異例の入試 どう乗り切る

異例の入試 どう乗り切る
食事やタオルは別々に、家族の団らんもマスクを付けて。学校への登校は控え、父親はホテルで“自主隔離”。感染リスクを少しでも減らすため、受験生がいる家庭内での光景です。進路を左右する大事な入学試験、コロナ禍のいま、どう乗り切りますか?
(ネットワーク報道部 記者・馬渕安代、玉木香代子)

家庭内で最善を尽くしています

新年を迎え、いよいよ受験シーズンが本格化しています。今年初めて実施される「大学入学共通テスト」には、全国で約53万人が受験する見込みです。

しかし、年末からの新型コロナの感染急拡大で緊急事態宣言も出される事態となり、ことしは異例の受験シーズンに。SNS上では受験生やその家族からの不安の声や、なんとか無事に乗り切りたいという願いの投稿が相次いでいます。
ツイッターより
共通テストでコロナになったら私立受験どうなる?!もう心配事だらけこの時期にコロナかかったら受験絶対落ちる。人生終わるー
もうすぐ娘の私立入試。このまま何事もなく入試を迎えられることを願うばかり
受験生のいる家庭では手洗いや消毒の徹底、会食を避けるなど、いつも以上に感染対策に気を遣う日々を送っているようです。

神奈川県の50代の男性は高校受験を控えた娘のために実践している、さまざまな対策を教えてくれました。

家に帰ってまず最初のアルコール消毒は、玄関の外にある自分で作った足踏み式の装置で行い、洗面台の共有タオルはなくして各自がハンカチやタオルで拭くようにしました。トイレのあとは汚れた手でドアノブを触らないようペーパータオルごしに開け閉めする徹底ぶりです。

男性は受験生のほか、妻と大学生の娘の4人家族ですが、食事時間はなるべくずらし、それぞれ食事のたびに除菌作用のあるウェットティッシュで机を拭いているそうです。IT企業に勤めている男性は週に3日から4日は在宅勤務するよう切り替え、夏からは一切飲み会に行かなくなったといいます。
神奈川県の50代の男性
「受験生の娘は手洗いには相当敏感になっていて叱られることもありますが、本人が必要以上に不安にならず、受験を頑張れるよう見守っています」

ホテルで“自主隔離”も

息子が中学受験という都内に住む男性も取材にこたえてくれました。

工場などの機械のプログラミングをする男性は、ふだんから全国各地を飛び回っているといいます。出張先で新型コロナに感染し息子にうつすようなことがあってはならないと、妻と相談して1月11日以降、都内の自宅には戻らず、新宿のホテルで寝泊まりしています。
家族とのやり取りは主にラインで行い、息子には時々応援メッセージを送っているそうです。ホテルでの宿泊は、息子の中学受験が終わる来月(2月)初旬まで1か月近くになる予定です。
都内に住む男性
「ホテル代はおよそ15万円かかりますが、心情としては、お金よりも息子が無事に受験できるよう、後悔しないようにしてあげたいという気持ちのほうが強いです」

受け入れ側も様変わり

異例の対応が求められているのは受験生を受け入れる側も同じです。

「大学入試共通テスト」を実施する大学入試センターは休校の長期化による学習の遅れなどを考慮して、試験日程を1月16・17日と30・31日の2回設定。さらに2月には特例の追試も設けました。
受験会場では席は1メートルほど間隔を空け、1科目終了ごとに換気を徹底することや、無症状の濃厚接触者のための別室の確保などを大学などに要請しています。

受験生には試験日の前から体温を測定し、試験当日に体調が万全でない場合は無理せず追試験を申請することを求めています。また会場内では常にマスクを正しく着用し、フェイスシールドやマウスシールドのみでは受験できません。
大学入試センターではこれまでも新型インフルエンザが流行した2010年に追試の試験場を増やしたり、東日本大震災で被災した受験生の検定料を免除したりするなどの特例措置をとってきました。
大学入試センター 担当者
「一概に比較はできませんが、新型インフルエンザの時と比較すると日程や感染対策面でより手厚く徹底されていると感じます」

“日帰り受験”で安心を

また、大学も受験生に安心して試験に臨んでもらうための対策を打ち出しています。
都内にある東京外国語大学は2月と3月に実施する2次試験で、開始時刻を午前10時から午後1時以降にずらすことにしました。試験時間も外国語の試験を150分から90分に短縮するなどの特別措置をとります。

