新型コロナ 東京都の感染状況 高齢者層へ拡大続き厳重警戒必要

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを評価・分析する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、新規陽性者数は減少したものの、高齢者の感染拡大が続いていて厳重な警戒が必要だと指摘し、対策を緩めず徹底することでさらに減少させなければならないと訴えました。

4日の会議で、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は、
▽3週間前の1699人、
▽2週間前の1471人、
▽1週間前の1015人から、
▽3日には684人と減少したものの、高い値で推移していると説明しました。

また、病院や高齢者施設でのクラスターや同居する人からの感染などで、高齢者層への感染拡大が続いていて、引き続き厳重な警戒が必要だと指摘しました。

そのうえで専門家は「引き続き実効性のある対策を緩めることなく徹底することにより、新規陽性者数をさらに減少させなければならない」と訴えました。

また「ワクチン接種の医療人材を確保するためにも、新規陽性者数を減少させることが最も重要だ」と呼びかけました。
一方、医療提供体制については「入院患者数は非常に高い水準で推移しており、減少の兆しが見られず、危機的状況が続いている」と評価しました。

そのうえで「重症化リスクの高い高齢者層の感染を減らし、重症患者を減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

都内の感染状況 分析結果

モニタリング会議の中で示された都内の感染状況についての分析結果です。

新たな感染確認

新たな感染の確認は、3日時点の7日間の平均が683.6人で、前の週(1015.1人)から、およそ331人減少しました。

ただ、専門家は「依然として高い値で推移している」と分析したうえで「病院や高齢者施設でクラスターが多発するとともに、家庭内での感染で高齢者層への感染の拡大が続いている。引き続き厳重な警戒が必要だ」と指摘しました。
一方、増加比はおよそ67%と、先週と比べてほぼ横ばいでした。

専門家は「現在の増加比67%を4週間維持することができれば、新規陽性者数の7日間平均はおよそ138人になる。もし増加比を50%まで減少させて4週間維持できれば、7日間平均はおよそ43人となり、保健所の調査や医療提供体制の大きな改善が期待できる」と述べました。

今週、感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▼20代が最も多く18.3%、
次いで
▼30代が15.6%、
▼50代が14.1%、
▼40代が14.0%、
▼70代が9.0%、
▼80代が8.9%、
▼60代が8.5%、
▼10代が4.8%、
▼10歳未満が3.5%、
▼90代以上が3.3%でした。

10代と20代の割合は前の週と比べて低下した一方、70代以上の割合は20%を超えています。
また、65歳以上の高齢者は1409人と、前の週(1663人)より254人減りましたが、新規の陽性者に占める高齢者の割合は25.6%と、前の週より3.8ポイント高くなりました。

専門家は「高齢者層の増加を防ぐためには、家族や医療関係者、高齢者施設の職員などが感染しないことが最も重要だ。高齢者が集まる施設では利用者と職員に対する積極的な検査の実施が必要だ」と指摘しました。

感染経路は

感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は49.2%で、最も多くなりました。

年代別にみると、
▽80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多い一方で、
▽80代以上では病院や高齢者施設などの施設内での感染が77.4%と最も多くなりました。

このほか、感染経路がわかっている人のうち、施設内は34.4%で、前の週からおよそ7ポイント上昇しました。職場内は5.8%、会食は2.6%でした。

また「感染の広がりを反映する指標」としている、感染経路がわからない人の7日間平均は、3日時点で332.1人で、前の週(539.9人)よりおよそ208人減りましたが、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

今週の新規陽性者のうち、感染経路がわからない人の割合はおよそ50%と、前の週と比べておよそ5ポイント低下しました。

また、専門家は「来週後半から始まる旧正月を控え、在留外国人のコミュニティーでも、自国の伝統や風習等に基づいたお祭りなどで密に集まり飲食などを行うことが予想され、言語や生活習慣の違いに配慮した情報提供と支援が必要である」と述べました。

