迅速なワクチン接種へ 菅首相 政治主導で対応の考え

新型コロナウイルス対策で、菅総理大臣は、自民党からの感染収束に向けた提言を受け、ワクチンの接種を迅速に進められるよう河野規制改革担当大臣を中心に政治主導で対応していく考えを示しました。

自民党の新型コロナウイルス対策本部の本部長を務める下村政務調査会長らは、19日午後、総理大臣官邸で菅総理大臣と会談し、感染の収束に向けた具体策を盛り込んだ提言を手渡しました。

提言では、ワクチン接種について、一般の国民についてもワクチン接種が可能となる時期を明示するとともに、迅速な接種を図るため自治体などと連携し、接種会場の確保や確実な配送が可能となるようにすることを求めています。

これに対し、菅総理大臣は、提言の内容に理解を示したうえで「ワクチン接種は多くの省庁にまたがる課題であり、河野規制改革担当大臣を担当に決めた。政治主導で臨み、早め早めの対応をしていきたい」と述べました。

このあと、下村氏は記者団に対し「ワクチンの迅速な普及に向け、党としても作業チームを立ち上げ、政府をバックアップしていく」と述べました。

ワクチン接種担当 河野規制改革相「やりきれるよう調整する」

新型コロナウイルスのワクチン接種を担当する河野規制改革担当大臣は、総理大臣官邸で菅総理大臣と2時間近くにわたって会談したあと、記者団に対し「現状把握や認識の共有をし、菅総理大臣からは『しっかりやれ』という指示を受けた。1億2000万人分のワクチンを接種するロジは、想像を絶すると言ってもいい。1つずつ分解して、やりきれるように調整していく」と述べました。

国の接種計画は?

新型コロナウイルスのワクチンについて、日本政府はアメリカの製薬大手のファイザーとモデルナ、それにイギリスのアストラゼネカの合わせて3社との間で合わせて1億4500万人分の供給を受けることで、契約や基本合意を交わしています。

このうち、国内で唯一、承認の申請を行っているファイザーからは6000万人分の供給を受けることになっています。

厚生労働省が現在、安全性や有効性の審査を進めていて、承認されれば、来月下旬をめどにおよそ1万人の医療従事者に先行して接種を開始する計画です。

続いて、3月中旬をめどに医療従事者などおよそ300万人に、3月下旬をめどに65歳以上の高齢者およそ3600万人に接種できる体制を確保し、4月以降、基礎疾患のある人や高齢者施設の従事者などを優先しながら順次、接種を進めることにしています。
厚生労働省は、ファイザーのワクチンを保管するため、マイナス75度前後で冷凍できる「超低温冷凍庫」およそ1万台をことし6月にかけて順次、自治体に配備する方針です。

接種の準備進む

都内の自治体では、体制づくりなどの準備が進められています。
接種は、住民票を登録している市区町村から郵送でクーポンが届いたあと、電話などで予約すれば、医療機関などで無料で受けられるということです。

東京・墨田区では保健所の業務がひっ迫する中、「新型コロナウイルス予防接種調整担当課」という専門の部署を新たに設置し、19日は、クーポンの発送の準備などを行っていました。
墨田区では、ワクチンをマイナス75度で保管できる専用の冷凍庫2台を独自に確保し、医療機関が少ない地区の住民にも足を運んでもらえるように、公共施設をワクチンの接種会場にすることも検討しています。
墨田区の岩瀬均参事は「原則、区民全員が限られた期間の間にワクチンを2回接種する必要があるので、しっかり周知していくことが必要だと思います。そのための準備をきちんと行いたい」と話しています。

接種に向けた課題も

接種を行う自治体にとっては、医師や看護師などの人手や、多くの人に効率的に接種するための施設をどう確保するかが課題となっています。

すでに接種が始まっているアメリカやフランスなどの一部の地域では、ワクチンがあっても人手や会場を確保できず、思うように接種が進んでいないという指摘も出ています。

さらに、接種に必要なクーポンの送付なども感染対策と平行して短期間で進めなければならず、自治体の負担になるおそれがあります。

また、NHKが今月9日から3日間18歳以上を対象に行った世論調査では、ワクチンについて
▽「接種したい」という回答が50%だった一方、
▽「接種したくない」という回答が38%にのぼりました。

背景に、ワクチンの安全性に対する不安などがあるとみられ、副反応などに関する正確な情報を政府がどれだけ国民に発信できるかも重要な課題となっています。

世界の接種状況は?

イギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイトによりますと、これまでに世界で接種された新型コロナウイルスのワクチンはおよそ4000万回分で、人数ではおよそ3700万人にのぼります。

人数ではアメリカがおよそ1千万人と最も多くなる一方、人口に対する接種を受けた人の割合ではイスラエルがおよそ25%と最も高くなっています。
世界各国の政府などが公表したデータをまとめているイギリス・オックスフォード大学の研究者などが運営するウェブサイト「アワ・ワールド・イン・データ」によりますと、今月18日の時点で全世界で接種された新型コロナウイルスのワクチンは合わせておよそ4000万回分で、少なくとも1回は接種を受けた人の数は、およそ3700万人にのぼります。

これを国別に見ますと、最も人数が多いのは、
▽アメリカでおよそ1060万人、
▽中国の1000万人、
▽イギリスの400万人余り、
▽イスラエルの210万人余りなどとなっています。

一方、少なくとも1回、ワクチンの接種を受けた人が人口に占める割合は、
▽イスラエルが最も多く24.91%、
▽UAE=アラブ首長国連邦が17.41%、
▽バーレーンが8.32%、
▽イギリスが5.98%、
▽アメリカが3.2%などとなっています。