重症患者の救命率 第1波よりやや向上 患者増加には警戒

新型コロナウイルスの重症患者に対しては、人工呼吸器や人工心肺装置、ECMOを使った治療が行われますが、こうした治療を受けている重症患者の救命率は、この冬の感染拡大では患者数が増えている中でも去年春の「第1波」に比べて、やや向上していることが集中治療についてまとめている団体の調べで分かりました。重症患者に対する治療の向上が背景にあるとみられますが、専門家は重症患者が増え続ければ救えない患者が増えるとして感染対策の徹底を呼びかけています。

重症患者の治療についてまとめている「ECMOnet」によりますと人工呼吸器や人工心肺装置=「ECMO」を使った治療を受けた患者が治療によって回復した救命率は、感染の「第1波」にあたる去年2月から6月まででは73.3%でしたが、7月から11月まででは78.6%、そして12月以降、今月21日まででは、患者896人のうち697人が回復し、重症患者数は過去最多の更新が続く中でも、救命率は77.8%と第1波より4.5ポイント上がっています。
「第1波」では、状態が悪化して人工呼吸器からECMOの治療に移行する割合は4人に1人だったのが、現在では12人に1人となっています。

炎症を抑える薬や人工呼吸器を装着する際にうつぶせにすることなど、効果の高い治療が広く知られるようになったことが救命率が上がっている要因だと見られています。

一方で、ECMOの治療を受けた患者に限ると、救命率は、現在64.5%と第1波の69.5%と比べて低下傾向で、人工呼吸器で救命できる患者が増えている一方、より深刻な状態になっている人がECMOの治療を受けるようになっていると見られています。
ECMOnet代表の竹田晋浩 医師は「ECMOの治療に至る患者の重症度は高く、大変厳しい治療が続き治療日数も長くなっている。治療は改善してきているが、重症患者が増えれば亡くなる人も増えてしまう。対策としては感染者を減らすことに尽きる」と話しています。

病院「受け入れ体制はギリギリ」

埼玉県川口市にある循環器や呼吸器の病気の専門病院、「かわぐち心臓呼吸器病院」では新型コロナウイルスの感染が始まった初期から重症患者を受け入れ、人工呼吸器や人工心肺装置、ECMOを使った治療を行っています。

病院によりますと、当初は新型コロナウイルスの重症患者用に4床用意して受け入れを始めましたが、去年12月には6床に増やし、年明けにさらに患者が増えたことや、治療が長引く患者もいることから改築工事を行い、今週からは10床にまで増やしたということです。

一方で、10床を確保するため、新型コロナ以外の肺炎などの患者が使う病床は16床減らすことになり、これまで20人から30人程度受けてきた他の病気での入院は半減したということです。
病院長で、ECMOnet代表の竹田晋浩 医師は「人工呼吸器やECMOの治療は患者に装置をつければ自動的に回復するわけではなく重症患者を受け入れられる病院で診る必要があるが、いま、重症患者を受け入れる体制はかなりギリギリになっている」と話しています。