東京五輪開幕まで半年 準備進むも輸送面など計画変更可能性も

東京オリンピックの開幕まで23日であと半年です。

都は、医療従事者の確保を急ぐなど安全・安心な大会の開催に向けてさまざまな事態に対応できるよう準備を進める一方、新型コロナウイルスの感染状況次第では、輸送やボランティアの研修の計画変更を迫られる可能性もあるとみています。

新型コロナウイルスの影響で1年延期された東京オリンピックの開幕まで23日であと半年です。

都は、緊急事態宣言が出ていることから半年前のイベントやライトアップは行いません。

大会に向けた準備のうち、新型コロナウイルスの感染拡大でひっ迫している医療体制は、海外の選手にも対応できる体制の構築が課題となっていて、都は地元の医師会とも連携し、医療従事者の確保を急いでいます。

一方、選手や観客の輸送では、ことし3月以降、実際に車両を走らせてスムーズに運行できるかを検証する予定ですが、都は、仮に観客の人数が少なくなれば輸送計画の見直しを迫られると懸念しています。

さらに、町なかで観客などを案内するおよそ3万人のボランティア「シティキャスト」について、都は、ことし4月以降に集合形式での研修を計画していますが、感染状況次第では、オンライン形式との併用の可能性もあるということです。

都としては、感染拡大の抑制と予防策の徹底が安全・安心な大会の開催のカギを握るとして、さまざまな事態に対応できるよう組織委員会や国などと準備を進めることにしています。

約12万人の「ボランティア」 モチベーション維持などで課題が

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、東京オリンピック・パラリンピックの運営をサポートするおよそ12万人のボランティアの感染対策やモチベーションの維持が課題となっています。

東京大会のボランティアは主に選手村や競技会場で活動する大会ボランティア「フィールドキャスト」およそ8万人と、観客などに交通や観光の案内をする都市ボランティア「シティキャスト」の4万人以上が活動する予定です。

しかし、大会延期によって大会ボランティアは去年9月時点で700人程度が参加できなくなったと推計され、都市ボランティアは神奈川、千葉、埼玉の3県でこれまでにおよそ670人が辞退の意思などを示しています。

また、東京都や埼玉県が去年の夏から秋にかけて都市ボランティアを対象に行ったアンケートでは、8割近くがウイルスの感染状況を心配していると答えました。

ボランティアの男性「不安がどんどん高まっている」

ボランティアのなかには具体的な検討状況や開催までの道筋を示すよう求める声が出ています。

東京・町田市に住む長谷川紀生さん(66)は、大会期間中、観客の案内などを担うボランティアです。

東京大会で日本を訪れる世界中の人と交流することを心待ちにしていて、去年延期が決まったあとも「開催を信じて楽しく準備したい」と話し、体力維持のための筋トレや英語の学習を続けてきました。

しかし、開催まで半年となった今も感染が収まらず状況が悪化していることに不安を感じています。

長谷川さんは「みんなが東京に集まってスポーツの祭典が開けるのか、不安がどんどん高まっている。大会まで時間がないと感じる」と話しています。

また「具体的にどうするのか示されず不満だ。先が見えることが強いモチベーションになる。どういう状況ならこういう条件でやる、感染状況がここまで来てしまったら中止せざるをえないなど、積極的に方針を提示してほしい。しっかりとした道筋を示して大会に結び付けてほしい」と話し、具体的な検討状況や開催までの道筋を示してほしいとしています。

各自治体もボランティアの感染予防対策の策定など対応進める

このうち東京都は、大会で観客の案内などをするおよそ3万人のボランティア「シティキャスト」について、感染予防対策のマニュアルを今月中に示したいとしています。

この中には、マスクの着用や手洗い、消毒を行って密集を避けることを基本としたうえで、暑さ対策と両立させるために周囲との距離を確保できる場合はマスクを適宜外すことや休憩時間も確保することなどを盛り込むことにしていて、今月中にボランティアに示したいとしています。

また、ボランティアどうしの交流が難しいことなどから、自治体の中では研修や交流会を通してモチベーションの維持を図ろうという動きも広がっています。

千葉県では都市ボランティアを対象にしたオンライン研修を先月下旬から新たに始め、21日行われた中国語の会話を学ぶ研修には10人余りが参加しました。

研修では外国語や感染症の知識など必要な技能を身につけられるだけでなく、少人数の参加者どうしで交流しやすいとして期待されています。

「開催不確実」「無観客」「中止ない」 海外でさまざまな見方

一方、海外のメディアは大会開催についてさまざまな見方を伝えています。

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは今月15日付けの電子版で「東京オリンピックへの希望が暗くなる」というタイトルの記事を配信しました。

このなかで今月に入って1日に6000人を超える感染者を記録するなど開催国日本で感染が再拡大している状況と合わせてワクチンの接種が2月下旬以降にしか始まらず、接種が進むには数か月を要することなどを紹介し日を追うごとに東京大会の開催が不確実になってきたと報じています。

また、フランスのAFP通信とスポーツ紙のレキップは20日、2024年パリ大会の組織委員会のエスタンゲ会長のインタビュー記事を掲載しました。

このなかでエスタンゲ会長は「大会が何もないよりは無観客でも行うほうがよい。無観客となる場合、大きな後悔が残るかもしれないが現実に適応することが大事だ」と述べ感染状況に応じて無観客も視野に大会の在り方を検討すべきだという見解を示しました。

また、2012年のロンドン大会組織委員会の会長で世界陸連のセバスチャン・コー会長はイギリスのテレビ局、スカイニュースのインタビューのなかで「チャレンジは続くと思うが、この状況に対応できる頑強さと回復力を持つ国は世界中で日本だけだ。大会が中止されることは無いと思う」などと述べ、この夏の開催に向け日本の適応力に期待を示しました。

各国の有識者やメディアの大会開催に関する見方はさまざまですが、IOCや大会組織委員会はこれまで一貫してことし7月の大会の開催に向けて準備を進めていることを強調し、中止や再延期の可能性を明確に否定しています。