緊急事態宣言 11都府県に 各地の動きや業界の反応

新型コロナウイルス対策で、菅総理大臣は大阪や愛知など7つの府県を対象に緊急事態宣言を出し、対象地域が11の都府県に拡大されました。
政府は、宣言の対象地域で、▼飲食店の午後8時までの営業時間短縮、▼不要不急の外出の自粛、▼テレワークによる出勤者数の7割削減、▼イベントの人数制限、などの措置を講じることにしています。
緊急事態宣言が出されている地域の動きや各業界の反応をまとめました。

在宅勤務強化 オフィスを閉鎖の企業も

兵庫県伊丹市に本社がある大手タイヤメーカーの「TOYO TIRE」は、宣言が追加された兵庫県と愛知県にあるオフィスを14日から来月7日まで閉鎖し、原則、在宅勤務に切り替えました。

このうち本社ではおよそ300人が勤務し、これまで出社する社員の割合を8割削減してきましたが、14日からはすべての社員が原則、在宅勤務となります。

14日、オフィスには、オンラインの展示会に向け大容量のデータを扱う社員など一部を除き、人影はほとんど見られませんでした。

会社では去年の緊急事態宣言のときにも同じように在宅勤務を導入し、その範囲を開発などの技術職にも広げてきました。

エンジニアの男性は自宅で、会社から貸与されたパソコンを使って専用のシステムにアクセスし、タイヤの性能を予測するシミュレーションを行っていました。

会社ではこのほか、対象地域を発着する出張は原則しないよう指示しているほか、社内外の会食はすべて禁止しているということです。

TOYO TIREの北川治彦経営基盤本部長は「前回の経験を学びとして、スムーズに完全在宅に移行できた。リモート環境を生かしながら意見交換を綿密に行い、事業を継続していきたい」と話していました。

千葉 銚子 水産関係者「一時金ではやりきれず」

水揚げ量10年連続日本一の千葉県銚子市の銚子漁港では、連日、首都圏の市場やスーパー、飲食店に出荷する魚の入札が行われています。

地元の水産業者などで作る組合によりますと、2回目の緊急事態宣言が出されて以降、需要が減ったマグロやヒラメなどの高級魚を中心に価格が3割ほど下落し、売り上げを落とした水産業者が多いということです。

政府は、営業時間を短縮した飲食店に食材を卸す取引先などにも最大で40万円の一時金を支給する方針ですが、魚問屋の堀井博之さんは「従業員を抱えており、数十万円の一時金ではやりきれず、前回よりも長く続くようなら、飲食店も弱っているので、連鎖倒産する業者も出るのではないか」と話していました。

また、同じく魚問屋の島田政典さんは「一時金が出ることは悪いことではないが、買い付け金額や従業員の数がそれぞれ違うので、中長期的な対策を望んでいる」と話していました。

卸売業者「支援に条件あるのは不公平」

中小の卸売業者が軒を連ねる大阪 生野区の「鶴橋鮮魚市場」は、魚の仕入れ先として大阪市周辺の飲食店や鮮魚店を長年支えてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店の時短営業の影響などで、去年1年間に8つの卸売業者が廃業し、卸売店組合の加盟業者はおよそ20まで減りました。

組合の理事を務める早川博久さんの店でも、先月は売り上げが前の年に比べ、飲食店向けでおよそ70%、鮮魚店向けでおよそ50%減少しました。

こうした中、緊急事態宣言が出され、飲食店の夜の営業時間が14日から短縮されることを受けて、仕入れなどで市場を訪れる客の姿はまばらでした。

早川さんの店でタイやアジを購入した近くのすし店の男性は「客が激減しているので、だいぶ買い控えしています」と話していました。

今回の緊急事態宣言では営業時間の短縮要請に応じた飲食店に対して1日当たり6万円の協力金が支給されますが、卸売業者は支給の対象ではありません。

政府は緊急事態宣言の対象地域で、飲食店の時短営業の影響を受けた卸売業などの取引先に対して、法人は最大40万円、個人事業主は最大20万円の一時金を支給するとしていますが、売り上げが前年比で50%以上減っていることを条件としています。

早川さんは「飲食店と同様の影響があるのに、卸売業者は支援を受けるために条件があるのは不公平だ」と話しています。

また、千葉県野田市に食品の倉庫がある青果卸会社「フードサプライ」では、およそ5000店の飲食店に野菜や果物などを卸していましたが、緊急事態宣言が出されてから、取引先のおよそ半数の飲食店が休業し、残りのほとんどの飲食店も営業時間を短縮しているということです。

これに伴い注文のキャンセルが相次いでいて、飲食店向けの在庫の大葉やミニトマトなどを中心に出荷先が見つからず、廃棄を余儀なくされています。

ドライブスルー方式で一般向けの販売を行うなど販路の開拓を進めていますが、今月の売上は去年1月の半分ほどまで落ち込み、およそ3億円減少して赤字となる見通しだということです。

政府は売り上げが去年の同じ月と比べて50%以上減少したことを条件に、飲食店と取り引きする中堅・中小企業などに最大で40万円の一時金を支給する方針ですが、檜原純営業統括部長は「億単位で売り上げが減る会社にとっては、一律で40万円の一時金では意味がなく、規模に応じた支援が必要だ。農家からの仕入れも減らさざるをえない状況で、心苦しい」と話していました。

横浜 生活困窮者支援で見守り活動

緊急事態宣言に伴って、生活に困窮し住む場所を失う人が増えるおそれもあるとして、13日夜、路上生活者を支援するグループのメンバーが横浜駅周辺で見回り活動を行いました。

午後10時すぎから路上生活者が多い横浜駅の地下街などを支援グループのメンバー8人が巡回して、仕事を失って新たに路上で暮らし始めた人がいないかなどを確認しました。

メンバーの1人で30年ほど前から路上生活者の支援を行う高沢幸男さんによりますと、緊急事態宣言が出された先週以降「家賃が払えない」という相談が相次いでいます。

13日夜は新たに路上に出た人は確認されませんでしたが、高沢さんたちは路上で生活する人に、支援の窓口の電話番号が書かれたチラシや寄付された手編みの帽子などを配りながら、体調や雇用の状況を尋ねていました。

高沢さんは「特に緊急事態宣言が出されて以降、もともと余力のなかった人が厳しい状況に追い込まれていると思います。貧困は自己責任ではないので、早めに声をあげ、支援を受けてほしいです」と話していました。

高沢さんたちの支援グループの連絡先は、次の電話番号です。
045ー641-5599