大相撲春場所 東京 両国の国技館に会場変更し開催へ

日本相撲協会はことし3月の大相撲春場所について、緊急事態宣言が延長される可能性があることや宿舎などでの感染対策の難しさを理由に、会場を大阪市から東京の国技館に変更して開催することを決めました。

日本相撲協会は28日、東京 両国の国技館で理事会を開き、大阪市で開催する準備を進めていたことし3月14日からの春場所について協議しました。

その結果、感染症の専門家の意見を踏まえて会場を大阪 浪速区の大阪府立体育会館から東京 両国の国技館に変更して開催することを決めました。

そのうえで、国が要請する上限の範囲内で観客を入れて開催するとしています。

相撲協会は、会場を変更した理由について▽緊急事態宣言が延長される可能性がある中で、現地での準備期間が十分に確保できないほか、▽会場の構造上、国技館と同じレベルの換気などの対策が難しいことや▽相撲部屋と異なり、長期間滞在する各部屋の宿舎の感染対策が難しい点などを挙げました。

相撲協会は、去年3月の春場所を大阪市で無観客で開催して以降、地方で本場所を行っておらず東京での本場所は5場所連続となります。

日本相撲協会の芝田山広報部長は「大阪で開催するリスクとリターンを比較してリスクのほうが大きいと判断した。大阪の相撲熱は熱く、たくさんの観客に来てもらえると考えたが、残念ながら国技館での開催となった」と話していました。

一方、28日の理事会では感染防止のために不要不急の外出を禁止する行動制限に反して、今月の初場所中にマージャン店に出入りしていたことが明らかになった時津風親方の処分については、議論されなかったということです。

芝田山広報部長は「理事長からは『協会員やお客さんが協力してくれて、初場所は千秋楽を迎えられたが1人だけそれを守れなかった者がいた』と話があった」と説明しました。

大阪 残念がる声が相次ぐ

大相撲春場所が例年、開催される大阪 浪速区の大阪府立体育会館の周辺では、会場が東京の国技館に変更されたことを残念がる声が相次ぎました。

近くに住む70代の男性は「春場所の開催中はお祭りみたいなイメージでたくさんの人が集まってにぎわうので、大阪で開催されないのは寂しい」と話していました。

また、大阪 平野区の70代の女性は「開催されるのが当たり前と思っていたので、開催されないとなると寂しいが、こういう時だからしかたない。早く状況がよくなって、来年は戻ってきてほしい」と話していました。

大阪「相撲茶屋」2年連続で営業できず落胆

大阪市の春場所の会場で、弁当やお土産を販売している相撲案内所、いわゆる「相撲茶屋」は2年連続で営業できないことになり、関係者は大きな痛手に落胆しています。

大阪に8軒ある「相撲茶屋」は、日本相撲協会からチケットの販売の委託を受けているほか、弁当や土産の販売も行っていて、1年の収入のほとんどが春場所の開催期間に集中しています。

去年3月の春場所は新型コロナウイルスの影響で無観客で開催されたため、営業ができませんでした。

関係者はことしの開催に期待していましたが、東京で開催されることが決まり、大阪大相撲案内所の組合長でみずからも老舗の茶屋を経営する真喜代司さんは「去年、無観客になったときに『来年こそは通常開催をできるように』という期待感も、かなりありましたが、本当に厳しい状況になりました。大阪で2年連続、お客さんが相撲を一切見られない、われわれも商売ができないという状況になったことはつらいものがあります」と肩を落としました。

一方で「大阪のお客さんには申し訳ないですし、残念な気持ちでいっぱいですが命に関わる問題なので、相撲協会の決定も致し方ないと思います。大きな痛手ですが、これを乗り切って来年の開催につなげたい」と話し、東京での開催決定に理解を示しました。

今後、大阪大相撲案内所ではリモートの会議などで、今後の対応について協議していくということです。

コロナ禍の本場所開催

日本相撲協会は、感染対策に苦慮しながら観客の数を増やすなどして、少しずつ本場所の開催の在り方を通常に近づけてきましたが、現在の「第3波」と言われる感染拡大を受けて1年ぶりとなる東京以外での開催は見送らざるを得ませんでした。

日本相撲協会は去年3月の春場所を大阪市で開催したものの、新型コロナウイルスの感染拡大が国内でも始まっていて、史上初めて観客を入れない本場所としました。

次の5月の夏場所は緊急事態宣言のさなかだったこともあり、一連の八百長問題に揺れた平成23年春場所以来の中止となりました。

さらに7月は場所が再開されましたが本来、開催される予定だった名古屋市ではなく東京 両国の国技館での開催となり、観客の人数は収容人数のおよそ4分の1の2500人が上限でした。

9月の秋場所は通常どおり国技館で開催され、11月は開催場所を本来の福岡市から国技館に移して、観客の人数を5000人にまで増やして開催されました。

本場所が開催されていない期間には、力士や親方などの相撲協会員が感染するケースがたびたびあったものの、本場所中に出場している協会員の感染が確認されたことは一度もなく、場所の打ち切りもありませんでした。

こうした中、去年10月、相撲協会の芝田山広報部長は「東京でずっと開催を続けるわけにはいかない」などとして、ことし3月の春場所は例年どおり、大阪市で開催する方向で準備を進めると発表しました。

ただその後「第3波」と言われる感染拡大が続き、今月には東京や大阪などで2回目の緊急事態宣言が出されたこともあり、多くの協会員の移動や長期滞在を伴う大阪市での開催は断念せざるをえなかったということです。