EU 新型コロナワクチン「域外への輸出を許可制に」

EU=ヨーロッパ連合は、新型コロナウイルスのワクチンについて、域外への輸出を許可制にすると発表しました。時限的な措置だとしていますが、輸出の制限につながるとして懸念の声が上がっています。

EUへのワクチンの供給をめぐっては先週、イギリスの製薬大手アストラゼネカが、当初の供給量が予定の半分以下になると通告し、EU側が強く反発して予定どおりの供給を求めています。

こうした事態を受けてEUは29日、輸出の透明性を高めるためだとして、域内の工場で生産されたワクチンを輸出する際、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると発表しました。

この措置は、30日からことし3月までの時限的なもので、ワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」と呼ばれる国際的な枠組みなどへの供給は例外だとしています。

EUのドムブロフスキス執行副委員長は、記者会見で「ワクチンが予定どおり届かないからと言って、時間をむだにするわけにはいかない。市民の保護と安全が優先課題だ」と述べて、理解を求めましたが、輸出の制限につながるとして懸念の声が上がっています。

WHO「非常に憂慮すべき傾向」

EU=ヨーロッパ連合が新型コロナウイルスワクチンの域外への輸出を許可制にすると発表したことについて、WHO=世界保健機関のシマオ事務局長補は29日、定例の記者会見で「非常に憂慮すべき傾向だ。いかなる国にとっても今の段階でワクチンの生産に必要な原料などの輸出を禁止したり、障壁を作ったりすることは有益ではない」と述べ、強い懸念を示しました。

フランス 一部地域で供給への懸念も

フランスでは、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まってからおよそ1か月がたち、130万回分を超える接種が行われました。

しかし、一部の地域ではワクチンが不足して一時的に接種を止めるなど、供給への懸念も強まっています。

フランスでは、先月27日から新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まり、およそ1か月で75歳以上の高齢者などに130万回分を超える接種が行われました。

公共施設などを利用して、集団接種を行うセンターが設けられたほか、北東部の地域では過疎地の自治体に暮らす高齢者のため、専用のバスを巡回させて接種を進めています。

バスには医師や看護師が乗り、ワクチンを保管する冷蔵庫が設置されていて、事前に予約をした人に対し健康状態を確認したうえで接種を行っていました。

接種を受けた76歳の男性は「安心したくて接種しました。移動が難しい人もいるので、バスはよいアイデアだと思います」と話していました。

一方で、一部の地域ではワクチンが不足し、2回目の分を確保するため、接種を一時的に止める事態にもなっていて、北東部のランス市では今月27日から中心部にあるセンターを閉鎖しています。

ランス市の市長は「予定されたワクチンが届かず、センターを閉めなければならなかった。危機を終わらせるにはワクチンの接種しかないので今の状況が心配だ」と話していて、供給への懸念も強まっています。