入院できない...「私 死ぬかも」

入院できない...「私 死ぬかも」
「呼吸はできない、胸は苦しい、立てない、意識が遠のく、フワフワする。それでも入院できず、病院に受診すらできず、本当に私死ぬかもと思うようになってきた」

こうSNSに投稿したのは、東京都内で3人の小学生の子どもと暮らす30代の女性です。PCR検査で陽性が判明しましたが、すぐ入院できず、11日間余儀なくされた自宅療養中に投稿したものです。

自宅療養をする人のなかには、39度5分の高熱にうなされても受け入れ先の医療機関が見つからず救急搬送してもらえなかったというという70代のお年寄りも。

SNS上からは、入院したくてもできない人たちの悲痛な叫びが聞こえてきます。
(ネットワーク報道部 記者 成田大輔 谷井実穂子)

感染判明から日々の記録をSNSに 募る不安…

投稿をしたのは、東京・大田区で小学生の子ども3人と暮らすシングルマザーの女性です。

女性にせきや胸の痛みなどの症状が出始めたのは、年の瀬の12月30日でした。

新型コロナウイルスに感染して感じたことや、治るまでの記録を残したいと、1月3日からSNS上に投稿を始めました。

投稿には、検査結果を待つ不安な気持ちがつづられています。
1月3日の投稿
「PCR検査の結果が不安で…。肺が痛いのが気になってなかなか寝付けない」
この日、病院から陽性だったと告げられました。
女性には高血圧やぜんそくの持病があるといいます。最悪の場合、症状が悪化して呼吸困難になると急変して重症化する恐れもあるとして当初は保健所から入院を勧められたといいます。

このとき女性は「もっとひどい人を優先してあげてください」と答えました。当初は、熱が39度を超えることもありましたが、意識を失ったり、呼吸困難になったりする症状はなかったため、自宅療養でも乗り切れると思ったといいます。

1月3日の時点で、東京では自宅療養をする人が3000人余りに上っていました。入院したくてもできないお年寄りやより症状が重い人たちへの入院を優先して欲しいと思っていました。
女性は一度は入院を断ったものの、持病があることもあり、万が一に備えて入院の準備を進めていました。

体調は日に日に悪化「私 死ぬかも」

1月5日の投稿
「息苦しい、頭痛、耳の奥が痛い、腹痛、下痢。トイレとか行くだけで息があがり倒れそうになる」
体調は日に日に悪化していきます。

1月5日、保健所から体調を確認する連絡が入った時、入院ができないか改めて尋ねると状況は一変し、すぐ入院はできないと告げられたといいます。
1月5日の投稿
「いつ入院できるかわかりませんしって。それだけひっ迫してるってことなんだろうな」
保健所では感染した人に受け入れ先を探す「入院調整」が難航しているため、入院できないまま回復するまで自宅療養を続ける可能性もあるというのです。

女性はこのときの心境を投稿していました。
1月5日の投稿
「入院調整になったけど、『入院できないまま終わることもありますのでご理解ください』。死ぬかもなってはじめて思った」
3人の子どもたちは、離れて暮らす元の夫の所に預けることになりました。

1月6日。徐々に呼吸がしづらくなり、意識が遠のくこともあったといいます。
1月6日の投稿
「呼吸はできない、胸は苦しい、立てない、意識が遠のく、フワフワする。それでも入院できず、病院に受診すらできず、本当に私死ぬかもと思うようになってきた」

「食べ物もきょうで底をつく」

そして、不安は自宅の食材についても。

残っていたのはのど飴や昆布、それに栄養ドリンク。

僅かな食べ物でなんとか食いつなぐしかありませんでした。
1月6日の投稿
「買い出しも食事の用意もできない。食欲無いけど、何か食べないとまた意識なくなっちゃう。食べ物もきょうで底をつく」
それでも女性はこの日、この状況を何とか乗り越えようと、自分を奮い立たせることばを投稿しています。
1月6日の投稿
「コロナになんて負けたくない。入院できなかろうが食べれなかろうが絶対に回復してやる。そして2週間後、子どもたち抱きしめるんだ」