このほか、今月1日までの1週間で確認された新規陽性者のうち、23.2%にあたる1277人が無症状でした。

都は、都外に住む人がPCR検査のため検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて、分析・評価していますが、今週はこうしたケースが230人いました。

医療提供体制は

検査の「陽性率」は、3日時点で6.2%と、1週間前の8.4%から低下しました。
入院患者は、3日時点で2876人で、先月27日の時点(2871人)より5人増えました。
このうち、60代以上がおよそ7割を占めています。

専門家は「入院患者は非常に高い水準で推移していて、全然減っていない。医療提供体制のひっ迫は長期化していて、都民が必要とする通常医療をこれまでどおり実施できない状況が生じている」と指摘しました。

そのうえで「入院の待機者が早期に入院できる体制に移行したため、新規陽性者が減少したにもかかわらず、入院患者数が横ばいの状態が続いていると考えられる」と述べました。
都の基準で集計した3日時点の重症患者は125人と、前回(先月27日の159人)より34人減りました。

年代別にみると、
▼40代が3人、
▼50代が15人、
▼60代が36人、
▼70代が46人、
▼80代が22人、
▼90代が3人でした。

性別では
▼男性は97人、
▼女性は28人でした。

専門家は「70代以上の重症患者がおよそ6割を占めている。基礎疾患のある人、肥満や喫煙歴のある人は、若くても重症化のリスクが高い」と分析しています。

さらに「重症患者のための医療提供体制の危機的状況が継続している。ほかの傷病の重症患者の受け入れが困難になっており、多くの命が失われる危機に直面している」と述べ、強い危機感を示しました。

また、3日時点で、人工呼吸器や人工心肺装置=「ECMO」の治療がまもなく必要になる可能性が高い患者と、これらを離脱したものの不安定な状態の患者を合わせた、重症患者に準ずる患者が、合わせておよそ250人いることを明らかにしました。

そのうえで、専門家は「医療提供体制の破綻を回避するためには、高齢者の感染を減らし、重症者数を減らすことが最も重要だ」と指摘しました。

今月1日までの1週間で都に報告された亡くなった人は、前の1週間より30人増えて98人でした。

このうちおよそ9割を超える91人は70代以上でした。

小池知事 感染確認の7日間平均を前週の7割以下に

会議のあと小池知事は「新規陽性者数をここから一段下げるときには、意識と行動が必要だ。工夫して人の流れを抑えることがポイントだ」と述べ、感染確認の7日間平均を前の週の7割以下にすることを目安とし、昼夜を問わない不要不急の外出自粛やテレワークの活用などへの協力を改めて呼びかけました。

そのうえで「感染を再拡大をさせてしまうと、また元に戻ってしまう。『もういいかげんにしましょう』という思いは皆さんがお持ちだと思う。ここで気を緩めずに、やっかいな見えない敵をやっつけていく。とにかく感染しないことを徹底して進めていくことが、そのあとの経済の命を取り戻すことになる」と述べました。

新たな感染確認「下げられるだけ下げたほうがいい」

国立国際医療研究センターの大曲貴夫 国際感染症センター長は、新たな感染確認をどれくらいまで減らすべきかと、記者団から問われると「議論はあるが、下げられるだけ下げたほうがいい。下げきらないと、抑え込みも非常にきつくなり、再び増えやすくなる。新たな感染確認が減少傾向でも、医療の状況はすぐには改善しないので、下げきらない状況で反転すると、医療はまた大変なことになる」と述べました。

また、死亡する人が増えていることについて「第1波と比較的似ていて、高齢者の感染が多い影響が大きい。海外でも日本でも、年齢と亡くなるリスクとの関係性が強い病気だ。だからこそ高齢者に感染を広げてはいけない」と述べました。

入院患者数「ほとんど減っていない」

東京都医師会の猪口正孝副会長は「新規陽性者数は減ってきているが、入院患者数はほとんど減っていない。入院調整中の患者を早期に入院させているので、まだまだ入院患者数は減らないと思う」と述べました。