小池都知事「処方箋は『ステイホーム』」感染減少も状況は深刻

東京都の新型コロナウイルスの「モニタリング会議」が開かれ、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持したうえで、新規陽性者数の7日間平均などは減少しているものの高い値で推移しており、極めて深刻な感染状況が続いているなどとして引き続き厳重な警戒が必要だと指摘しました。

東京都は21日、「モニタリング会議」を開き、専門家は都内の感染状況と医療提供体制をいずれも最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は先週13日時点の1699人から20日の時点で1471人に減少し、増加比が87%に低下しておよそ1か月ぶりに100%を下回ったものの、依然として高い値で推移しているとしています。

専門家は「入院と宿泊療養の受け入れの限界を超え、通常の医療もひっ迫し、極めて深刻な感染状況が続いていて引き続き厳重な警戒が必要だ。実効性のある対策を継続することで新規陽性者数を大幅に減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

一方、医療提供体制については、重症患者数が20日の時点で160人となり、最大値を更新したなどと指摘したうえで、「重症患者数は新規陽性者数の増加に遅れて増加する。医療提供体制のひっ迫が長期化し、通常の救急医療も含めて危機的な状況にある。新規陽性者数を減らし、重症患者数を減少させなければならない」とコメントしました。

小池知事「処方箋は『ステイホーム』

東京都の小池知事は記者団に対し「緊急事態宣言が出されてから2週間となり、夜の人の流れは低下に転じているが、昼間を含めた全体の流れはまだ抑え切れていない。また20日、重症患者が過去最多の160人となりモニタリングの指標も高い水準で推移している」と述べました。

そのうえで「ウイルスへの最も有効な処方箋は『ステイホーム』だ。皆さんには窮屈な思いをさせるが、社会全体で感染機会を減らすことで、収束に向けて協力してもらえるようお願いしたい」と述べ、夜間だけでなく昼間も含めて不要不急の外出を自粛するよう改めて呼びかけました。

モニタリング会議での分析結果

21日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、20日時点の7日間の平均が1471.4人で、前の週からおよそ227人減少しました。

増加比はおよそ87%となり、およそ1か月ぶりに100%を下回りましたが、専門家は「1週間の新規陽性者の合計が1万人を超え、依然として高い数値である。入院と宿泊療養の受け入れの限界を超え、通常の医療もひっ迫し、極めて深刻な感染状況が続いている。新規陽性者を大幅に減少させることが最も重要である」と指摘しました。

今週、確認された人を年代別の割合でみると、
▽20代が最も多く23.9%でした。

次いで
▽30代が18.4%、
▽40代が15.1%、
▽50代が13.7%、
▽60代が7.7%、
▽70代が6.4%、
▽10代が5.8%、
▽80代が4.5%、
▽10歳未満が3%、
▽90代以上が1.5%でした。

65歳以上の高齢者は1604人と前の週より189人増えました。

専門家は「重症化リスクの高い65歳以上の陽性者が非常に高い値で増加し続けている。家庭、施設をはじめ、重症化リスクの高い高齢者への感染の機会をあらゆる場面で減らすとともに、基本的な感染予防策を徹底する必要がある。また無症状であっても、感染源となるリスクがあることに留意する必要がある」と指摘しました。

一方、感染経路が分かっている人のうち、家庭内での感染は前の週とほぼ同じ56.6%で、感染経路別では25週連続で最も多くなりました。

年代別にみると、80代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多くなりました。

80代以上では、病院や高齢者施設などの施設内での感染が62.7%と最も多くなりました。

このほか、感染経路が分かっている人のうち、
▽施設内は15.3%、
▽職場内は6.9%、
▽会食が6.4%、
▽夜間営業する接待を伴う飲食店は0.3%でした。

会食での感染が前の週より減った一方で、施設内での感染が2倍以上に増えています。

専門家は「同居する人からの感染が最も多いのは職場、施設、会食、接待を伴う飲食店などから家庭内に持ち込まれた結果と考えられる。日常生活の中で感染するリスクが高まっており、テレワーク、時差通勤・通学などの拡充を図り、感染リスクを大幅に減らす必要がある」と指摘しました。

