アメリカのパリ協定復帰 どうなる世界の温暖化対策?

アメリカのバイデン新大統領は就任初日に「パリ協定」に復帰するための文書に署名しました。中国に次ぐ世界第2位の温室効果ガスの排出国、アメリカがパリ協定に復帰することで世界の気候変動対策は加速していくでしょうか。

パリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度未満に保つとともに1.5度に抑える努力をすることを目標に掲げています。

目標達成にかかせないとされているのが世界各国が温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることです。

バイデン新大統領の目標は“2050年実質ゼロ”

バイデン新大統領は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを掲げています。

アメリカではトランプ前大統領がパリ協定からの離脱を決めた後も企業や自治体が「われわれはまだパリ協定にいる」というグループを立ち上げて温室効果ガスの削減を進めてきました。

実質ゼロの目標は企業や自治体の取り組みを後押しすることになります。

中国も去年9月に2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力すると表明していて、アメリカもあわせれば、世界の温室効果ガスの排出の60%以上を占める国が、今世紀中頃までに実質ゼロを目指すことになります。

発展途上国への資金支援は強化されるか?

また、発展途上国への資金支援の強化も期待されています。

トランプ前大統領は、先進国が途上国での温室効果ガスの削減や温暖化の被害を抑える対策を支援する緑の気候基金への拠出を取りやめました。

アメリカが約束していたのは30億ドル、日本円にして3100億円あまりにのぼりますが、緑の気候基金の事務局によりますと去年12月31日の時点でその3分の2は拠出されていません。

アメリカのパリ協定への復帰は、途上国への資金支援を後押しすることにもつながりそうです。

バイデン新大統領が指導力を発揮できるのか?

さらにトランプ前大統領のもとアメリカはG7=主要7か国やOECD=経済協力開発機構などの枠組みで気候変動対策をめぐり各国と対立し、一致したメッセージを出すことが出来ませんでした。

WMO=世界気象機関によりますと去年の世界の平均気温はおよそ1.2度上昇していて、気候変動の深刻な影響を抑えるために残された時間は多くないとされています。

2050年という長期の目標だけでなく、今後10年の取り組みが重要で、バイデン新大統領が指導力を発揮して、アメリカも含め、各国の対策の強化につなげられるかが、課題となります。

専門家「新たな競争の時代に入った」

アメリカのバイデン新大統領が「パリ協定」に復帰するための文書に署名したことについて、気候変動問題をめぐる国際交渉に詳しい東京大学・未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授は「大変意義深い」と評価しました。

高村教授は「中国に次いで温室効果ガスの第2の排出国であるアメリカがパリ協定に戻るのは大変意義深く、これを機に国際的にも温暖化対策が進むと期待される」と述べました。

そのうえで「アメリカ国内では排出量そのものは下がる傾向だったが、ほかの国はより強力な対策をとって再生可能エネルギーの導入量を増やしてきた。今後、アメリカがこの分野で国際的なリーダーシップをとるためには、国内の対策をどう進めるかが重要になる」と指摘しました。

また、気候変動対策をめぐる国際情勢について「ヨーロッパや中国といった主要な国が、積極的な気候変動対策をとることを通じて経済や産業を次世代化していこうという同じ方向性を持っている。バイデン新大統領の就任によってこの方向性にアメリカも加わることになり、新たな競争の時代に入ったともいえる」と述べました。

「目標引き上げへの圧力高まるか」

そして、日本への影響については「アメリカの大きな市場に環境対応の製品やサービスを提供していくビジネスチャンスだ」と述べる一方、「電気自動車への移行を急ぐ動きが進むことで自動車産業は対応が必要になるだろう」と指摘しました。

さらに「バイデン氏の公約には温室効果ガスの排出削減策を十分にとっていない国からの輸入に対して国境で税をかけるというものもあり、日本としても対策がしっかりとられることが非常に重要になる」と話しました。

そのうえで、今後の展望について「バイデン政権のもとでは日本を含む各国の排出削減の目標の引き上げへの圧力が、高まってくるとみられる。ことしは地球温暖化対策の国連の会議、COP26が開かれ、各国が目標を見直し再提出する年でもあり日本のエネルギーの在り方、そして削減目標について議論しなければならない年になるだろう」と指摘しました。