「夜になると涙が止まらなくなる」

1月7日。

子どもが大きな支えになっている女性にとって、会えないことへの不安が募っていました。

PCRの検査の結果、元夫に預けた3人の子どもたち全員が陽性になったと連絡がありました。

女性は、刻々と変わる症状に苦しみながらも投稿を続けています。
1月7日の投稿
「毎日どころか、何時間おきで症状が変わってくる」
「陽性が出てから体重5キロ落ちた…」
1月9日の投稿
「呼吸は苦しいし、胸だか肺は痛いし…。夜になると涙が止まらなくなる」

知人の差し入れに涙

食材への不安を投稿してから6日後、知人から食べ物の差し入れが届けられました。

感謝の気持ちでいっぱいになり、涙が止まりませんでした。
1月12日の投稿
「たった今、知人から食べ物の差し入れ頂きました。わざわざ天気が悪いのに届けてくれて感謝しかないです…」

入院できたのは陽性判明から12日目

この間、女性は自宅療養が続くのであれば、せめて医療機関で受診できないか保健所に問い合わせましたが、受診するにも調整が必要で、すぐには無理だと告げられたといいます。

結局、自宅療養の間に医療機関を受診することはできませんでした。

女性が入院できたのは、陽性がわかって自宅療養を始めてから12日目のことでした。
女性
「無事入院できてほっとしました。新型コロナが流行する前から、手洗い、うがい、消毒、マスクの着用など気をつけて生活してきたつもりです。感染した12月も食品や日用品の買い出しと病院以外は外出していませんでした。新型コロナの感染力は改めてすごいと思いました。入院の必要がある人にとって自宅療養中に容体急変のリスクがあるのであれば、せめて医師の診察や薬がもらえるようになればと思います。自宅療養で手遅れになってしまうケースも出ているという報道もありますが、私ももしかしたら同じ状況になったのではないかと考えると、本当に怖いです」

大田区 “感染者急増で職員の手がまわらなく”

女性の住む東京・大田区の担当者に、なぜすぐに入院ができないのか、話を聞きました。

大田区の保健所では感染した人の受け入れ先を探す「入院調整」が難航しているといいまます。

PCR検査を受ける人が増えているほか、感染者も急増し、保健所の職員が対応に追われて手がまわらなくなっているというのです。

区内の医療機関で1月10日までの1週間にPCR検査を受けた人は、4576人と前の週に比べて2000人以上増加。

このうち、陽性が確認された人は611人とおよそ2倍に増えました。

さらに、病床がひっ迫して入院先を探すのに時間がかかっているといいます。

大田区感染症対策課によりますと、高齢者や持病の程度が重い人を優先して入院させていて、ベッドが空くのを待ってもらう状態が続いているといいます。

実際に入院できるまでどれくらい日数がかかるのか尋ねると「個別に対応しているので、一概に何日とはいえない」と話しました。
大田区は、自宅療養中や自宅で待機する人などが、肺や心臓などの機能の悪化に早く気づくことができるよう、指にはめて血液中の酸素濃度を測定する「パルスオキシメーター」という医療機器を貸し出しています。

しかし、数に限りがあるため全員には行き届いていないということです。
大田区の担当者
「入院したいという相談も増えていますが、高齢者や症状が重い人などを優先して対応しています。コロナに特効薬があるわけではなく、入院しても必ずしも治るわけではなく、難しいところです。自宅療養や入院待ちの方には、24時間対応している電話相談があるので活用してもらいたい」
大田区は今月下旬から自宅で待機している人に向けて食料の配布などをして新たな支援に取り組むことにしてるということです。

