新型コロナ 症状治まった“あと”が大事 クラスター発生の病院

去年、医師や看護師を中心とした感染者の集団=クラスターが起きた川崎市の病院では、新型コロナウイルスに伴うある課題に直面しました。
求められたのは症状が治まった“あと”の医療従事者の対応の見直しで、ルールを改め、今、第3波で急増する感染者への対応を続けています。

注目は現場復帰のタイミング

川崎市の市立多摩病院では去年10月、次々に感染者が出てクラスターが発生し、医師や看護師、研修医など医療従事者21人と、入院患者など合わせて39人が感染しました。

複数の診療科で感染者が出たため、病院は院内で感染が広がっている可能性があるとみて、新たな入院患者の受け入れを休止し、救急診療も停止させました。

病院の機能の大部分が停止する中、医師や看護師、入院患者など1000人近くを検査し、陰性を確認していきました。

一方、接点がない医師や看護師の感染が同時に発覚したことで、課題となったのが病院で働く医療従事者への感染の広がりをどう防ぐのかでした。

注目したのは、鼻水や微熱などの疑わしい症状が出て、すぐに治まった場合に現場に復帰するタイミングでした。

病院では、それまで症状が治まって24時間たてば復帰を認めていましたが、新型コロナは、症状がなくなったあともウイルスが出ている可能性があると判断し、医療を守る観点から、あえて検査で2度、陰性が確認されるまでは復帰を認めないよう見直しました。

現場への復帰が遅くなり、人手が厳しくなる面もありますが、対策を徹底することで病院でのクラスターを防ぎ、新型コロナの患者の治療や地域医療を支えようとしています。

市立多摩病院の長島梧郎病院長は「今回のクラスターで、新型コロナウイルスはこれまでの基準では機能しない可能性が浮かび上がりました。医療がひっ迫する中ですが、軽微な症状でも感染した可能性のある場合は、医療従事者の陰性を確実に確認することで、すべての患者にしっかりと医療を提供し続けていきたい」と話しています。

“少しでも人との接触を減らす努力を”

川崎市の市立多摩病院では、1つの病棟を新型コロナウイルスの治療専用にしていますが、人手の面などから確保できるのは30床が限界だといいます。

このほか、ICUの2床もコロナ専用とし、ウイルスを外に出さないための陰圧機能がある病床1つで患者を受け入れています。

しかし、去年12月ごろから徐々に患者が増え始め、コロナ専用の病床も常に満床に近い状態が続いています。午前中に1床あけば午後には埋まることもあるといいます。

そうした中、この病院では、入院する患者に占める高齢者の割合が増加しているうえ、比較的症状が重い人も多くなっていて、看護師の負担が増しているということです。

「N95」と呼ばれる医療用マスクは、着けているだけで息苦しさを感じる看護師も多く、暑くて、動きづらい防護服を着用せざるをえません。高齢者の場合、医療的な看護以外にも身の回りの世話まで担わないといけない点も負担が増す要因だということです。

こうした理由から、患者が少なくて人手に余裕があれば1時間ほどで交代できていましたが、最近は1人の看護師が3時間つきっきりで対応することもあるといいます。

病院は、今後、さらに多くの患者を受け入れられるよう、病棟を新たに閉鎖して、新型コロナ専用にする見通しです。

佐藤美子看護部長は「病棟の閉鎖は、本来、そこに入るべき患者さんが入院できなくなるという悪循環が起きます。医療従事者は使命感でみずからを奮い立たせているが、少しでも人との接触を減らす努力をしていただかないと、現場は立ちゆかないレベルまできています」と話しています。