ブラジル 中国製ワクチン接種開始 南米で中国・ロシア製が拡大

各国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が進む中、アメリカやイギリスで開発されたワクチンが確保できていない南米では、中国製やロシア製のワクチンを使う動きが広がっています。感染者の累計が世界で3番目に多いブラジルでは、中国製のワクチンの接種が今週から始まりました。

ブラジルでは17日、中国の製薬会社シノバックが開発したワクチンと、イギリスの製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンの緊急使用がそれぞれ承認されました。

このうち、シノバックのワクチンの接種が今週からブラジル全土で始まり、最大都市サンパウロの中心部にある病院では、1日当たりおよそ1000人の医療関係者が接種を受けています。

接種を受けた1人は「ワクチンは私たちが生きる上での希望だ。状況が改善することを願っている」と話していました。

また、アルゼンチンでは、ロシア製のワクチンの接種が先月から始まっています。

中国製やロシア製のワクチンをめぐっては、ヒトで安全性や有効性を確かめるために行われる臨床試験の結果が十分に公表されていないという指摘が欧米のメディアから出ています。

ただ、アメリカやイギリスで開発されたワクチンが確保できていない南米では、価格が比較的安く管理も簡単だなどとして、中国製やロシア製のワクチンを使う動きが広がっています。

貧困地区を中心に感染拡大 医療ひっ迫

ブラジルでは貧困地区を中心に感染が拡大していて、累計の感染者数は850万人を超えて世界で3番目、死者数は21万人を超えて世界で2番目の多さとなっています。

一方、経済対策を優先するボルソナロ大統領は、ブラジル国内で臨床試験が行われていた中国で開発されたワクチンについて「私は接種しない」と述べていました。

また、今月1日には大勢の人でにぎわう海で自身が海水浴をする様子をインターネット上に投稿するなどの言動を繰り返してきました。

しかしその後、状況が変わります。

政府の自粛要請にもかかわらず、多くの人々が街に繰り出す状況が続いたあと、感染が再び拡大。

多い日には1日当たりの新たな感染者数は8万人、死者数は1500人を超え、多くの都市で医療態勢がひっ迫し始めたのです。

中でも、感染者が多い熱帯雨林のアマゾンがある北西部アマゾナス州では、治療に必要な酸素やベッドの不足が深刻になり、州政府は多くの病院でベッドの使用率が100%になっているとして、他の州に患者を搬送する事態となっています。

有効な対策を見いだせない中、ブラジル政府が頼ったのが、ボルソナロ大統領が使用に消極的だった中国製のワクチンでした。

ブラジルで行われた臨床試験では有効性は50%程度で、市民からは安全性についても不安の声が出ていましたが、ブラジル政府は17日、WHO=世界保健機関の基準を満たしているとして承認しました。

中国政府 ブラジルへの支援加速もワクチン全く足りず

一方、中国政府もブラジルへの支援を加速させています。

医療事情がひっ迫しているアマゾン地域の病院に対し、不足している酸素の供給を約束したほか、サンパウロではシノバックが開発したワクチンを製造する工場の建設にも協力しています。

ただ、ブラジルが確保している中国製のワクチンは現時点では1000万回分程度と、2億人を超える人口には全く足りておらず、ブラジル政府は中国の製薬会社から追加でワクチンを購入したいとしています。