“自宅療養中に悪化し死亡”相次ぐ 東京 神奈川など4都県で7人

新型コロナウイルスへの感染が確認された当初は入院の必要がないと判断され自宅で療養していて、急に症状が悪化して死亡する人が相次いでいます。

NHKが関東地方の自治体に取材したところ、自宅療養中に死亡した人が、12月以降、東京、栃木、神奈川、群馬の4の都県で7人にのぼっていることがわかりました。

NHKが関東の1都6県の自治体に取材したところ、新型コロナウイルスに感染したあと自宅療養中に症状が悪化して死亡した人は12月以降で、東京都で3人、栃木県で2人、神奈川県と群馬県で1人となっています。

東京都 自宅療養中に死亡した80代男性は

新型コロナウイルスに感染し、入院先が見つからず、自宅療養中に死亡した80代の男性のケースについて、入院を判断するための東京都の基準では、70歳以上であるため原則入院することになっていたものの、患者の増加で病床がひっ迫する中、当初は症状が比較的軽かったことなどから、自宅療養で対応していたと説明しています。
東京都によりますと、糖尿病を患っていた都内の80代の男性は、今月7日に新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
せきの症状があり、医療機関で検査を受けたところ、陽性と判明しました。

入院を判断するための都の基準「入院判断フロー」では、重症化リスクの高い70歳以上の高齢者は原則入院することになっています。
ただ、都によりますと、この男性の場合、70歳以上ではあるものの、当初は症状が比較的軽かったうえ、患者の増加で病床がひっ迫する中、保健所は自宅療養で対応して健康観察を行うことにしたということです。
翌日の8日朝になって37度台の熱が出て、症状が悪化したと同居する家族から連絡が入ったため、保健所と都の入院調整本部が連絡を取り合って調整しましたが、受け入れ可能な医療機関は見つかりませんでした。

こうした状況について保健所が家族に説明したところ、男性の症状が朝に比べて改善していたため、自宅療養で様子を見ることにしたということです。
9日と10日は入院の調整は行わず自宅療養していましたが、11日の朝、男性が意識がもうろうとして症状が悪化していると、家族から都に連絡が入り、救急搬送しましたが、死亡したということです。

都は「入院判断フローはあくまで目安であり、病床がひっ迫する厳しい感染状況の中で、患者の症状に応じて保健所が判断したものだ。ただ、適切に入院できていればこういう事態を招かなかったかもしれず、今後はリスクの高い人が入院できるよう調整していく」と話しています。

自宅療養中に容体悪化し死亡 東京都では3人に

東京都によりますと、これまでに都内で新型コロナウイルスの感染が確認されて、自宅療養中に容体が悪化して死亡したのは、80代の男性のほか、50代の女性、60代の男性です。

50代の女性は、発熱やのどの痛みなどの症状があり、今月6日に検査で陽性と判明しました。
女性には高血圧の基礎疾患がありますが、薬を飲むことで安定するとして、保健所が都の基準に基づいて「入院させる緊急性が低い」と判断し、自宅療養となりました。
しかし、翌7日の朝に女性は倒れ、救急搬送されましたが、死亡しました。

60代の男性は、発熱やせきなどの症状があり、去年12月19日に検査で陽性と判明し、基礎疾患がないことから自宅療養となりました。
保健所が定期的に健康観察を行い、28日には熱が下がって快方に向かっていたということです。
しかし、翌29日に自宅で倒れているのを訪れた家族が発見し、救急搬送しましたが、死亡しました。
保健所は、男性が死亡した翌日の30日に連絡をとって、症状がなければ自宅療養を解除する予定だったということです。

男性の息子がNHKの取材に応じ「亡くなる2日前に連絡を取ったときは『だんだんとよくなっていて熱も下がってきているが、少し動くと息苦しさがある』と話していましたが、まさか亡くなるとは思わず、新型コロナウイルスが想像以上に怖いものだと実感しました。父は外出を控えたりマスクをしたりと、家族の中でもいちばん感染対策をとっていたので、その点でも驚いています。自宅で療養する人が多い中、今後、父と同じように体調が急に悪化する人が増えてしまうのではないかと心配です」と話していました。

自宅療養中に死亡 栃木 神奈川 群馬でも

新型コロナウイルスへの感染が確認された当初は入院の必要がないと判断され、自宅で療養していて、急に症状が悪化して死亡する人は、NHKが関東地方の自治体に取材したところ、去年12月以降、東京都のほか、栃木、神奈川、群馬の3県で4人となっています。

このうち神奈川県では、感染し自宅で療養していた横浜市内の60代の男性が、今月6日に死亡しています。
1人暮らしのこの男性は、今月3日に感染が確認され、高齢で肺炎の症状もあったことから入院の対象でしたが、横浜市の保健所は体調もよく本人の希望もあったことなどから、自宅療養としていました。

男性は血液中の酸素濃度の値が低くなっていましたが、県の健康管理の担当者は、本人が息苦しさなどの症状を訴えず会話もできていたことなどから、正確に測定できていない可能性があるとして経過観察とし、医師の診察などは行われませんでした。
黒岩知事は「対応に問題があった」として検証するとしています。

