軽井沢スキーバス事故 運行会社社長ら在宅起訴 長野地検

5年前、大学生など15人が死亡した長野県軽井沢町のバス事故で、死傷事故を起こす可能性があると予測できたのに、大型バスの運転に不慣れな運転手に対して必要な訓練をしなかったなどとして、長野地方検察庁はバス会社の社長と元社員について、21日業務上過失致死傷の罪で在宅起訴しました。

在宅起訴されたのは、バスを運行していた東京の会社、「イーエスピー」の社長、高橋美作被告(59)と、運行管理担当の元社員、荒井強被告(52)です。

5年前・平成28年1月15日の未明、長野県軽井沢町でスキーツアーのバスがカーブを曲がりきれずに道路脇に転落し、乗客の大学生など15人が死亡、26人がけがをしました。

起訴状によりますと、2人は死亡した運転手が「大型バスの運転は不安だ」と採用面接で話すなど、死傷事故を起こす可能性があると予測できたのに、大型バスの運転に不慣れな運転手の運転技術を把握したり、必要な訓練をしなかったりしたなどとして、業務上過失致死傷の罪に問われています。

長野地検は2人の認否について明らかにしていません。

一方、ギアチェンジの操作ミスなどで事故を起こしたとして、過失運転致死傷の疑いで書類送検された当時65歳の運転手は死亡しているため不起訴としました。

事故後の捜査は

5年前・平成28年1月15日の午前2時ごろ、長野県軽井沢町の国道で、スキーツアーのバスが時速およそ95キロまで加速してカーブを曲がりきれずに道路脇に転落し、乗客の大学生13人と乗員2人の合わせて15人が死亡、26人がけがをしました。

バスを運行していた東京の会社「イ―エスピー」には、当日の出発前に点呼をしていなかったことや、死亡した運転手の健康状態を記した台帳を作成していなかったことなど、運行に関わる多くの法令違反が見つかりました。

警察は捜査の結果、4年前の6月、「イ―エスピー」の社長と運行管理を担当していた元社員について、重大な事故を起こす可能性を予測できたのに大型バスの運転に不慣れな運転手への指導を怠ったとして、業務上過失致死傷の疑いで書類送検し、これを受けて長野地方検察庁が2人を起訴するかどうか捜査を続けてきました。

また、遺族は再発防止のために責任の所在を明確にする必要があるとして、社長と元社員を起訴するよう求めていました。

遺族のコメント

小室結さん(当時21)の両親

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の小室結さん(当時21)の両親は、起訴を受けて「事故から5年たちましたが、ようやく起訴となりほっとしています。2度とこのような事故が起きないよう、法廷で事故原因と責任が究明され、被告が法のもとにしかるべく裁かれることを希望します」というコメントを出しました。

大谷陸人さん(当時19)の両親

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の大谷陸人さん(当時19)の両親は「事故で突然未来を奪われた13人の子どもたちはもう戻ってはきませんが、起訴については一歩前進だと思います。この起訴が旅行業界とバス業界に警鐘を鳴らし交通安全につながればと思います」というコメントを出しました。

池田衣里さん(当時19)の父親

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の池田衣里さん(当時19)の父親は「この日まで5年というとても長い時間がかかりましたが、私たち家族の時間はあの日から止まったままです。起訴されたことで衣里が戻ってくるわけでもなく、悲しく切ない思いは今まで以上に感じています。2度とこのような悲惨な事件が起こらないためにも、法の場で真実を明らかにし再発防止へ一歩も二歩も前進することを願っています」というコメントを出しました。

西堀響さん(当時19)の父親

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の西堀響さん(当時19)の父親は起訴を受けてコメントを出しました。

この中で「5年を過ぎてようやく大きな節目を迎えました。起訴になることを信じていましたし、捜査していただいた警察や検察、関係者の皆様に感謝を申し上げます。社長や元社員は自分たちの犯した過ちを素直に認め、相応の処罰を受けるべきです。響にはようやく第一歩が踏み出せたと言うことができます。ただ、どうあっても響はもう帰ってきません」としています。

