二重国籍認めないのは憲法違反の訴え 初の司法判断へ 東京地裁

外国の国籍を取得し日本国籍を失った人たちが、日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反すると訴えている裁判で、21日に東京地方裁判所が判決を言い渡します。二重国籍を認めない規定をめぐって初めての司法判断となります。

日本では国籍法で、外国の国籍をみずからの希望で取得すると日本国籍を失うと規定し、複数の国籍を持つことを認めていません。

スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った6人は、二重国籍が認められないのは憲法に違反するとして、国に対して日本国籍があることの確認を求める訴えを起こしました。

国籍法に詳しい専門家によりますと、世界では二重国籍を認める国が増え、去年1月の時点で195の国と地域のうち、およそ4分の3にあたる150で認められているということです。

裁判で国側は「二重国籍が常態化すると、個人をどの国が保護するかや、どの国に納税するかなど、国家間や国家と個人との間で重大な矛盾が生じる。二重国籍を防ぐという理念は合理的だ」と主張しました。

二重国籍を認めない規定が憲法に違反するか争われた裁判は初めてです。

判決は21日午後1時すぎに東京地方裁判所で言い渡されます。

原告団長 二重国籍の議論活発になること期待

原告の団長を務める野川等さんは、52年前にスイスに移り住み、貿易会社を経営してきましたが、会社の経営者がスイス国籍でないと参加できない入札があったため、20年前、スイス国籍を取得しました。

当時、外国の国籍をみずからの希望で取得すると日本国籍を失うという国籍法を知らず、日本のパスポートを更新するためスイスの日本大使館を訪れた際、知ったということです。

野川さんは21日の判決を前にNHKのインタビューに応じ「無効となった穴の開いた日本のパスポートを見たときは心が裂かれるような思いだった。決して自分から日本国籍を捨てたわけではない」と話していました。

そのうえで「国籍法は明治時代に作られた法律をもとにしていて、早急に見直さなければならない。この法律によって海外に住む多くの日本人が苦労している」と訴え、今回の裁判をきっかけに二重国籍についての議論が活発になることに期待を示しました。

親の介護でやむなく外国籍を選んだ人は

海外で暮らす日本人の中には、家庭の事情でやむなく外国の国籍を選んだ人たちもいます。

都内に住むリード真澄さん(64)は、アメリカ人と結婚し、永住権を取得して、25年以上にわたってテキサス州で暮らし、高校の教師として働きました。

しかし、日本で暮らす母親を介護するため、長期間継続して日本に滞在しなければならなくなりました。

ただ、永住権を失わないためには少なくとも年に2回はアメリカに戻らなければならず、アメリカの生活と日本での介護を両立させるため、13年前、日本に長期間滞在できるアメリカの国籍を取得しました。

リードさんはその後母親の介護を続け、母親は去年11月に亡くなりました。

リードさんは「アメリカでの生活の基盤を失わず、高齢の母の介護のために帰国できる選択をした」と話し、ほかに選択肢はなかったとしています。

リードさんはアメリカの国籍を選ぶと日本国籍を失うことは理解したうえで選びましたが、漢字ではなくローマ字となった在留カードの自分の名前を見たり、日本の永住権の申請を行ったものの認められなかったりしたとき、自分が外国人になったことを思い知らされたといいます。

リードさんは「『あなたはもう日本にはいないでね』と言われたようなもの。そのとき私は外国人なんだと感じました。私たちは外国籍を選択しただけで、決して日本国籍を捨てたわけではない。裁判を通じて二重国籍を認めてほしいと強く願っています」と訴えました。

専門家「海外で活躍する人増え 今回の裁判は非常に重要」

憲法が専門で国籍法や市民権に詳しい南山大学の菅原真教授は、世界的に二重国籍を認める国が増えている背景について「グローバルに仕事する人が増えていく中で、現地の国籍を取る必要性が高まり、子どもが複数の国籍を持つ人も増えてきた。多くの国では、むしろ複数国籍を認めるほうが個人や社会にとってメリットが大きいと考えられようになり、1980年代から2000年代にかけて認められる方向に変化した」としています。

また、日本が二重国籍を認めない理由について、菅原教授は「国際法の理念とされてきた国籍は1つであるべきだという考え方が、まだ支配的だからだ。多様性をいかに認めるかについて、日本の場合は遅れているのではないか」と指摘しています。

そのうえで「国籍唯一の原則はたしかに理想だが、ノーベル賞を受賞した学者やスポーツ選手など海外で活躍する人が増えてきている。今回の裁判は非常に重要だ」と話しています。