応援したいと投稿したものでした。

ここでも支援の思いがつながって新たな動きになったのです。
支援のツイートをしたファンの女性
「ミシン工房の商品を別のファンの方のツイートで知りました。私も偶然購入していて、ツイートしたら大きな反響でびっくりしました。ツイートをきっかけに、寄付だけでなく、買い物の時も被災地を意識して物を選ぶようになりました。
コロナが収束したら南三陸に行ってみたいです。そして頑張っているミシン工房のお母さんたちをずっと応援し続けていきたいと思っています」
震災発生からまもなく10年、月日がたっても被災地を忘れないという思いがつながって大きな力になりました。

その力は応援された人を勇気づけるだけでなく、さらなる支援につながっています。
そして応援した人自身の意識も変えています。

「被災地を忘れない」これからもそう思い続けることがきっと次の新たな動きを生み出すのではないか、そう思いました。