自宅で体調急変しても救急搬送されない人も

自宅で入院待ちをしている間に体調が急変したものの救急搬送してもらえなかったという人もいます。

肺気腫の持病がある千葉県の70代の女性は、1月5日にPCR検査を受け、7日に陽性の連絡がありました。

入院を希望しましたが、呼吸が安定しているという理由で自宅待機になったといいます。

ところが、その日のうちに39度5分の熱が出て、「パルスオキシメーター」の酸素飽和度も80%台まで低下しました。

酸素飽和度は一般的に96~99%が標準値とされ、90%以下の場合は呼吸不全になっている可能性があるとされています。

救急車を呼んで搬送先を探しましたが、病床の空きがなく、2時間余りかかっても受け入れ先が見つからなかったといいます。

この日、17か所の医療機関に断られ、自宅に戻らざるを得ませんでした。
その2日後。今度は酸素飽和度が75%まで下がったため改めて救急車を呼んだところ、重篤な状態だと判断され、受け入れ先の病院が見つかって入院できたということです。

その後、母親の看病で通っていた娘もPCR検査で陽性となり、39度台の熱で自宅療養が続いているといいます。
70代女性の娘
「2回目に救急搬送された時に受け入れ先が見つからなかった時は、母の命を諦める覚悟をしました。保健所も医療現場も救急隊も精いっぱいやってくださっていますが、医療を受けられる方は限られているというのを知ってもらいたい」

医療機関 “満床状態で断らざるを得ない”

医療機関も、新たな患者を思うように受け入れられない状態が続いています。

東京医科歯科大学医学部附属病院では、去年の11月以降、コロナ患者用の病床がほぼ満床の状態が続いています。

特にこの病院では、重症患者を多く受け入れているため、他の病院に入院していて重症化した患者を転院させたいという要請も多く、空きが出ても1時間ほどですぐに満床になるということです。

感染制御部長の貫井陽子医師によると、自宅療養中に症状が悪化し、救急車を要請する患者はこのところ急増しているということですが、満床状態が続いているため受け入れを断らざるを得ないこともあったといいます。
東京医科歯科大学医学部附属病院感染制御部長 貫井陽子医師
「自宅で相当我慢をして、呼吸状態がかなり悪化してから救急車をやっと要請する患者さんも増えています。病院では、入院患者の高齢化などで、1人の治療にかかる時間が非常に長くなっていて、新しい患者を受け入れたくても受け入れられない状況が続いています。新しい患者をどんどん受け入れたいという思いは山々なのですが、今いる患者さんの治療を優先せざるを得ず、本当に歯がゆい状態です」

自宅療養中 最も注意が必要なのは「呼吸」

貫井医師は、自宅で過ごす患者やその家族が注意すべきこととして、“重症化のサイン”を教えてくれました。

新型コロナに感染すると、発熱や味覚・嗅覚障害などの複数の症状が見られますが、1番、注意が必要なのは「呼吸」だということです。

次のような兆候が見られた場合は、肺炎が悪化している可能性があるといいます。
・明らかに呼吸の回数が増えている(1分間25回以上程度)
・唇が紫色になっている
・横になった状態では呼吸が保てず、起きた状態で呼吸をしている
・問いかけへの反応が遅く、いつもよりぼーっとしている
こうした場合は、ためらわずに保健所などに連絡し、入院の手続きを急いでもらうよう相談してほしいとしています。

また、夜間などで保健所などと連絡がつかない場合は、救急車を呼んで構わないそうです。

貫井医師は「重症化を防ぐためには、先手、先手を打つ必要がある。本人や家族が、体調の変化を早めに感じ取ってほしい」と呼びかけています。

11日間の自宅療養「人生で初めてこんなにつらい思い」

東京で自宅療養をする人は1月17日の時点で初めて9000人を超えて過去最多となりました。そして、これまでに自宅療養中に症状が悪化し、亡くなる人も相次いでいます。

11日間の自宅療養を余儀なくされた女性に改めて何を伝えたいか尋ねました。
女性
「本当に人生で初めてこんなにつらい思いをしました。当たり前に病院に行けて、当たり前に食事ができること、それがかなわない日が自分にやってくるとは思っていなかったです。感染していない人へ伝えたいことは、いま新型コロナに感染したら持病や基礎疾患があっても入院や治療が受けられず、手遅れになってしまう恐れもあるということです。感染するリスクは決してゼロではないと肝に銘じて、食料や必要な薬をはじめ備えられることには十分備えることがどんなに大切なことかを痛感しました」