西原季輝さん(当時21)の母親

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の西原季輝さん(当時21)の母親が起訴を受けてコメントを出しました。

この中で「長野地方検察庁が社長と元社員の2人をようやく起訴してくれました。本当なら1月15日の命日に次男にいい報告をしたかったです。刑事裁判では2人の責任をしっかりと追及し、真実が明らかにされることを切望します。起訴をきっかけに、このような悲惨な事故が2度と起きないような仕組み作りがされるよう、これからも国に対して訴えていきたいと思います」としています。

花岡磨由さん(当時22)の父親の均さん

軽井沢町のバス事故で亡くなった大学生の花岡磨由さん(当時22)の父親の均さんが、起訴を受けてコメントを出しました。

この中で「起訴までの5年は長かったです。被告は亡くなった13人の若者を思い浮かべて事件の重大さを背負い、裁判では真実を語ってほしいです。利益を優先して安全管理を怠ったことが事故を招いたと思っているので、裁判では被告の責任を明らかにして、今後の教訓として再発防止に繋がることを願っています」としています。

次男の寛さん(当時19)を亡くした田原義則さん

軽井沢町のバス事故で次男の寛さん(当時19)を亡くした田原義則さんがコメントを出しました。

田原さんは「真の原因責任の所在が不明確なままの5年間は、被害者本人の無念さはもちろん、私たち遺族にとってとてもつらい日々でした。起訴の報告を受けて、遺族会として求め続けてきた『事故の真の原因究明』に少し近づけたと感じています」としています。

そのうえで、バス会社に対しては「あのとき、会社で何が起こっていたのか、なぜ安全な運行管理ができなかったのか、ありのままを速やかに法廷の場で説明していただきたいです」としています。

4人の教え子を亡くした法政大学名誉教授 尾木直樹さん

軽井沢町のバス事故で4人の教え子を亡くした法政大学名誉教授の尾木直樹さんは、21日の起訴を受けてコメントを出しました。

尾木さんは「率直に言って、ようやく起訴にこぎつけた安どの気持ちが大きいです。5年待ちましたが、一区切りというか、明日からようやく一歩を踏み出せるような気がします。彼らの命を取り戻すことはできません。今回の起訴がバスの安全性をより一層高めるきっかけになることを願ってやみません。司法の場ではきちんと責任が問われることを強く求めます」などとしています。

バス運行会社「コメントは差し控える」

軽井沢町のバス事故で社長と元社員の2人が在宅起訴されたことについて、バスを運行していた東京の会社「イーエスピー」は「長野地方検察庁から正式な知らせが来ていないのでコメントは差し控えます」としています。

元検事「捜査に時間 やむを得ない」

軽井沢町のバス事故で長野地方検察庁がバスを運行していた会社の社長ら2人を在宅起訴したことについて、元検事の高井康行弁護士は「今回の運転手のように会社などで働く人が事故を起こした場合、その使用者である社長にも業務上過失致死傷罪が成立するかどうかは難しく、その立証をするためには事故の原因や、社長らが事前にどこまでこの事故を予測できたのか詳しく調べる必要があり、捜査に時間がかかったのはやむを得ない」と話しています。

そのうえで、今後の裁判について「本当に運転手に大型バスを運転する十分な技術がなかったのかや、社長らが今回の事故を具体的に予測することが可能だったのかなどが争点になる」と指摘しました。

長野県警交通部長「交通の安全と円滑を図る活動を推進」

軽井沢町のバス事故で、バスを運行していた会社の社長ら2人が在宅起訴されたことを受けて、長野県警察本部で事故当時、交通指導課長として捜査に当たった倉科邦彦交通部長がコメントを発表しました。

倉科部長は「起訴については検察庁の判断であり、県警としてはコメントする立場にありません。改めて事故で亡くなった皆様に謹んで哀悼の意を表すとともに、被害に遭われた方々に対し、心からお見舞い申し上げます。また、後遺症などに苦しんでいる方々には1日も早い回復をお祈り申し上げます。県警としては引き続き道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図る活動を推進して参ります」としています。