“宣言”2週間「実効再生産数」11都府県の多くで前週より低く

緊急事態宣言が出されてから22日で2週間になります。緊急事態宣言の対象地域となっている11都府県について、NHKが1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す「実効再生産数」を簡易な手法で計算したところ、多くの都府県で前の週より低くなっていることが分かりました。専門家は「減少傾向にあるのはよい兆しだが非常に微妙な状況で、今が頑張りどころだ」と指摘しています。

実効再生産数は、「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方、「1」を下回ると収束に向かうとされ、感染状況をみる指標となりますが、発症日をもとに計算するなど、多くの条件を考慮する必要があるため、正確な数値が出るまでに時間がかかります。

このため、NHKは疫学の専門家で国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長の監修を受け、緊急事態宣言が出ている11都府県について、21日までのデータに基づいて毎日、報告される感染者数を基に簡易な手法で目安となる数値を計算しました。

その結果です。

東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県

東京都の実効再生産数は、緊急事態宣言が出された今月7日時点で1.27、1週間がたった今月14日時点で1.21と「1」を超えていましたが、21日時点では0.96で「1」を下回っています。

神奈川県では、今月7日時点で1.11、今月14日時点で1.45でしたが、21日の時点では0.97で「1」を下回りました。

埼玉県では、今月7日時点で1.10、今月14日時点で1.25、そして21日の時点では1.05で引き続き「1」を上回っています。

千葉県では、今月7日時点で1.22、今月14日時点で1.42、そして21日の時点では1.04と引き続き「1」を上回っています。

また、1都3県全体では今月7日時点で1.20、今月14日時点で1.29、そして21日の時点では0.98となり、「1」を下回っています。

栃木県

先週から新たに緊急事態宣言の対象となった栃木県では、今月7日時点で1.52、今月14日時点で1.20でしたが、21日の時点では0.72と「1」を下回りました。

愛知県・岐阜県

愛知県は、今月7日時点で1.05、今月14日時点で1.13、21日の時点で0.91と、「1」を下回りました。

岐阜県は、今月7日時点で1.17、今月14日時点で1.01、そして21日の時点では0.91でこちらも「1」を下回っています。

大阪府・京都府・兵庫県

大阪府は、今月7日時点で1.26、今月14日時点で1.31でしたが、21日の時点では0.96と、「1」を下回りました。

京都府は、今月7日時点で1.02、今月14日時点で1.22、21日の時点で0.99と、「1」を下回りました。

兵庫県は、今月7日時点で0.97で、今月14日時点で1.33、そして21日の時点では0.98で再び「1」を下回りました。

関西の2府1県では、今月7日時点で1.12、今月14日時点で1.30、そして21日の時点では0.97と「1」を下回っています。

福岡県

福岡県は、今月7日時点で1.18、今月14日時点で1.28、そして21日の時点では1.02と、引き続き「1」を上回りました。

全国

また、全国では今月7日時点で1.17、今月14日時点で1.27、21日の時点では0.96で「1」を下回っています。

日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「感染が収束しているとまでは言えないが、ようやく『1』を下回り、全国的にわずかにでも減少傾向にあるのはよい兆しだ。一方で、来週以降も数値が『1』前後で推移すると今と変わらないペースで感染者が出続けることになり、医療がさらにひっ迫して、より強い対策に踏み切らざるをえなくなると考えられる。今は非常に微妙な状況で、今後、数値を確実に下げていけるかが重要だ。緊急事態宣言を早く解除するためにも、今が頑張りどころだ」と話しています。

専門家「東京 安心していい段階ではない」

各地の実効再生産数の数値について、日本感染症学会の理事長で東邦大学の舘田一博教授は「東京都を含む1都3県は緊急事態宣言から2週間が経過して、一時期に比べて落ち着いたように見える。宣言の効果によって人の移動や行動が抑制され、感染もある程度抑えられているのだと思うが、今も1日1000人を超える感染者が出続けているため、安心していい段階ではない。これから確実に感染者数を減らしていくよう取り組みを継続していく必要がある」と指摘しました。

また、中部地方や関西については「愛知県と岐阜県については数値が『1』を下回っているが、1日の感染者数によってはすぐに『1』を超えてもおかしくない状況で、今後も警戒が必要だ。また、大阪府など2府1県は1週間で確実に減少傾向が見えているが、宣言の効果が出ているかを見極めるにはもう少し時間が必要だ。この感染症は対策の効果がすぐには見えにくいという特徴がある。まだ高い状態なので、再び増加に転じないか感染状況を注意深く見ながら、今できることをしっかりやって続けていくことが必要だ」と話しています。

また、福岡県に関しては「こちらも大阪府などと同様に緊急事態宣言の効果がまだ完全には出ていないのだと考えられる。来週以降の数値を見て、対策がうまくいっているかどうかを評価する必要がある」と話しています。

西村経済再生相「感染者 大幅減少ならず対策を」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で、緊急事態宣言の対象となっている地域の感染状況について、新規の感染者数に若干の減少が見られる地域があるものの、大幅な減少にはなっていない上、自宅などでの療養者数も多く、重症者の増加も見込まれると説明しました。

また、▼首都圏の駅の朝の利用状況は、去年の宣言の際は70%減少した一方、現在は40%の減少にとどまっているほか、▼繁華街での人の流れも、去年の宣言の際と比べて多いと指摘しました。

その上で「きょう、対策を取れば、2週間後に効果が表れる。経済への影響も、長引けば長引くほど大きくなる」と述べ、不要不急の外出自粛やテレワークによる出勤者の7割削減などに改めて協力を呼びかけました。