緊急事態宣言 延長 飲食店や観光地などの受け止めは

緊急事態宣言の延長で、すでに大きな影響を受けている飲食店や各地の観光地などでは懸念が強まっています。

焼き肉チェーンは…

外食大手コロワイドが運営する焼き肉チェーン「牛角」の東京 赤坂にある店舗は、もともと深夜まで営業していて、夜の売り上げがほとんどを占めていたため、緊急事態宣言に伴う要請を受けて営業時間を午後8時までに短縮したことで経営に大きな打撃を受けています。

この店では、新型コロナウイルスの影響が長引く中、これまでにランチタイムと夜間の間の休憩時間をなくすことで営業時間を延ばしたり、新たにテイクアウト販売を始めたりするなど、日中の営業を強化してきました。

しかし、先月の緊急事態宣言で赤坂周辺のオフィスに通勤する人が減ったことから昼の売り上げも落ち込むようになり、今回、宣言が1か月延長されればさらに影響が及ぶことは避けられないと懸念しています。

チェーンを運営するレインズインターナショナルの安田悠平さんは、「これまでも厳しい状況が続いていて、宣言が延長されれば営業面はさらに厳しくなるが、感染拡大を防ぐためにも要請には応じていきたい。営業できる時間の中で新しいことに取り組みたい」と話していました。

カラオケチェーンは…

全国で500店舗余りを展開する「カラオケまねきねこ」は、先月、緊急事態宣言が出されて以降、売り上げが去年の同じ時期に比べておよそ6割減ったということです。

このチェーンは大半の店舗が24時間営業で、日中よりも料金を高く設定している午後6時以降の売り上げが大きな割合を占めていましたが、宣言以降、東京など対象地域では午後8時に閉店しているため大きな打撃を受けています。

会社では、何とか売り上げを確保しようと1人か2人でカラオケを利用する客向けに小型の個室を増やしているほか、リモートワーク用のオフィスとしても利用できるようパソコンの画面をモニターに映し出せる部屋も設けるなど新たな対策も打ち出しています。

また、部屋ごとに換気口を設けたり、店の入り口に手洗い場を設置したりするなど感染防止対策も強化していますが、会社では宣言の延長でさらに苦しい状況が続くと受け止めています。

カラオケまねきねこ総務部の馬場仁美さんは、「非常に厳しい状態が続いているので、宣言が延長されると苦しい。カラオケを楽しみにしている客のためにもなんとか生き残っていけるよう耐えるしかない」と話しています。

酒の卸売り企業は

東京 新宿で100年余り続く酒の卸売企業は、ふだん、都内やその周辺の飲食店やホテルなど、およそ3000か所に酒を納入しています。しかし、2日、多くのトラックは拠点に待機したままで、ようやく銀座に向けて出発したトラックにも、日本酒や焼酎などがまばらにしか積んでありませんでした。

佐々木実社長によりますと、去年の4月や5月の売り上げは前の年の同じ月の2割から3割ほどと大幅に落ち込み、10月にはいったん8割まで回復したものの、12月は5割、先月は3割ほどにとどまり、経営の悪化が続いているということです。

政府は先月12日、取引先の飲食店が営業時間を短縮したため、先月または今月の売り上げが去年の同じ月と比べて50%以上減少した中堅・中小企業に対して、最大40万円、個人事業主に最大20万円の一時金を支給することを明らかにしました。しかし、佐々木社長は、酒の卸売業全体として、数十万円の一時金では大幅に不足している実情があるとして、事業規模に応じた形でのさらなる支援が必要だと訴えています。

「佐々木酒店」の佐々木実社長は「日本全国に毛細血管のように物を届け、循環させる重要な役割を担っている自負があるので、つらいけど耐えるしかない。最後のチャンスだと思う。今回の延長で終わってもらわなければ会社自体というか、業界全体もなくなってしまいかねない」と話していました。

神奈川 箱根の土産物店は

神奈川県有数の観光地、箱根町では、観光客が減って多くの店が臨時休業にしていて、店を営む人からは、「平日になると客がほとんどいないこの状態が続くのは経営的にはさらに厳しい」という声が聞かれました。

