「死ぬんじゃないか…」自宅療養者が急増 その過酷な状況とは

東京都内では、新型コロナウイルスの感染が再び拡大した去年11月ごろから感染後に自宅で療養する人が増え続けています。その数は17日時点で9000人を超え過去最多となりました。こうした中、自宅療養を続けている東京 新宿区の40代の男性とその家族がNHKの取材に応じ、過酷な状況を明かしました。

都内では、新型コロナウイルスの感染が再び拡大した去年11月ごろから感染後に自宅で療養する人が増え続けていて、
▽去年11月30日にはじめて1000人を超えると、
▽先月25日に2000人、31日には3000人をそれぞれ上回りました。

今月に入ると増加のペースが加速し17日はこれまでで最も多い9043人にのぼっています。

▽今月1日の3278人と比べ2.8倍となっているほか、
▽先月1日の998人と比べると1か月半余りで9.1倍の増加となっています。

自宅療養中に死亡 関東1都6県で7人

また、NHKが関東の1都6県の自治体に取材したところ、先月以降、新型コロナウイルスに感染したあと自宅療養中に症状が悪化して死亡した人は18日の時点で▽東京都で3人▽栃木県で2人▽神奈川県と群馬県でそれぞれ1人の合わせて7人となっています。

自宅療養の男性 感染確認の経緯は

自宅療養を続けている東京 新宿区の40代の男性とその家族がNHKの取材に応じました。

男性は2世帯住宅に70代の両親と40代の妻、それに小学生の息子と娘の合わせて6人で暮らしていて、このうち小学生の娘を除く5人の感染が次々に確認されたということです。

最初に症状が出たのは40代の妻でした。

今月2日にのどの痛みが出て、その後、症状が出た70代の父親とともにPCR検査を受けた結果、今月5日に2人とも陽性と判明しました。

妻は自宅療養となった一方で、父親は高齢で中等症だったため入院しましたが、容体が急速に悪化し現在、重症だということです。
そして、濃厚接触者としてほかの家族4人も検査した結果、小学生の娘を除く3人の感染が確認されました。

娘は隔離 ガラスごしにやり取り

入院中の父親の容体を心配する一方で、自宅療養を続ける家族も過酷な状況に置かれています。

陰性だった小学生の娘は、感染しないよう自分の部屋で隔離生活を送っていて、ガラスごしにやり取りするだけだということです。

また、
▽40代の男性は、4日間39度以上の高熱が続き夜も眠れないほどの息苦しさが続きました。

▽70代の母親も6日間38度台の熱が出て、これまでに味わったことのないけん怠感があるということです。

毎日、保健所から健康観察の連絡を受けますが、医師に診察してもらえないことに不安を感じたといいます。

パルスオキシメーターという、血液中の酸素濃度などをはかる医療機器については保健所では手配できないと説明を受けたということです。

男性は「元気だったのが突然39度5分まで上がって、たまたま持っていた薬を飲んでなんとか熱を落としながら過ごした。最後、マジで死ぬんじゃないかと思うくらい悪くなっていたので、医者にもかかれない、入院もできないしという状況でどう対応していいかわからなくなりました。自分がどのようなステージにいるのかがわからなかった」と話していました。

70代の母親は「陽性と判明したその日くらいから熱が出始めて、せきこんだり味覚嗅覚がなくなってきた。家にいるのはすごく不安です。主人は急激に症状が悪化したのでこわいので入院できたらしたいと思います」と話していました。

医師の訪問診療を受ける

日々症状が悪化していると保健所に相談し続けた結果、急きょ区内のクリニックの医師に対応してもらえることになり、今月15日に訪問診療を受けました。

そして、肺の状況を診察してもらい薬の処方を受けたほか、酸素濃度などをはかる医療機器を借りることができたということです。

70代の母親は「できれば入院したいですが今は医療がひっ迫していて大変だと聞いているので難しいとわかっています。高熱が続き大丈夫かと本当に心配でしたが、肺は大丈夫と言われてほっとしました。危険を冒してでも往診してくれる医師がいて本当にありがたかった」と話していました。

40代の男性は「保健所の方は健康把握のために電話をくれますが、容体が悪くなったら救急車を呼んでくださいということでした。最初は無症状でもその後、熱が上がったり息苦しさが出たりするが、それでも自宅から出られず医師にも診てもらえず薬も処方されず耐えなければいけないのはとてもつらいです。せめて医師と電話で相談できるとか、往診してもらうとか各自治体で考えていただかないと、自宅療養で亡くなる人が増えるのではと感じます」と話していました。

訪問診療した医師は

この家族を訪問診療したクリニック院長の英裕雄医師は「逃れようのない家庭の中で感染が広がって、家族の症状がだんだん悪化していくのを見るのは不安にもなるしショックだと思います。自宅療養をする人をどうやって支えていくのか、保健所や病院ときちんと連携をとりながら適切な入院医療に結び付けるなど、自分たちも急いでノウハウや態勢をつくっていくしかない状況になっていると思う」と話していました。

自宅療養 気をつけるポイントは?

自宅療養をする際に気をつけるべきポイントについて、感染症学が専門の国際医療福祉大学の松本哲哉教授に聞きました。
松本教授は「新型コロナウイルスはかぜと似た症状が1週間程度続くことがあるが、いったん症状が軽くなっても急変して息苦しさを感じたり肺炎が重症化したりする場合があり、その際は人工呼吸器を使わなければさらに症状が悪化してしまう。自覚症状と実際の症状がかい離していることもあり、少なくとも悪化しだす兆候を見逃さないことが重要だ」と話していました。

また、具体的に気を付けるポイントについては「指にはめて血液中の酸素濃度を測定する『パルスオキシメーター』を使うのがわかりやすいが、▽唇が青くなっている▽肩で息をするなどの変化があればためらわずに保健所に連絡し入院できなければ救急車を呼んでほしい」と話していました。

また「医療機関はひっ迫しているがタイミングを逸すると死につながる。家族に顔色を見てもらうことや、電話で会話したり自分で鏡を見たりして自分の症状を客観的に把握することが重要だ。1人で我慢せずに、つながり合って観察することを心がけてほしい」と話していました。