“隠れ近視”の子ども増加か 通常検査で分からず NHKなど調査

子どもの視力は年々低下し、新型コロナウイルスの感染拡大でオンラインの授業などでスマートフォンやタブレット端末を見る機会も増え、さらに目に悪い影響が出ないか懸念されています。

NHKが京都市の小学校と専門家の協力を得て実態調査を行ったところ、視力検査では分からない「近視」と判定された児童が、視力の低下がみられた児童の2倍以上いたことが分かりました。

NHKは去年11月、眼科の専門医などの協力を得て、京都市の「京都教育大学附属京都小中学校」で近視の実態調査を行いました。

近視は一般的には視力検査の値が低下すると疑いがあるとされますが、多くの場合、眼球の長さが延び、明るさや色、形などを感じ取る網膜の手前でピントが合ってしまうことで起きます。

このため正確に調べるには特殊な装置を使って、目の表面の角膜から最も奥にある網膜までの眼球の奥行き「眼軸(がんじく)」の長さを測定する必要があります。

この学校で去年6月に行った通常の視力検査では、眼科を受診することが必要とされる「視力0.7未満」だったのは23.4%でしたが、児童576人の「眼軸」の長さや角膜の形などを測定したところ、近視と判定された児童は54.5%と半数以上に上り、視力検査では分からない“隠れ近視”とも言える児童が2倍以上いたことが分かりました。
近視の児童は1年生では23.5%、2年生が40.4%、3年生が52.1%、4年生が64.6%、5年生が70.5%、6年生では78.3%と、学年が上がるほどに増えていました。

眼軸は一度延びると戻らず、成人で平均24ミリ程度とされますが、6年生で平均24.2ミリと、すでに成人の平均の長さに達し、中には超えている児童もいて、近視が進んでいる実態が明らかになりました。

調査を監修した眼科の専門医で東京医科歯科大学の五十嵐多恵医師は「眼軸は近くを見る時間が長いほど延びていく。スマホなどの普及で小さい頃から近くを見ることが増え、目にとって、かつてない危険な時代になっている。近い距離のものを見る時間を減らし、遠くを見て目を休めるなど、できるかぎりの対策をとることが必要だ」と話しています。

急増する近視 進行抑えるには

近視はアジアを中心に世界で急増していて、オーストラリアなどの研究グループが2016年に出した試算では、2050年には世界の人口のおよそ半数に当たるおよそ48億人が近視になると予想されています。

WHO=世界保健機関も深刻な公衆衛生上の懸念があるとしていて、世界各地でさまざまな対策が取られています。
「眼軸」の長さが延びることで起きる近視は、30センチ以内の近いところを見る時間が長くなると進行するとされるため、アメリカ眼科学会は、20分間継続して近くを見たあとは20フィート、およそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるという「20ー20ー20」ルールを推奨しています。

さらに近視の予防に効果があると考えられているのが「太陽の光を浴びること」です。

最近の研究では1日およそ2時間、屋外で活動し、十分な光を浴びることで近視の発症を抑えられることが分かってきていて、台湾では1日に2時間以上、屋外で光を浴びることを目標に、およそ10年前から取り組みを進めた結果、視力0.8未満の小学生の割合は5%以上減ったということです。

眼科の専門医で東京医科歯科大学の五十嵐多恵医師は「連続して近くを見る時間を減らし、外の光を浴びることを意識して生活を送るかどうかで近視が進むスピードは違ってくる。親の指導も大事だが、子ども自身の意識付けも大切だ」と話しています。

文科省 来年度から全国で大規模調査へ

通常の視力検査だけでは分からない子どもの近視の実態を把握するため、文部科学省は全国9000人の小中学生を対象に、目の奥行きの長さを調べる初めての大規模調査を来年度から始めることにしています。

遠くにあるものがぼやけて見にくくなる近視は、明るさや色、形などを感じ取る網膜の上でピントが合わせられなくなることで起きます。

昨年度の「学校保健統計調査」では、裸眼の視力が1.0未満の割合は小学生で34.6%、中学生で57.5%、高校生で67.6%と、統計を取り始めてから最も悪くなっていて、文部科学省は子どもの近視の実態を明らかにしようと、来年度から全国の小中学校のおよそ9000人を対象に調査を始めることになりました。

調査では特殊な装置を使って、目の表面の角膜から最も奥にある網膜までの眼球の奥行き、「眼軸(がんじく)」の長さに加えて、焦点の位置が正しく網膜上に合うかどうかなどを3年間続けて測定し、近視の進行の度合いをみる計画です。

新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす機会が増え、子どもたちもスマートフォンや携帯ゲーム機を使ったり、オンライン授業を受けたりするなど、目を酷使することが多くなっていると指摘されています。

文部科学省の三木忠一健康教育・食育課長は「スマートフォンなどデジタル機器の利用や屋外での活動など生活習慣と近視の関連も調べ、有効な対策を検討していきたい」と話しています。