ことしの春闘 きょう事実上スタート 労使間の交渉が展開

ことしの春闘は26日に開かれる経団連と連合の会合で事実上、スタートします。新型コロナウイルスの感染拡大が長期化し、日本経済の先行きへの不透明感が一層強まる中で、雇用の維持と賃金をどの程度引き上げられるのかをめぐって、労使間の交渉が展開されることになります。

ことしの春闘は経団連と連合の幹部が出席する労使フォーラムで事実上、スタートします。

連合は、雇用の維持を前提としたうえで基本給を引き上げる「ベースアップ」に相当する分として、2%程度の賃金引き上げを要求する方針を掲げています。

新型コロナの感染拡大の影響で働く人の生活は苦しくなっているとして、医療や介護、物流などで働くいわゆる「エッセンシャルワーカー」や非正規労働者の待遇改善を進めるべきと訴えます。

一方、経団連は、感染の収束が見通せない中で「業種の横並びや各社一律の賃金引き上げを検討することは現実的ではない」としています。

そのうえで業績が悪化している企業については、事業と雇用の維持を最優先とし「ベースアップの実施は困難だ」として賃金の引き上げには慎重な立場を示しています。

感染拡大の長期化で日本経済の先行きへの不透明感が一層強まる中、ことしの春闘では雇用の維持と、賃金をどの程度引き上げられるのかをめぐって、労使間の交渉が展開されることになります。

ベースアップより成果で賃金決める制度導入の企業も

企業の業績の先行きに不透明感が強まる中でのことしの春闘について、大手化学メーカーのトップは、賃金を一律で引き上げるベースアップは難しいとしたうえで、年功序列ではなく役割や成果に応じて賃金を決めることで社員のやる気を高めたいと話しています。

大手化学メーカー「三菱ケミカル」は、感染の長期化で業績の先行きに不透明感が増す中で、役割や成果などで処遇を決める新しい人事制度をことし4月からすべての社員を対象に導入することを決めました。

この会社では去年10月に、管理職を対象に「ジョブ型」と呼ばれる成果によって賃金を決める制度を導入しています。

一般職を対象にした新しい制度は、この「ジョブ型」に近いもので、与えられた目標の達成度合いなどに応じて賃金が決められます。

勤続年数に応じて給料が上がる「年功序列」ではなく、評価に応じて処遇を決めることで、社員のやる気を引き出し、会社の競争力を高めるねらいがあります。

三菱ケミカルの和賀昌之社長は「景気の先行きが見通しづらい中で、ベースアップによって社員全体の賃金を底上げすることは難しい。年功序列を見直したほうが、社員のモチベーションは逆に高まり、優秀な人材も集まるのではないか」と話しています。

専門家 “コロナ収束後見据えた中期的な議論を”

ことしの春闘の見通しについて、雇用問題などに詳しい日本総合研究所の山田久主席研究員は「新型コロナの影響で企業や業界ごとに業績に大きくばらつきがでている。業績がいい業界はこれまでのように賃上げが議論される一方、厳しい業界は雇用をどう守るかを中心に議論されることになる」と述べました。

そのうえで「たとえば業績が厳しい業界から人手不足の業界に人材を一時的に出向させる“人材シェアリング”など、社会全体でどう雇用を守っていくかを議論してほしい。また、たとえ、いま業績が厳しくても、コロナ収束後には賃上げをするために、企業をどう成長させるかについて、中期的な議論が求められている」と述べ、労使交渉は前例にとらわれず、柔軟に行われるべきだと指摘しました。