政府 コロナ特措法など改正案決定 応じない事業者に行政罰も

新型コロナウイルス対策の実効性を高める必要があるとして、政府は、22日の閣議で特別措置法や感染症法などの改正案を決定し、国会に提出しました。

提出されたのは、新型コロナウイルス対策の特別措置法と感染症法、それに検疫法の改正案です。

特別措置法の改正案では、緊急事態宣言の前でも集中的に対策を講じられるよう「まん延防止等重点措置」を新たに設けるとしています。

そのうえで、対象地域の自治体の知事が事業者に対し、営業時間の変更などを要請し、応じない場合は、命令ができるとしているほか、立ち入り検査なども可能にするとしています。

命令に応じない事業者には行政罰としての過料を科し、宣言が出されている場合は50万円以下、宣言前の「重点措置」の場合は30万円以下とし、立ち入り検査を拒否した場合も20万円以下の過料を科すとしています。

一方、営業時間短縮などの影響を受けた事業者を支援するため、政府と自治体が、必要な財政上の措置を講じることを明記しています。

感染症法の改正案では、感染者に対し知事が宿泊療養などを要請できる規定を新たに設け、入院を拒否した人には1年以下の懲役か100万円以下の罰金の刑事罰を科すなどとしています。

一方で、厚生労働大臣や知事が医療機関に対し、感染者の受け入れなど協力を勧告できるとし、正当な理由がないのに従わなかった場合は、医療機関を公表できるとしています。

検疫法の改正案では、海外から入国する人に原則14日間、自宅待機などの協力を要請し、応じない場合には施設への「停留」を可能にし、これに従わない場合には1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科すなどとしています。

政府は、こうした改正案を来月はじめに国会で成立させたい考えです。

特措法改正案の内容

新型コロナウイルス対策の特別措置法の改正案の主な内容です。

対策の実効性を高めるため、総理大臣が緊急事態宣言を出す前でも、集中的に対策を講じられるよう「まん延防止等重点措置」を新たに設けるとしています。

そのうえで、政府が対象地域とした都道府県の知事は事業者に対し、営業時間の変更などを要請し、応じない場合は命令ができるとしているほか、要請や命令を行うために必要な範囲で、立ち入り検査などもできるとしています。
そして、命令に応じない事業者には行政罰としての過料を科し、宣言が出されている場合は50万円以下、出されていない「重点措置」の場合は30万円以下とするほか、立ち入り検査を拒否した場合も20万円以下の過料を科すとしています。
一方、影響を受けた事業者に対する支援に必要な財政上の措置を講じると明記しています。

また、今の法律では、緊急事態宣言が出されている時に開設できるとしている「臨時の医療施設」について、政府の対策本部が設置された段階から開設できるとしているほか、国や自治体は患者や医療従事者などが差別的な扱いを受けることがないよう、実態の把握や相談支援、啓発活動などを行うとしています。

感染症法改正案の内容

感染症法の改正案では、知事などが感染者に自宅療養や宿泊療養を要請できる規定が新たに設けられています。

そのうえで、感染者が要請に応じない場合は入院の勧告を行い、拒否したり、入院先から逃げ出したりした場合には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科すとしています。

また、保健所の調査に対して、正当な理由がないのに虚偽の申告をしたり、拒否したりした場合は、「50万円以下の罰金」を科すとしています。
さらに、厚生労働大臣や知事が、医療機関に必要な協力を求めることができるとし、正当な理由がないのに応じなかった場合には協力を勧告し、従わなかった場合は、医療機関を公表できる規定も盛り込まれています。

このほか、国や自治体との間で感染者に関する情報共有を図るため、保健所のある自治体から都道府県への発生届の報告や、保健所の調査結果の関係自治体への通報を義務化するなどとしています。

検疫法改正案の内容

新型コロナウイルスの水際対策で政府は、海外からの入国者に対し、空港での検査で陰性であっても、原則14日間は自宅などでの待機を求めています。

しかし、法的な根拠がなく、求めに応じてもらえないケースもあることから、政府は、対策の実効性を高めようと、検疫法の改正案をまとめました。

改正案では、検疫所長が、感染者に対し、自宅待機などの必要な協力を要請できる規定を新たに設けました。

要請に応じない場合には、施設に「停留」させる措置などがとれるとしています。

さらに「停留」などの措置に従わない場合には、刑事罰として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」を科すとしています。

菅首相「国会で速やかに審議を」

菅総理大臣は、参議院本会議で「この1年間に得られた知見や経験を踏まえ、対策をより実効的なものとし、何としても感染を抑えていかなければならない。このため、個人の自由と権利に配慮して、必要最小限の私権の制限としたうえで、支援や罰則の規定を設けるなど必要な見直しを検討してきた。与野党の意見も踏まえたうえで、法案を決定したところで、今後、国会で速やかに審議をお願いしたい」と述べました。

西村経済再生相「1日も早く成立を」

西村経済再生担当大臣は、記者会見で「私自身が取り組んできた経験を踏まえ、これまで検討してきたことを閣議決定できた。緊急事態宣言のように、幅広い業種で経済を止めるのではなく、そうなる前に感染が拡大している地域で対策を取れるよう『まん延防止等重点措置』を盛り込んだ」と述べました。

その上で「これから与野党で協議が行われるが、1日も早く審議に入れればありがたいし、1日も早く成立できるようしっかり準備したい」と述べました。

坂井官房副長官「丁寧に説明 国会で審議を」

坂井官房副長官は、閣議のあとの記者会見で「特別措置法の改正案には罰則も規定されているが、さまざまな意見があると承知しているので、政府としては、丁寧に説明し、国会で審議していただきたい」と述べました。

田村厚労相「速やかな成立 目指したい」

田村厚生労働大臣は、記者団に対し「必要な対策を講じるうえで、しっかりと実効性を確保するための規定を整備した。国と地方の役割を明確化し、権限を強化するものなので、速やかな成立を目指したい」と述べました。

また、罰則をめぐり、野党側が改正案の修正を求めていることについて「改正案の内容は、いろいろな法律との法的なバランスを考えてのものだが、国民の権利にも影響してくるため、人権に配慮すべきという声もあるので、しっかりと国会で議論してほしい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「傾聴に値する提案 取り込むことも」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「与党として承認した法案で、まずは今の姿でしっかり通すことが何よりも重要であり基本スタンスだ。ただ、国会審議の中で傾聴に値する提案があれば、それを取り込むことはやぶさかではない」と述べました。

自民 後藤政調会長代理「今後の議論で修正も」

自民党の後藤政務調査会長代理は、「これまで野党の意見も聞きながら議論し、事業者に対する支援に関する記述を変更するなど、できるかぎり政府案に意見を取り込んできた。きょうも野党の意見を十分聞いたので、修正についても、今後、法案の取り扱いの中で議論されることになるだろう」と述べました。

立民 泉政調会長「罰則よりも補償が先」

立憲民主党の泉政務調査会長は、「罰則よりも十分な補償が先だと言い続け、政府・与党の動きを注視してきたが、現時点では、減収した方々に対する個別の支援の在り方が、全く見えてない。補償が具体化されていない中では、過料の撤回を含めて見直しを求めていく」と述べました。