2050年脱炭素「達成できる」7割以上 企業100社アンケート

2050年の脱炭素社会の実現を目指す政府の方針について、NHKが企業100社を対象にアンケートをしたところ、「政府の支援」など何らかの条件がつけばという回答も含めて7割以上が「達成できる」と回答し、多くの企業が積極的に対応する姿勢を示しました。

NHKは、去年12月から先月中旬にかけて、国内の企業100社にアンケートを行い、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指す脱炭素社会の実現について認識を尋ねました。

その結果、「達成できる」が13社、「政府の支援や技術支援などがあれば達成できる」が65社と、7割以上の企業が達成できると回答しました。

一方、「政府支援や技術革新があっても達成は難しい」が4社、「達成は極めて難しい」が1社、「その他」は13社でした。

「無回答」は4社でした。

また、脱炭素社会の実現に必要だと思うことを複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「電源構成の抜本的な見直し」が73社、次いで「水素の活用拡大」が45社、「気候変動対策に積極的な企業への投資促進」が44社などとなりました。

このうち、「電源構成の見直し」と回答した企業にどの電源を拡大すべきか複数回答で尋ねたところ、「太陽光や風力などの再生可能エネルギー」が97.3%、「水素・アンモニアなど新エネルギー」が69.9%、「原子力」が23.3%などとなりました。

オフィスで使う電気に再生可能エネルギー活用

大手企業の間ではオフィスで使う電気に再生可能エネルギーを活用するなど脱炭素社会の実現を目指した取り組みが始まっています。

不動産大手の森ビルは、東京・六本木で運営する「六本木ヒルズ」にテナントとして入居する企業や店舗に対して、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用した電気の供給を始めています。

六本木ヒルズはもともとLNGを燃料にした自家発電でビルの電気を賄っていますが、会社では、このほかに再生可能エネルギーを使って発電する別の企業とも契約していて、希望するテナントには再生可能エネルギーで発電されたことを示す「証書」を提供する形で電気を供給しています。

こうした電気はもともとのビルの電気と比べて割高になりますが、会社では環境意識の高まりから脱炭素につながる選択肢を用意することが入居する企業や店がビルを選ぶ判断材料の一つになると考えていて、現在は外資系金融機関など5社が再生可能エネルギーによる電気を利用しているということです。

森ビル環境推進部の武田正浩課長は「人々の働き方が多様化するなかで再生可能エネルギーの電気が使えるオフィスは、テナントに選んでもらう重要な要素になり、脱炭素にもつながるのではないか」と話しています。

独自のカーボンプライシングの制度導入の企業も

大手企業の間では、温室効果ガスの排出量に独自に価格をつけて「見える化」することで、ビジネスが環境に与える負担を減らそうという動きが出ています。

温室効果ガスの排出量を価格に置き換えて、コストなどとして環境への影響を「見える化」する仕組みは「カーボンプライシング」と呼ばれています。

排出量に応じて課税する「炭素税」や、企業の排出量に上限を設けて過不足する分を別の企業と売買できる排出量取引制度などが代表的な仕組みで、日本国内でも2050年の脱炭素社会の実現に向けて、この考え方を取り入れるか検討が進められています。

一方、大手企業の間ではカーボンプライシングの考え方を取り入れて自社の排出量によるコストや排出削減に伴う利益を独自に計算し、ビジネスに生かそうという動きが始まっています。

今回のNHKのアンケートで独自のカーボンプライシングの制度を導入していると回答した大手商社の三井物産。

去年から事業の現場で運用を始めています。

例えば、ガス田などの資源開発や発電所などへの投資を検討する際に、温室効果ガスの排出量を売り上げやコストなどと一緒に計算します。

事業が環境に及ぼす影響を、今後支払わなければならないコストとして見える化することでより環境の負担が少ない投資を選別することにつながるといいます。

三井物産グローバル環境室の西川淳也室長は「事業が気候変動問題に与える影響を計算し、影響が大きい事業には取り組まないことを見える化するためにも環境への影響を金額に置き換え置て機会とリスクの両方を検討する意義がある。脱炭素は不可逆的な動きで、どう反映していくかが企業の成長力、対応力の差につながるので難しさを機会として捉え、今後も取り組んでいきたい」と話しています。

「企業価値を高めようという発想が必要」

環境問題に詳しい三菱総合研究所井上裕史主席研究員は、日本企業の脱炭素の取り組みについて「少なくとも進んでいるとは言いにくい。日本企業は脱炭素に積極的に取り組み、企業価値を高めようという発想が必要だ。グローバル企業は脱炭素を前向きに進めることで投資家から高い評価を獲得し、ブランド価値を上げようと意識している。その流れに乗り遅れないよう率先した取り組みが求められている」と話しています。

「SDGs」実現に向けどんな目標に取り組んでいるか

またアンケートでは、国連が定めた持続可能な開発目標=「SDGs」の実現を掲げて事業を展開する企業が増えていることから、どんな目標に取り組んでいるか尋ねました。

「SDGs」には貧困や気候変動といった社会課題の解決に向けた17の目標が掲げられていますが「気候変動に具体的な対策を」という目標に取り組む企業が、もっとも多く70社にのぼりました。

「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標に取り組む企業も28社にのぼり具体的な対応としては温室効果ガスの排出量の削減や再生可能エネルギーの利用などをあげました。

「産業と技術革新の基盤をつくろう」という目標をあげる企業も33社と多く、自動運転など先端技術の研究のほか、労働力不足に対応する無人化技術の開発などを具体的な取り組みにあげています。

このほか、「働きがいも経済成長も」という目標をあげ働きやすい職場環境づくりに取り組む企業が28社。

環境に配慮した容器などを使う「つくる責任つかう責任」と「住み続けられるまちづくりを」をあげた企業もそれぞれ26社ありました。