変わる節分の豆まき 5歳以下は豆を食べないで

変わる節分の豆まき 5歳以下は豆を食べないで
例年、2月3日は「節分」ですが、ことしは暦の関係で、124年ぶりに2月2日が「節分」となります。
日付けは1日早まっても、「節分」と言えば「鬼は外、福は内」の豆まきです。
豆をまいて、鬼を追いかけ、そのあと年の数だけ豆を食べる。
そんな節分の風景が、最近変わってきています。

(科学文化部 記者 秋山度)

節分行事中に幼い命が

松江市の認定こども園で、4歳の男の子が豆をのどに詰まらせて死亡しました。

市によりますと、男の子は、いり豆を年の数だけ食べたあと、豆まきに参加していたということですが、いつ豆をのどに詰まらせたのかなど、詳しいことは分かっていません。

ただ、幼い子どもが食品をのどに詰まらせたり、窒息したりする事故は、決して珍しいものではありません。
消費者庁が全国の医療機関から寄せられた情報をまとめたところ、14歳以下の子どもの食品による「窒息」や誤って気管などに入ってしまう「誤えん」の事故は、この10年間に164件に上ります。

このうちの86%にあたる141件が、5歳以下でした。

原因となった食品別では、

▼最も多かったのが「菓子」で61件でした。
「菓子」には、あめやせんべいなども含まれています。

▼次いで多かったのが「豆・ナッツ類」で31件でした。

▼そして、「果物」の22件。

▼「肉・魚」18件。

▼「ごはん・パン」の14件と続きます。

「豆」だけが、事故の原因となっているわけではありません。

去年も東京で4歳の子どもがぶどうをのどに詰まらせて亡くなる事故が起きています。

幼い子どもが何かを食べるときは、大人がしっかり見守る必要があるのです。

ただ、中でも豆のような大きさの食品は、幼い子どもではのどに詰まらせやすいとされています。

実験で明らかになった窒息リスク

豆はどうやって、のどに詰まるのでしょうか。

消費者庁は、医療機関などと共同でシミュレーションを行いました。
シミュレーションでは、4歳児の骨格などのデータを基にコンピューター上に子どもの口からのどの内部を再現し、口の中の豆がどう動くのかを実験しました。

大きさ1センチほどの平均的な1粒が口の中に入っている場合を調べてみました。

通常は、豆を飲み込んだ場合、のどから食道に抜けていきます。
しかし、口に豆が残ったままで、不意に体を前のほうに動かした場合をシミュレーションしてみると、口の中を豆が滑り落ちて、のどの奥に挟まってしまいました。

口に物を入れたままで遊ぶなど、急な動作をするとリスクがあると考えられました。

また、飲み込むときの姿勢も影響を与える可能性があることが分かりました。

リクライニングしたイスに座った想定で、顔を45度上に傾けた場合、こちらも豆は口の中を転がり落ちて、のどの奥に詰まってしまいました。

豆はもともと丸くて小さい形状をしているため、転がったり滑ったりと口の中を動きやすいと考えられます。

また、豆を柔らかくしても、しっかりとかんで飲み込まないとのどに詰まる可能性があったほか、豆を小さくしたりかみ砕いたりしても、飲み込むのがうまくいかないと、気管に入って肺炎などを引き起こすおそれがあったということです。

シミュレーションからは、豆が口の中に入っているときの動きと姿勢が、影響を与えている可能性が明らかになりました。
実験に協力した道脇幸博医師は、幼い子どもは、食べ物をかんで、飲み込むという、2つの動作がスムーズにできるようになるまでは、食品をのどに詰まらせるリスクがあると指摘しています。
道脇幸博 医師
「食べ物をかみ砕けるようになるのは3歳以降で、さらにかんだ食べ物をスムーズに飲み込めるようになるのは6歳ごろとされている。急に動くだけでなく、泣いたり、笑ったりする時も、のどに詰まるリスクがある。泣いているときなどにあやそうとして、何かを食べさせるのはやめて、泣きやんでから与えてほしい」

消費者庁年齢引き上げ

消費者庁は、これまでも豆などは「3歳頃までは食べさせないで」と呼びかけていました。

しかし、ことしは「5歳以下には食べさせないで」と呼びかけています。

冒頭で紹介した、松江市の死亡事故などを受けた対応だといいます。
消費者庁消費者安全課 鮎澤良史 課長
「去年の保育施設での事故などをきっかけに事故事例などを分析した。再発防止のために5歳以下には与えないでと強く申し上げたい」

業界団体も動き出した

こうした動きは業界にも広がっています。

豆菓子メーカーなどで作る業界団体は、豆が含まれた商品のパッケージには子どもが食べる際の注意事項を記載するよう会員企業に呼びかけています。
この呼びかけに応じた豆菓子メーカーの1つは、これまでも、商品に子どもが食べる際には目を離さないよう呼びかけるメッセージを記載していましたが、ことしの節分向けの商品からは「大豆は4歳未満のお子様には食べさせないでください。泣いているときには食べさせないでください」と具体的な注意書きに変更しました。

※消費者庁が「5歳以下」の呼びかけを行う前から準備をしていたため、年齢については「4歳未満」となっています。
経営企画室 田中篤士 室長
「豆菓子メーカーとしてのブランドを消費者からきちんと認めてもらうためには命を守るための情報としてさらに強い文言で目立つように表示することが重要だと考え、まずは節分商品から切り替えることにしました」

子どもたちがまいているのは…

全国の保育施設などでも対策が進められています。

幼稚園や保育所などでも、節分の「豆まき」に、豆をまかないところが増えています。

代わりに子どもたちがまいているのは、丸めた新聞紙などです。

豆まきを行っている場合でも、豆を個別の袋に入れたまままくなど、子どもたちが誤って口に入れてしまわないような工夫をしているところが増えているそうです。

また、全国の保育施設などに向けて国が作成したガイドラインには、「乾いたナッツ、豆類(節分の鬼打ち豆)」は給食での使用を避ける食材として示されています。

もちろん豆まきは、地域や家庭でも行われていると思いますので、注意が必要なのは保育施設だけに限ったことではありません。

遺族の願い

去年、松江市の事故で4歳の息子を亡くした遺族は、NHKの取材に対し、次のようにコメントしています。
「息子が他界してからまもなく1年が経ちますが、未だに息子の死を受け入れられずにいます。この事故は誰かがどこかで防げた事故だったのではないのか、今でもそう思って仕方ありません。息子の死を無駄にしないためにも再発防止について今の私たちの気持ちを伝えさせてください。私たちは決して節分行事を否定している訳ではありません。子どもたちを守るため、そして先生方を守るためにもまずは保育の現場で『豆を食べさせること』『豆を使って豆まきをすること』をやめてほしいと強く願っています。防ぐことのできる事故はどうか未然に防いでほしい。大切な子どもたちの命を何よりも守ってほしいと思います」

リスクを認識することから

節分の豆まきは、多くの人にとって、楽しい思い出として記憶に残っているはずです。

不幸な事故を繰り返さないために、新しい「節分の豆まき」の形を考えていく必要があると感じました。