恋人と会ったら始末書?コロナで制限どこまでOK?

恋人と会ったら始末書?コロナで制限どこまでOK?
「県外の恋人とは会うな」「夫と別居するまで出勤停止」勤務先から指示されたという新型コロナウイルスの感染防止対策の例です。感染を防ぐための自由の制限。あなたはどこまで受けいれますか?
(社会部 記者・高橋歩唯、植田治男、科学文化部 記者・水野雄太)

始末書、処分、別居まで

介護職 女性
「県外から来た恋人と会ったら、会社にバレて始末書と行動歴を書かされ、2週間の自宅謹慎処分を受けた」
畜産業 男性
「遠くの実家に帰省したら給与なしの2週間の自宅待機を命じられた」
医療関係 女性
「仕事で県外に行くことが多い夫と別居しなければ出勤するなと勤務先から言われた」
労働組合の電話相談に寄せられた声の一例です。新型コロナウイルスの感染が拡大した去年の春以降、継続して寄せられています。
仲野智 常任幹事
「従業員のプライベートな領域に企業が踏み込んで制限する傾向が全国的にみられる。特に感染者が比較的少ない地方ではどこに出かけたかや誰と会ったか周囲にわかりやすく、県外に出たことなどがわかると『村八分』のような扱いを受けてしまうという話も聞こえてくる」
労働問題に詳しい今泉義竜弁護士によりますと法律上、企業は従業員の私的な行動に対して「お願い」はできても「禁止」できる権限は例外的な場合を除いて原則ないということです。

ルールを守らないからといって処分することや、自粛を命じながら給与を支払わないことは違法になる可能性があります。

理解する声も

程度の差はあるものの企業による私生活の制限は広く行われているようです。SNS上では、従業員からの否定的な声が上がっています。
「何に基づいて会社が私権を制限できるのか」
「企業が私権の制限なんて人権意識なさすぎ」
ただ、その一方で、賛成の声もありました。一人一人の努力による自粛には限界があるとして、勤務先からの行動制限を好意的に受け止める声です。

勤務先から私生活での県外への移動を禁止されているという女性が、SNSのメッセージのやり取りで取材に応じてくれました。
小売業 女性
「きちんとしたルールを(会社が)設定してくれることに感謝している」

「感染を拡大する側にならないために『最低でもこのくらいは』と会社から提示してもらうことでより意識が高まる」

「身バレしている会社からルールを決められるほうが守る人が増える」
感染拡大を抑えるためには、自由の制限もやむをえないという意見はほかにも多く見られました。

世論調査でも自由制限『許される』

NHKが行った新型コロナウイルスに関する世論調査では次のような結果が示されました。
調査期間:去年11月4日~12月7日
方法:郵送法
対象:全国の18歳以上の男女3600人
有効回答数(率):2331人(64.8%)
感染症対策として人の移動や経済活動の制限など個人の自由を制限することが許されるかどうかについて聞いたところ、今回の緊急事態宣言前の調査時点でも許容する人が多くなっています。
許される 22%
どちらかといえば許される 65%
どちらかといえば許されない 10%
許されない 2%
となりました。
政府や自治体が行う措置についてそれぞれ許されるか尋ねる質問でも、「許される」もしくは「どちらかといえば許される」と答えた人の割合は、「外出の制限」で合計 87%、「休業要請」で合計 82%、「携帯電話の位置情報による個人の行動の把握」で合計52%となりました。
外出を禁止したり休業を強制したりできるようにする法改正が必要かきいたところ、「必要だ」42%、「必要ではない」19%、「どちらとも言えない」38%でした。

自由と安全

この調査結果について人権に詳しい憲法学の専門家2人に聞きました。
棟居快行 教授
「感染が拡大し死者も出る中で一斉にルールをはっきり決めてほしいと考える人が多くなっているのではないか。ただ、自由の制限が許されるという人たちも、一方的に規制だけを望んでいるわけではなく、強制力を伴う分、それに対する補償もしてほしいという考えだろう。コロナの時代、個人の『自由』と感染のリスクを回避する『安全』を天秤にかけたとき、安全のほうを一時的に広めに取るという考え方もあり得るが一時的な規制にしたり、規制と補償をセットにするなどして規制の行きすぎに注意する必要がある」
曽我部真裕 教授
「感染症の深刻さが増すなかで一定の規制はやむを得ないが、規制が過剰ではないかや、別の目的に乱用されないか、行きすぎを防ぐ必要がある。本当にその規制に効果があって必要なのか、必要だとすれば規制が最小限になっているか、十分に検討し、規制が運用される段階では、国会やメディア、SNSなどで監視を続ける必要がある。ヨーロッパでは、権利の制限が行き過ぎたときに行政の監視をするオンブズマンなどが機能しているが、日本ではそうした仕組みが弱いため、監視の機能を強化していくことも必要だ」

感染対策求める専門家は

政府の新型コロナウイルス対策に関わってきた専門家は、前回の緊急事態宣言の際の「緩やかな対策」を例に出してこう言います。
岡部信彦所長
「去年4月は『なるべく外出を控えてほしい』と呼びかけるなど、お願いベースの緩やかな対策を取った。強力な措置をとっていた外国からは、要請だけで収まるわけがないと思われていたが、感染者数の減少につなげることができ、緩やかな決まりでみんなが要請を守ったことが評価された。いまは感染のフェーズがより深刻になり、多くの人が思い切った対策をしないといけないと思っているということだと思うが、『せっかく緩やかな対策ができていたのに』という思いはある」

「感染症対策で自由を制限するかどうかは、本来なら平常時、頭が冷静な時に考えなければいけないことだ。個人の自由を制限する法律は一度決まれば改正されないかぎり、いつまでも生きている。時限的なものにするなど、歯止めをかけることを検討してもよいのではないか。さらに、新型コロナウイルスの感染者の致死率などをほかの病気と比較してどこまで強烈な法律が必要なのか、冷静に考えることが重要だ」
安全のための個人の自由の制限は許されるのか。
許されるならどこまで、どんな形か。

あなたはどう考えますか?