群馬県では、感染したあと、自宅で健康観察中に容体が悪化した1人が、去年12月、死亡しています。
年代と性別は非公表の高齢者で、濃厚接触者として検査を行って陽性が判明しましたが、保健所は軽症だったことなどから入院や宿泊施設での療養の対象にせず、自宅で健康観察をしていました。
保健所は去年12月24日に電話で連絡した際、容体が安定していることを確認していましたが、翌日の25日に症状が悪化したという連絡が保健所にあり、病院に運ばれましたが、その日に亡くなったということです。

東京都内の自宅療養者 8000人超える

新型コロナウイルスの急速な感染拡大に伴って、東京都内では自宅で療養している人が増え続け、13日時点で8000人を超えています。

新型コロナウイルスに感染し自宅で療養している人は、
▼去年11月1日は215人でしたが、
▼12月1日は998人、
▼ことし1月1日には3278人になりました。
その後も増えて、1月12日に8000人を超え、
▼13日時点では8414人でした。
自宅で療養している人は日によって増えたり減ったりしますが、1か月前の去年12月13日(1208人)と比べると、およそ7倍に増加しました。

また、医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、
▼去年11月1日は273人でしたが、
▼12月1日は577人、
▼ことし1月1日には2447人になりました。
▼1月13日時点では6546人で、去年12月13日(1024人)と比べると、6倍余りに増えています。

自宅療養者に血液中の酸素濃度測る機器貸し出し

新型コロナウイルスへの感染が確認され自宅で療養する人の症状の悪化をいち早くつかもうと、東京 江戸川区は、自宅で療養する人に血液中の酸素濃度を測る医療機器を貸し出す取り組みを進めています。

江戸川区では、新型コロナウイルスへの感染が確認され自宅で療養をしている人は、14日の時点で、入院を調整している人を含めて704人に上っています。

こうした中、区は、自宅で療養する人の症状の悪化にいち早く気づけるように「パルスオキシメーター」という血液中の酸素濃度や脈拍数を測定できる医療機器の貸し出しを進めています。

区はこの機器を270個購入し、高齢者や基礎疾患のある人などに優先的に貸し出していて、1日1回、この機器で計測した酸素濃度の数値を電話で聞き取っています。

そして、数値が悪化している場合などは、体温やせきなどの自覚症状と合わせて判断したうえで、入院への優先度を決めることにしているということです。

江戸川区健康部の菊池佳子副参事は「客観的な数値が出ると、療養する人も安心感がある、私たちも対面しているわけではないので、判断を裏付ける材料になっている」と話しています。

区は今月中にもこの機器をおよそ1000個確保し、自宅で療養する人全員にこの機器を貸し出したいとしています。

東京都の小池知事は「今回の不幸な例を繰り返さないためにも、命を守ることをいちばんに掲げている都として改善していきたい」と述べ、自宅で療養している人が容体の変化を速やかに把握できるよう、血液中の酸素濃度を測る機器を配付する考えを示しました。
そのうえで、小池知事は「都民には不安を抱かせて恐縮だが、まずは感染しない、感染させないため、不要不急の外出を控えてほしい」と重ねて呼びかけました。

医師会「医療現場は確実にステージが変わっている」

東京都医師会の猪口正孝副会長は「非常に不幸な状況だ。入院がそう簡単にできない状況の中で、宿泊療養と自宅療養はキーポイントだ。自宅で療養している人が軽症から中等症や重症に変わっていくのを早く捉えるような仕組みを、今回のケースを細かく調べて、さらに進歩させていきたい」と述べました。

また、猪口副会長は、都のモニタリング会議で、現在250床を確保している重症患者向けの病床の拡大は限界を迎えているという認識を示したことについて「重症の患者が増えると、救命救急センターの医療が非常にひっ迫する。重症用の病床を増やそうとすると、ほかの病気で重症の患者の部屋をコロナの重症患者に分けなければならない。重篤で生命の問題に直結するような患者のベッドを移していくのは大変だ」と説明しました。

専門家 “自宅療養者の観察が大切”

感染症学が専門の国際医療福祉大学の松本哲哉教授は「本来であればもう少し早めに入院の判断ができるところが、医療体制がひっ迫しているため、我慢して自宅にいてもらうという状況だ。病院はすでにいっぱいの状態で、新しい患者を受け入れようと思ってもベッドの空きがなくて入院させられず、簡単にベッドを増やせる状況にもない。医療現場は確実にステージが変わっている」と話し、深刻な医療体制のひっ迫状況を指摘しました。

そのうえで、自宅療養の際の注意点について「新型コロナウイルスに感染した人の中には自分の症状の悪化を自覚しにくい人がいる。自覚症状が出たときには非常に症状が進んでいる」としたうえで、同居する人がいる場合は、感染への対策をとりながら、
▼肩で息をして呼吸が苦しそうではないかや、
▼顔色が悪くなっていないかなど、
自宅で療養している人の様子を観察することが大切だとしています。

また「パルスオキシメーターを使用し、定期的に自分の状況を数値化して把握することも大切だ」と話していました。