米バイデン大統領 “最優先課題” 新型コロナ国家戦略を発表

アメリカのバイデン大統領は就任から一夜明けて、最優先課題と位置づける新型コロナウイルス対策の国家戦略を発表しました。また、ハリス副大統領はWHO=世界保健機関の事務局長と電話会談を行い、前の政権の政策を転換し、国際機関と連携しながらウイルス対策に当たる方針を強調しました。

バイデン大統領は就任2日目となる21日、政権の最優先課題と位置づける新型コロナウイルス対策の国家戦略を発表しました。

バイデン大統領は「死者の数は来月には50万人を超えるおそれがある」と述べ、感染拡大の現状に危機感をあらわにしました。

戦略は、感染拡大の封じ込めやワクチン接種など7つの項目からなっていて、この中で公共交通機関などでのマスクの着用を求めるとともに、ワクチンについては接種できる施設を増やすなどして政権発足から100日で1億回分の接種を目指すなどとしています。

また、海外からアメリカに航空機で向かう人に対して、事前の検査で陰性だったことを示すよう求めるなどとしています。

この日、ホワイトハウスは、ハリス副大統領がWHOのテドロス事務局長と電話会談を行い、「WHOは新型ウイルスの封じ込めに欠かせない」として連携していく考えを伝えたことを明らかにしました。

WHOをめぐって、バイデン政権はすでにトランプ前政権が打ち出していた脱退を撤回すると国連に通知しており、国際機関と協力しながらウイルス対策に臨む方針を示し、政策の転換を強調した形です。

新型コロナ対策 国家戦略の要旨

アメリカのバイデン大統領は、「新型コロナウイルス対策と感染拡大に備えるための国家戦略」と題したおよそ200ページの文書を公表しました。

戦略では、以下のように7つの目標を掲げ、それぞれについて実現に向けた政策を明記しています。

1 国民の信頼を取り戻す

▼ホワイトハウスに新型コロナウイルス対策の専門部署を設け、省庁間の調整をし、州政府などと連携する。
▼科学に基づく情報提供を定期的に行う。
▼政府は感染者数、検査数などデータを公表する。
▼連邦政府は州政府、民間企業、地域などと連携する。
▼世界レベルの公衆衛生教育を行う。

2 ワクチン接種を進める

▼安全で効果のあるワクチン、注射器などの物資を確保する。
▼優先接種の対象をエッセンシャルワーカーと65歳以上に拡大するとともに接種のペースを加速させ、政権発足から100日で1億回分の接種を目指す。
▼全米で接種できる施設を必要なだけ増やす。
▼接種の難しい人やハイリスクの人に対応する。
▼接種のための地方政府の費用を連邦政府が全額負担する。
▼感染の深刻な地域で接種を進める。
▼ワクチンの啓発活動を行う。
▼ワクチンの供給や接種のデータ収集を強化する。
▼ワクチンの安全性を監視する。
▼接種できる医療関係者などを確保する。

3 感染を抑え込む

▼連邦政府の職員や、連邦政府の建物に入る人のほか、旅客機・鉄道など公共交通機関でのマスクの着用を求める。
▼検査を拡大する。
▼学校での検査態勢の支援、簡易検査の支援を行う。
▼治療態勢を整備する。
▼学校や職場の感染防止策を適切に評価し、活動の再開を判断するための基準をつくる。
▼治療に当たる人員の確保に努める。
▼政府はデータの収集や活用をより充実させるとともに、それらのデータを利用しやすい形にして公開する。

4 緊急援助を即時拡大し 国防生産法を適用する

▼各州の州兵の動員や物資の供給にかかる費用を連邦政府が負担する。
▼検査やワクチン接種に必要で、かつ不足している物資を国防生産法などを適用して確保する。
▼医療物資や薬などを十分に供給する。
▼医療物資の国内生産を進める。
▼特に重要な物資の分配計画を政府が作る。

5 学校・仕事・移動の安全な再開

▼就任後100日までに、幼稚園や小中学校の再開を目指し、政府が戦略をたてるとともに、必要な資金を提供する。
▼保育所を財政的に支援する。
▼大学の再開を支援する。
▼安全な労働環境を守る。
▼経済活動の再開に向けた感染対策の指針を示す。
▼外国からの渡航者は出発前の検査で陰性であり、到着後に隔離期間を設けることを義務づける。

6 リスクの高い人を守り 人種・地域間の公平を促す

▼公平性を保つためのタスクフォースをつくる。
▼リスクの高い人たちのデータの収集を強化する。
▼検査や治療、ワクチン接種などに公平にアクセスできるようにする。
▼質の高い医療へのアクセスを拡大する。
▼支援が必要な地域の人員を確保する。
▼生活困窮者などへの支援のためのセーフティーネットを強化する。
▼エッセンシャルワーカーや障害のある人、持病のある人などを守るための感染予防策を示す。

7 アメリカの指導力を回復し 将来の脅威に備える

▼WHOからの脱退を撤回する。
▼ワクチンの公平な分配のための国際的な枠組み「COVAXファシリティ」などに参加するとともに、人道支援を強化する。
▼国連安全保障理事会の枠組みを利用して人道支援を強化するなどして、新型ウイルス対策における国際的な指導力を取り戻す。
▼オバマ政権当時、ホワイトハウスの国家安全保障会議に置かれた感染症対策の高官を復活させる。

「GAFA」相次ぎ祝福のメッセージ

アメリカではバイデン大統領の就任を受けて、「GAFA」とも呼ばれる大手IT企業が相次いで祝福のメッセージを発表しました。

このうちアマゾン・ドット・コムは20日、バイデン大統領宛てのメッセージを公表し、新型コロナウイルスのワクチンの普及を後押しするため会社が持つ情報技術などを提供する用意があるとして協力を申し出ています。

また、アップルのクックCEOとグーグルのピチャイCEOは、ツイッターに投稿し、大統領が地球温暖化対策や移民政策を転換したことを評価し連帯を表明しています。

そしてフェイスブックのサンドバーグCOOは、ハリス副大統領が述べた「私は女性として最初の副大統領になるかもしれないが、決して最後にはならない」ということばを引用したうえで、「きょうほどそれを確信した日はない」と投稿し祝福しています。