そのうえで「人と人がマスクを外して長時間、または深夜にわたる飲酒や飲食、大声で会話するなどの行動は感染リスクを著しく増大させ、新規陽性者がさらに増加する。また在留外国人も来月の旧正月に向けて、自国の伝統や風習などに基づいたお祭りなどで密に集まることも予想され、言語や生活習慣の違いに配慮した情報提供と支援が必要である」と呼びかけました。

このほか、今週も引き続き帰省先での感染や年末年始のホームパーティー、そして会食などを通じての感染例が多数報告されていることを明らかにしました。

また「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路の分からない人の7日間平均は20日時点で864.9人です。

前の週よりおよそ231人減りました。

増加比は前回157%だったのが、今回は79%に低下しました。

ただ、専門家は「引き続き厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

また今週の全体の新規陽性者のうち、感染経路の分からない人の割合はおよそ60%でした。

専門家は「積極的な疫学調査による接触歴の把握が難しくなり、感染経路が分からない人の数とその割合も増加している可能性がある。調査の優先度を踏まえ、作業の効率化を図るなどの取り組みを進めるとともに、保健所への支援が必要である。また20代から40代で感染経路がわからない人の割合が60%を超えていて、感染経路の追跡が困難になりつつある」と指摘し、強い危機感を示しました。

このほか、今月18日までの1週間で確認された新規陽性者のうち19.2%が無症状でした。

専門家は「無症状や症状の乏しい感染者の行動範囲が広がっている可能性がある。感染機会があった無症状者を含めた集中的な検査などの体制強化が引き続き求められる」と指摘しています。

都は、都外に住む人がPCR検査のためだ液を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが335人いました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は20日時点で10.8%と、1週間前の14.2%から低下したものの、専門家は「非常に高い値が続いている」と分析しています。

入院患者は20日時点で2893人で、今月13日の時点より373人減少しましたが、専門家は「非常に高い水準で推移していて、医療提供体制のひっ迫は長期化し、通常の救急医療なども含めて危機的状況が続いている」と分析しています。

そのうえで「現状の新規陽性者数に対応する病床を確保するためには、通常の医療を縮小せざるをえない。救急受け入れの困難や予定していた手術の制限など、都民が必要とする通常の医療をこれまでどおり実施できない状況が生じている」として強い危機感を示しました。

また「保健所から都に寄せられる入院調整の依頼は今月16日以降は連日、1日に500件を超え、翌日以降の調整に繰り越したり、待機を余儀なくされたりする例が多数生じている」と述べ、受け入れ体制を確保するために新規陽性者を大幅に減少させる必要があると指摘しました。

このほか、自宅で療養している人は、20日時点で8965人と前回より551人増えていて、専門家は「自宅療養者の急激な増加に伴い健康観察を行う保健所の業務が急増している」と指摘しました。

また都の基準で集計した20日時点の重症患者は前回より19人増えて160人で、過去最多となりました。

年代別にみると、
▽40代が5人、
▽50代が19人、
▽60代が53人、
▽70代が59人、
▽80代が23人、
▽90代が1人でした。

性別では男性は127人、女性は33人でした。

専門家は「重症患者のための医療提供体制がひっ迫している。人工呼吸器の離脱まで長期間を要する患者が増加すると、重症患者数は急増し、医療提供体制の危機的状況は数週間続くと思われる」と分析しています。

そのうえで「例年、冬期は脳卒中や心筋梗塞などの入院患者が増加する時期であり、新型コロナの重症患者だけでなく、ほかの傷病の重症患者の受け入れが困難になっており、多くの命が失われる危機に直面している」と強い危機感を示しました。

一方、今月18日までの1週間で都に報告された亡くなった人は前の1週間より16人減って39人でした。

このうち34人は70代以上でした。