オンライン会議のヒント教えてもらいました

オンライン会議のヒント教えてもらいました
コロナ禍で広がったオンライン会議。いまだに慣れないという人も多いのでは。私もその1人です。ある日、耳が不自由な人たちの取材をしていてふと思いました。
「この人たちはどうやってオンライン会議をしているのだろう」
話を聞いてみると、私にもあなたにも役立つヒントが見えてきました。
(社会部記者 植田治男)

あなたの会議見せてください

オンライン会議のパソコン画面に向けられたこの笑顔。

松森果林さんです。
10代で両耳の聴力を失い、手話でコミュニケーションを取っています。

障害の有無や国籍に関係なく誰もが利用しやすい「ユニバーサルデザイン」について企業などにアドバイスしています。

新型コロナウイルスの感染が拡大した去年以降、オンラインで会議することが一気に増えました。

対面での会議は手話通訳を手配してもらうなど手間がかかっていましたが、音声を文字化するアプリやチャットなどを活用するオンライン会議は参加のハードルが下がったといいます。
松森果林さん
「聴覚障害者にとっては対面の会議よりオンライン会議の方が便利です。会議場所への移動も障害者にとっては大きな負担でした。事前に打ち合わせをすれば違和感なく会議に参加できますよ」
松森さんと健常者の同僚3人とのオンライン打ち合わせを見せてもらうと活発な議論が繰り広げられていました。
「来月のイベントの予定は15件!すごいですね!」

気付いたのは参加者の表情が豊かでジェスチャーを多用していることです。みなさん、松森さんのために少し大げさなくらいのジェスチャーをしていました。

横で見ていても議論の内容が簡単に理解できます。

でも自分が同じことを職場の会議でやるのはちょっと恥ずかしいかも。

会議終了後、参加者の1人に聞いてみると。
参加者
「温度感が伝わることも重要ですよ。できる範囲でいいですから一度やってみてください」
松森さんも、それぞれの会議の参加者に応じた進め方を決めることが大切だといいます。

障害がある人が参加する場合、ぜひ、その当事者に意見を求めてほしいといいます。
松森果林さん
「障害がある人と一口にいっても程度は人それぞれ。例えば、耳が聞こえないといっても全く聞こえない人もいれば、少し聞こえる人もいます。そうした人たちが何を求めているか、どうしてほしいと思っているか考えることが大事です」

オンラインの極意 5つのポイント

オンライン会議をスムーズに進めるにはどうすれば良いのか。

5つのポイントがあるといいます。
1.カメラをオンにする
2.表情を豊かに
3.突然、話し出さないで
4.誰が話しているか明確に
5.身振り手振りを大げさに

まずは自分の顔が写るようにパソコンなどのカメラをオンにすることです。
オンライン会議ではカメラをオフにしたまま顔を出さずに発言しがちですが、相手の表情も大切な情報です。

2つ目は表情を豊かにすることです。
たとえば、営業成績や売り上げを話題にする際、良い話の時は笑顔で、悪い話の時は困った表情を少し意識してみましょう。会議がいまどんな雰囲気になっているか理解しやすくなります。
感染のリスクがない環境でマスクを外せる場合は外してください。

3つ目、いきなり話し出すことはやめましょう。
発言するときは挙手して進行役に指名されてからにしましょう。
チャットに書き込んでから話し出すのも配慮に満ちた方法です。

4つ目は誰が話しているかを明確にすることです。
特に複数で話しているとき議論が白熱すると誰が何を話しているかわかりにくくなります。
オンラインの会議では1人ずつ発言することを心がけましょう。

5つ目は身振りや手振りを交えて話すことです。
多少大げさにするくらいがちょうどいいといいます。
同意する発言の際は画面に向かって手でマルを見せたり、反対ならバツを作ったりするだけで、はるかにわかりやすくなるということです。
松森果林さん
「5つのポイントは今からでも実践できる簡単なことです。健常者だけの会議でもこうしたことを意識するだけで雰囲気が変わりますよ」

コロナ後の“レガシー”に

一方で、こうした円滑なコミュニケーションをすべての聴覚障害者が行えているわけではありません。

社団法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」ではことし1月にインターネットのアンケートを通じてコロナ禍での聴覚障害者の生活実態を調査しました。

アンケートでは聴覚障害のある10代から70代の会社員と学生合わせて111人にコロナ禍での生活実態について質問しました。
7割近くが「オンライン化で良かったことがあった」と回答した一方で、「不便を感じたことがある」と回答した人も72%に上りました。

自由記述では、
▽誰が何を話しているのかわからない、
▽自分の話が伝わっているのかわからない、
▽発言のタイミングがつかめない、
▽カメラをオフにしたまま話す人が多く口元や表情が見えず会話を理解しにくい、といった意見が寄せられました。

多くの聴覚障害者がオンラインの利便性を感じているものの、まだまだ課題が残る現状が浮き彫りになりました。
志村真介理事
「不便だから助けて下さいということではないんです。オンラインの普及で当事者も可能性を感じています。社会が新しいコミュニケーションのあり方を考え始める中で聴覚障害者たちの意見も取り入れていくことが誰にとっても理想的なコミュニケーションにつながります。もしそれができればコロナ収束後、貴重なレガシーとして次世代に残せるはずです」
アンケートの自由記述ではオンラインでの会議や授業で「あなたのジェスチャーはわかりやすいね」「表情がとてもいいね」とほめられたという喜びの声も寄せられていました。

聴覚障害者がこれまで日常的に行っていたことが、オンラインでのコミュニケーションではとても参考になるのです。

あなたもきょうの会議から始めてみませんか。