外出自粛で大丈夫?日光浴のススメ

外出自粛で大丈夫?日光浴のススメ
コロナ禍のなか迎えたこの冬、不要不急の外出自粛でいつもの散歩や外での運動を控えているという人も多いのではないでしょうか。

家で過ごす時間が長くなっているいま、ネット上では「日光を浴びていない」ことを気にする書き込みが見られるようになっています。

さらに、生活様式の変化で日光に当たる時間が短くなると、私たちの健康にさまざまな影響が出かねないことも分かってきました。

感染に気をつけながらどうやって日光を浴びればいいのか、調べてみました。

(ネットワーク報道部 記者 斉藤直哉 野田綾 高杉北斗)

「日光、浴びたいけど」

テレワークやリモート授業で家にこもりがちな日々。

不要不急の外出自粛が呼びかけられる中、SNS上では、日光を浴びていないことへの戸惑いの声や、日光を浴びる喜びの声があがっています。
「日光浴びな あかんけど、これは不要不急なんかなと思ったりして、なんかもうよくわからん」
「日中も不要不急の外出自粛らしいが、お日様に当たって散歩しない方が免疫力下がりそうだけど」
「不要不急の外出中。やっぱ日光を浴びると活力が湧くね」

骨折やけがのリスクも

日に当たらなくなると、私たちの体にはどんな影響が出るのか。

これまでにもさまざまな研究が行われてきましたが、コロナ禍が続く去年11月、「けがのリスクが高まっているおそれがある」という新たな研究結果が発表されました。

この研究を行ったのは、順天堂大学医学部の斎田良知特任教授。
日本のプロサッカー選手20人余りを対象に血液中のビタミンDの濃度を調べたところ、通常は冬から春にかけて濃度が上昇する傾向があったのに、去年の5月にはおととし冬の濃度を下回っていました。

ビタミンDは、食事のほか日光を浴びることで体内で合成される栄養素で、血液中の濃度が低下すると疲労骨折や肉離れのリスクが高まることが海外の研究などで明らかになっています。

斎田特任教授は、去年4月の緊急事態宣言で屋外でのトレーニングや外出が制限されていたことから「選手たちが日光を浴びる時間が短くなったことがビタミンD濃度低下の主な原因で、けがをしやすくなっていた」と分析しています。
順天堂大学医学部 斎田良知 特任教授
「夏前に選手たちが練習を再開したときに肉離れなど筋肉のトラブルを訴えるケースが目立ちました。アスリートでない一般の人でも外出自粛で日光を浴びていないとビタミンDが不足するおそれがあります。外出自粛を終えるときには急な運動に注意し、特に高齢者は転倒による骨折や骨粗しょう症に気をつける必要があります」
ビタミンDは、魚やきのこ、卵黄といった食事からも補うことはできるそうですが、斎田特任教授は、10分から15分ほどの短い時間でも日光を直接浴びることが大事だとアドバイスしています。
順天堂大学医学部 斎田良知 特任教授
「ビタミンDの合成に必要な紫外線は窓ガラスを透過しないので、屋内で浴びるのではなく、周りに気をつけながら外で散歩するとけがの予防にいいと思います。紫外線による日焼けや寒さが気にならない程度に、手や顔を少し露出すると有効です」

日光不足で冬季うつ

日に当たらないことでの、気分の落ち込みのリスクを指摘する声もあります。
天気と体調の変化について30年近くにわたって研究を続けている愛知医科大学の客員教授で医師の佐藤純さんは、「日照時間が短いこの時期は、そもそも気分が落ち込む人が増える傾向にある季節です」と話します。
佐藤客員教授によりますと、日光を浴びることで私たちの脳内では、セロトニンという神経伝達物質が分泌されます。

セロトニンは、ストレスに対して効能があるといわれますが、秋から冬にかけては日照時間が短いことに加え、寒さで外出が減り、セロトニンが減少してうつ傾向になる人が増えると考えられています。

最近、佐藤客員教授のもとには、リモートワークが続き週に1度しか出社しないという人や、食事の宅配サービスの利用で買い物に行く機会が減ったという人からの相談が増えているそうです。
愛知医科大学 佐藤純 客員教授
「毎日出勤をしていれば必然的に日の光を浴びることになりますが、コロナ禍での外出自粛要請やリモートワークの増加によって 日光浴の機会はさらに減っているのかもしれません」

午前中に日光を

また佐藤客員教授は、夜に良質な睡眠をとるためにも、午前中に日光を浴びることが大切だと指摘しています。

日光を浴びると、催眠作用があるメラトニンの分泌はいったん抑制されます。

そして、光を浴びてから14時間から16時間後(午前中に浴びれば夜間)にメラトニンの分泌が高まり、この状態で就寝することがよい生活リズムを生み出すということです。
愛知医科大学 佐藤純 客員教授
「午前中に日の光を浴びることは精神の安定や良質な睡眠につながるので、生活にリズムを持たせることは大切です。『3密を避ける』など大原則を守っていれば、外出についてあまり神経質になりすぎなくてもいいのではないでしょうか」

お散歩は大丈夫?

そうは言っても、不要不急の外出の自粛が呼びかけられている中、散歩に出てもよいものかとためらう気持ちもわかります。

散歩についてどう考えればいいのか、全国でも感染者の多い東京都の見解を、都のホームページで確認してみました。
すると、東京都福祉保健局の『トーキョーウォーキングマップ』というサイトのトップに、以下のようなウォーキングの注意点がまとめられていました。
「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うウォーキングの注意点」
1 発熱やせきといったかぜの症状の有無など、体調をチェックをすること
2 周囲の人となるべく距離を空けマスクを着用すること
3 ウォーキングの後や公衆トイレ利用後は手や顔を洗うこと
散歩はしてもよいということなのか。
東京都健康推進課の長嶺路子課長に話を聞いてみました。

すると、「健康を維持するためには適度な運動とよい睡眠を取ることが重要です。散歩をするのがだめというわけではありません」との回答。

長嶺課長は十分な感染対策を行ったうえで散歩をしてほしいと話しています。
東京都健康推進課 長嶺路子 課長
「周りの人との十分な距離をとって歩くこと、マスクを着用すること、帰宅後は手洗いをすることのほか、3密にならない時間や場所を選ぶことや短時間にすることも心がけてほしいと思います。たとえば、買い物に出る際に一つ先のスーパーや商店街まで歩いてみたり、通勤通学の際に一駅手前で降りて歩いてみたりするなど、日頃の生活の延長線でできる運動をしてみてください」
また、よりよい睡眠を取るためにも適度な運動と日光浴は欠かせないと長嶺課長は話していました。
東京都健康推進課 長嶺路子 課長
「コロナ禍は睡眠に影響が出ることもありますが、十分な睡眠を取るためには適度な日光を浴びることも重要です。朝起きたらカーテンを開けて日の光を入れたり、午前中に買い物で外に出る際たっぷり日の光を浴びることも大切です。外に出なくても、日の光の入る部屋の中でできる運動も取り入れながら、健康の維持を図ってください」

春を待ちわびて

私たちの生活がこれからどう変わっていくのか、まだまだ先は見えません。

いまを乗り切って、ぽかぽかの陽気のなかみんなで外で過ごせる季節が訪れるまで。

そのときまで健康に過ごすためにも、少し時間を見つけて、日光に当たってみるのはいかがでしょうか。