「路線価」初の補正 大阪の3地域で コロナ影響で地価大幅下落

新型コロナウイルスの影響で地価が大幅に下がったため、相続税などの計算の基準となる「路線価」が、大阪の繁華街の3つの地域で4%引き下げられました。路線価が補正されるのはこれが初めてです。

路線価は、国税庁が1月1日時点で算定した、全国の主な道路に面した土地の1平方メートル当たりの評価額で、相続税や贈与税を計算する基準となります。

去年7月に発表された路線価は新型コロナウイルスの感染拡大前の地価に基づいていたため、国税庁は地価が下落する中、引き下げを行うか検討していました。

去年10月の発表では補正は見送られましたが、国税庁はその後、大阪市中央区の心斎橋筋2丁目、宗右衛門町、道頓堀1丁目の3つの地域では1月から9月にかけて地価がいずれも23%下がったことが確認され、20%以上の下落という目安を満たしたとして引き下げを決めました。

3つの地域の路線価はいずれも4%引き下げられ、心斎橋筋2丁目の最も高い地点では2152万円から2065万9200円に補正されました。

去年7月から9月の間に、この3つの地域で土地を相続したり土地の贈与を受けたりした人の納税額は新しい路線価で計算されます。

路線価の補正が行われたのは、昭和30年に制度が始まって以来、初めてです。

このほか名古屋市や大阪市で地価が15%以上下がっている地域があり、国税庁は今後の状況次第で補正を検討するとしています。

3地域 いずれも「道頓堀」周辺

全国のほかの地域で路線価の減額補正が見送られた一方で、初めての対象となった大阪 ミナミの3つの地域は、いずれも観光客に人気の「道頓堀」の周辺です。

去年1月1日時点の路線価は、中国からの観光客を中心としたインバウンド効果で、前の年に比べて44.6%上がった地点があるなど急激に上昇していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が一変しました。

ミナミで50年以上続く不動産会社では、およそ20の商業ビルを管理していますが、感染拡大以降、合わせて150のテナントのうち2割ほどが撤退したということです。

社長の玉木智哲さんと一緒に街を歩くと、道頓堀商店街の入り口のいわば“1等地”にある物件でも店が撤退していました。

去年4月からテナントを募集しているものの、いまだ借り手は見つかっていないということで、以前では考えられなかった状況だといいます。

また、かつては購買意欲の高い外国人観光客であふれていたドラッグストアや免税店が相次いで閉店したままになっていました。

玉木さんは「特にドラッグストアは相場の2倍の賃料を払ってでも競って店を出していただけに、相次ぐ閉店によって不動産としての収益力が下がり、地価の下落につながったと思う」と話していました。

また、先行きについては「ビルのオーナーの中には、国の給付金などで持ちこたえられる間は賃料を下げずに借り手がつくのを待っている人も多い。しかし、新型コロナの影響が長引けば、賃料を下げざるをえなくなり、さらなる地価の下落につながる可能性もある」と話していました。

専門家「外国人観光客激減で地価が揺り戻し」

不動産市況に詳しいニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員は「今回対象となった大阪の中心地はこれまで外国人観光客が多く訪れてホテルや店舗の出店が相次ぎ、大きく地価が上がっていた。新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が9割も減少したので、その揺り戻しが来た」と指摘しています。

路線価が初めて補正されたことについては、「路線価を途中で修正するという判断には驚いたが、地価が下がっているので妥当と言える。今後の動向を注視したい」と話していました。