箱根の玄関口として知られる箱根湯本駅前の商店街は、先月の緊急事態宣言から人出の少ない状況が続いていて、2日午後も観光客の姿はまばらでした。

商店街では、緊急事態宣言が出されてから臨時休業にしている飲食店や土産物店も多い一方で、売り上げは少ないものの営業を続けている店もあります。

このうち、土産店の店長の男性は「宣言の延長はしかたないかと思います。少しでも来てくださるお客様のためにと、赤字になるとしても店を開けています。平日になるとお客様がほとんどいないので、この状態が続くのは店の経営的にはさらに厳しい状況です」と話していました。

また、まんじゅう屋の店員の男性は「宣言の延長の打撃はかなり大きいですが、我慢の時だと思います。寂しい箱根の姿を見せたくないという思いで営業を続けてはいますが、お客様の数は少ないので、まんじゅうの製造を減らして、最小限の営業をしています」と話していました。

京都 京丹後 カニのシーズンなのに…

京都府の北部、京丹後市にある宿泊施設は、かき入れ時のカニのシーズン中に宿泊客が見込めず経営に深刻な影響が出かねないと懸念を強めています。

京都府北部の京丹後市には、日本海の冬の味覚カニを味わおうとシーズン中には例年、京阪神や東京などから多くの客が訪れます。

こうした客を受けれてきた市内の「プラザホテル吉翠苑」では、「Go Toトラベル」の停止でほぼ埋まっていた去年12月と先月の予約は4割ほどキャンセルになったということです。緊急事態宣言が延長されればキャンセルはさらに増え、今後の経営に深刻な影響が出かねないと懸念を強めています。

おかみの田中智子さんは「カニ漁は来月20日で終わってしまうので、1か月も延長されれば、カニがすべての収益の海辺の旅館は経営がだめになってしまいます」と話していました。
ホテルでは当面、宿泊客が見込めないとして少しでも収益を補うため自宅で旬のカニを楽しんでもらうカニしゃぶのセットの販売をオンラインで始めました。

田中さんは「今できることを一生懸命やっています。ご家族でコロナ対策をしながら、こだわりの味を楽しんでもらえればと思います。今はしかたがありませんが感染が収束した折にはぜひお越しいただければうれしいです」と話していました。

岐阜 高山 多くの店が休業

岐阜県内有数の観光地の高山市では、観光客向けの店舗を営む人から先が見通せない不安や支援を求める声が聞かれました。

高山市中心部にある江戸時代の風情が残る古い町並みでは、緊急事態宣言などを受けて多くの店が休業し、通りを歩く観光客の姿もほとんど見られず閑散としています。

観光客向けに雑貨を販売する盛一友香店長は「延長は厳しいですが、感染拡大防止を考えるとしかたありません。収入がゼロになるよりは少しでも収入があればと思いお店を開けています。早く宣言を解除できるように一人ひとりが感染対策を頑張るしかありません」と話していました。

また、手焼きせんべいを販売する橋本正明店長は「Go Toトラベルの停止や緊急事態宣言の影響で12月半ばから人の流れが無くなっていて、さらに1か月止まるとなると店を存続できるのか厳しいところです。観光業は人に来てもらって商売が成り立つものです。行政の施策で人の流れを止めるのなら、飲食店だけでなく観光業全体を見て支援してほしいです」と話していました。

解除される宇都宮では

政府が栃木県の緊急事態宣言を解除する方針を固めたことについて、宇都宮市中心部の繁華街ではさまざまな声が聞かれました。

中高年向けの習い事教室で教えているという70代の女性は「教室を休んでいましたが、私も生徒の皆さんも1か月も家にこもっていると体調を崩してしまうので宣言の解除はうれしいです」と話していました。

居酒屋で働く40代の男性は「宣言解除は一安心ですが、客足がすぐに戻るわけではないと思うので心配です。売り上げが早く戻ってほしいと思います」と話していました。

19歳の専門学校生の男性は「友達と遊べず寂しかったですがウイルスに感染して家族にうつすのも怖いので、今後も出歩かず家にいたいと思います」と話していました。

また、60代の男性は「医療機関の病床もまだ十分に空いているわけではなく、重症者も多いと聞くので、まだ解除は早いと思います。変わらずステイホームで過ごしていきます」と話していました。