都の新年度予算案 7兆4000億円余 過去2番目の規模に

東京都の新年度=2021年度の当初予算案は、一般会計の総額で7兆4000億円余りと、過去2番目の規模になった一方、新型コロナウイルスの感染拡大による都税収入の減少で、借金にあたる都債の発行額は今年度の3倍近くとなります。都は今後、感染状況を見極めて補正予算を組む方針で、厳しい財政運営となります。

29日、公表された東京都の新年度の当初予算案は、一般会計の総額で7兆4250億円となり、昨年度=2019年度に次ぐ過去2番目の規模となりました。

歳入のうち、都税収入は5兆450億円で、今年度の当初予算と比べて3996億円、率にして7.3%少なくなりました。

新型コロナウイルスの感染拡大による企業収益の悪化や、大都市と地方の格差を解消するための税収の再配分の影響で、法人事業税など2つの法人関連の税収が20%余り減少したことが主な要因です。

財源確保のため都は、借金にあたる都債を今年度の2.8倍にあたる5876億円発行するとしていて、2000年度以降では最も多くなります。

都の担当者は「財政状況が厳しくなっているのは間違いないが、感染拡大前には好調な税収が続いたこともあり、余力はある。国やほかの自治体と比べても都債への依存度は低く、まだ十分対応できる」と説明しています。

一方、歳出は東京オリンピック・パラリンピックの開催とレガシーの創出に4028億円、災害から都民を守る都市づくりに3500億円、出産や子育てをしやすい社会の実現に2929億円などが計上されています。

また、新型コロナウイルス対策として2561億円が計上され、中小企業の資金繰り支援などが盛り込まれています。

ただ、都は医療提供体制を整備するための費用などは、今回の予算案には盛り込まず、今後、感染状況を見極めて補正予算で対応する方針で、厳しい財政運営となります。

新年度予算案は来月開会する予定の都議会の定例会に提出されます。

新年度予算案の主な施策

東京都の新年度予算案の主な施策です。

結婚から妊娠、出産から子育てまで切れ目のない支援を行うため、408億円を計上します。

ことし4月から再来年3月までに子どもが生まれた家庭に、1人当たり10万円分の育児用品などを贈るといった事業を盛り込んでいます。

また、環境分野では2030年までに都内で販売される新車の乗用車のすべてを「脱ガソリン車」にする目標の達成に向けて116億円を計上しました。

購入の際の補助額を、電気自動車とプラグインハイブリッド車は30万円から45万円に、燃料電池車は100万円から110万円に、それぞれ引き上げるとともに、急速充電器や水素ステーションの普及に向けた事業への補助も拡充します。

このほか、公共施設や都民サービスのデジタル化には144億円があてられました。

都庁周辺を高速で大容量の通信規格「5G」の重点整備エリアとして、自動運転の実証実験などを行うほか、スマートフォンなどデジタル機器に不慣れな高齢者などへの普及や啓発を進めます。

新型コロナウイルス関連では、感染拡大の影響で仕事を失った人たちを支援する雇用対策として114億円を盛り込みました。

失業した人を派遣社員として受け入れた企業や正社員として雇用した企業への助成や、職業訓練などを通じて、合わせて2万人を超える雇用の創出を目指すとしています。

五輪の都負担は1兆4519億円

東京都の新年度予算案には、東京オリンピック・パラリンピックの開催にかかる費用として4224億円が盛り込まれています。

これにより、都の負担額は国が負担する分を除いて、合わせて1兆4519億円となる見込みです。

このうち、新設の競技会場の整備や大会の運営などにかかる「大会経費」は7170億円です。

内訳は
▽会場や仮設の施設の整備などに5473億円
▽大会関係者の輸送や警備に1047億円
▽新型コロナウイルス対策に400億円などとなっています。

これとは別に、都が大会に密接に関わると位置づける事業にかかる「大会関連経費」は7349億円です。

内訳は
▽街なかから電柱をなくす無電柱化などのインフラの整備に2527億円
▽都心と臨海地域を結ぶ環状2号線など幹線道路の整備や、競技会場周辺のセキュリティー対策などに1718億円
▽競技会場として使用される東京体育館など既存のスポーツ施設の改修や、選手村が建設される臨海部の晴海地区の整備などに809億円
▽宿泊施設のバリアフリー化の支援などに750億円などとなっています。

道路や施設の整備費用が見込みを下回ったため「大会関連経費」は、今年度の当初予算から417億円減少しました。