コロナ禍で厳しい財政 「基礎的財政収支」試算 赤字額4倍以上

内閣府は、21日開かれた経済財政諮問会議で、財政の健全性を示す「基礎的財政収支」の最新の試算を示しました。今年度は69兆4000億円の赤字と、赤字額は新型コロナウイルスの感染拡大前の1年前に示した試算から4倍以上に膨れ上がり、財政再建への道のりは一段と険しくなっています。

政府は政策にあてる経費を国債などに頼らず、税収などでどれだけ賄えるかを示す国と地方をあわせた「基礎的財政収支」という指標を2025年度に黒字化する目標を掲げています。

内閣府が21日示した最新の試算によりますと、今年度は▼新型コロナウイルスへの対応で追加の歳出が膨らんだことや、▼税収が落ち込んだことなどから、69兆4000億円の赤字になるとしています。

赤字額は▼去年7月に示した試算より1兆9000億円増えていて、▼感染拡大前の去年1月に示した試算の15兆3000億円と比べると4倍以上に膨れ上がり、財政再建への道のりは一段と険しくなっています。

今後の見通しについては、▼実質で年間2%程度の高めの経済成長が続く想定でも、政府が黒字化を目指す2025年度は7兆3000億円の赤字で、黒字化の実現は目標より4年遅れて2029年度になるとしています。

さらに、▼経済成長が年間1%程度の想定では、2025年度は12兆6000億円の赤字で、試算の最終年度である2030年度になっても、なお10兆3000億円の赤字が残るとしています。
政府が掲げる2025年度の黒字化という目標の達成は極めて厳しい状況ですが、新型コロナウイルスによる経済への打撃が長期化すれば、さらなる財政出動や税収の落ち込みによって、財政状況は悪化が続くことも懸念されます。

債務残高も大幅に膨らむ GDPの2.16倍

新型コロナウイルスへの対応で、大規模な財政出動を続けた結果、債務残高も大幅に膨らんでいます。

内閣府が21日 示した最新の試算では、国と地方をあわせた債務残高は今年度末には1159兆8000億円に上るとしています。

これは、▼去年7月の試算より13兆3000億円、▼感染拡大前の去年1月の試算と比べると、79兆1000億円増えていて、債務の規模はGDP=国内総生産の2.16倍に上ることになります。
政府は財政健全化に向けて、GDPに対する債務残高の比率を安定的に引き下げていくことも目標に掲げています。

▼実質で年間2%程度の高めの経済成長が続く想定では、GDPの拡大が債務の増加のペースを上回るため、債務残高の比率は2023年度には2倍を切り、試算の最終年度の2030年度には1.68倍に低下するとしています。

▼一方、経済成長が年間1%程度の想定では、債務残高の比率は2030年度になっても、2倍を下回らないという厳しい試算となっています。

各国の財政も悪化 日本の厳しさは突出

新型コロナウイルスへの対応で日本以外の各国も大規模な財政出動に踏み切った結果、財政は急速に悪化しています。

そうした中でも、指標から見た日本の財政の厳しさは突出しています。

IMF=国際通貨基金によりますと、各国のGDPに対する債務残高の比率は、去年(2020年)10月時点の推計で、▼アメリカが感染拡大前のおととし(2019年)の12月末より22ポイント余り上昇して131.1%、▼フランスは20ポイント余り上昇して118.7%、▼イギリスは22ポイント余り上昇して108%、▼ドイツは13ポイント余り上昇して73.2%、▼中国は9ポイント余り上昇して61.7%などとなっています。

これに対して、▼日本は28ポイント余り上昇して266.1%と債務残高の比率は突出して高く、上昇率も各国より大きくなっています。
世界各国の財政の悪化について、内閣府は「中長期的に財政の持続可能性に疑問が出てくる可能性がある」として、世界経済のリスクになっているとしています。

西村経済再生相「質の高い成長を実現 改善を続けていく」

財政の健全性を示す「基礎的財政収支」の黒字化が政府の目標より4年遅れて2029年度になるとする最新の試算が示されたことについて、西村経済再生担当大臣は記者会見で「今後の歳出改革を織り込まない形での試算なのでこれまで同様の歳出改革を進めていけば、2029年度から3年程度の黒字化の前倒しが視野に入ってくる」と指摘しました。

その上で西村大臣は「当面は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることに全力を挙げるが、民需主導で質の高い成長を実現する中で、歳出・歳入両面での改善を続けていく」と述べました。