例年、4割の受験生が首都圏以外の地域から訪れるということで、担当者は「試験時間をずらすことで遠方からでも日帰りで受験できるようになるのでは」と話していました。

オンライン入試も

また、リモートでのやり取りを入試で活用する動きも。

福岡県や東京・渋谷などにキャンパスのある日本経済大学は2月と3月に行われる一般選抜試験で、初めてオンライン方式を導入します。去年春の緊急事態宣言で外出自粛が求められたのを機に入試と大学のオンライン化を進める担当者で検討を進めてきました。
絶対に防がなければならないのは学力試験の際にネットで解答を検索するといった不正行為です。

オンライン試験を希望する受験生にはWEBカメラがついている端末の利用を義務づけたうえで、目や体の動きなどから不正が行われていないかAI(人工知能)が監督・チェックするアプリをインストールしてもらうことにしました。インストールした端末では試験中、ネットの検索や他のアプリの閲覧もできなくなります。こうしたさまざまなチェックで、試験中に不正行為が認められれば失格とする方針です。
田代雄三部長
「地方では県外に出て戻ったときの風当たりが厳しいという話を聞いていただけに、受験生はもちろん家族や先生は心配があるでしょう。さらに、以前から遠方への受験は宿泊・交通費も高くつくため不公平感もあったと思います。デジタル技術を使っていろいろな選択肢を提供していきたいです」

随時更新される最新情報をチェック!

各大学の入試情報のサイトをのぞいてみると、感染状況の変化に合わせて随時、情報が更新されています。新型コロナに感染した場合の追試験制度や、大学入学共通テストの結果で合否を判定する特例措置を設けたりするなど、さまざまです。状況によってさらに変更が生じる可能性があるとして、各大学はホームページなどで最新の情報を確認するよう呼びかけています。

このほか、中学校や高校でも消毒や換気の徹底などに加え、机一つ一つにパネルを設置したり、教室の受験生の人数を例年よりも大幅に減らしたりするなどの対応をとっているところもあります。

勉強中もつながりたい

受験生のためにコロナ禍に合わせた学習環境を提供する動きも出ています。

いま、注目されているといううわさを聞いて取材したのは「オンライン自習室」。自習室といっても、勉強するのは自宅です。

感染防止のため、塾や予備校では自習室の利用を停止しているところがあります。密な空間や移動による感染リスクはなるべく避けたいけれど、誰かと一緒に集中して勉強したい。

こうした声を受けたサービスが人気です。
そのうちの一つ、MyroomNeoでは2017年からオンライン会議室システム「ZOOM」を使ったサービスを提供しています。

パソコンなどでログインすると画面にはほかの受験生の手元のようすが映し出されます。顔は見えないけれど「互いに見られている」という緊張感を得られるほか、専用のチャットで受験生どうし目標や進捗を報告しあうこともできます。

会議システムの管理人が監督のように「お疲れさま」とか「次回は挽回できるように」などと声をかけてくれるサポートサービスまであり、自宅にいながら自習室の環境で勉強できるそうです。

去年3月以降、利用者が増え続け、当初の4倍になっています。

MyroomNeoのスタッフ、高橋淳さんは「コロナ禍で利用者がこれほど増えるとは思っていなかったのですが、対面できなくても受験生どうしつながって刺激にしたいというニーズもあるのかもしれないですね」と話していました。

送迎つき宿泊プランで応援

地方から首都圏に移動して試験を受ける受験生の心配に応えるサービスも始まっています。相乗りハイヤーのマッチングサービスを提供する企業が企画したのは、送迎つきホテル宿泊プラン。年末年始の急激な感染拡大を受けて、急きょ企画されました。

あらかじめ指定された都内のホテルに3泊以上する受験生や保護者が利用できます。消毒を徹底したハイヤーで空港から直接ホテルへ移動し、不特定多数の人が利用するバスや鉄道での感染リスクを少しでも減らしたいというニーズに応えたもので、すでに問い合わせが相次いでいるということです。

受験生がんばって

新型コロナの終息がなかなか見えず、受験生や保護者は例年以上の負担や不安のなかで入学試験に臨んでいると思います。

とはいえ、泣いても笑っても本番はやってきます。

受験に関係する人たちのあの手この手の対策に加え、私たちも感染を広げないようにすることで、少しでも受験生の不安を取り除いてあげられればと思います。