「量子暗号通信」低コストの信号処理手法 東大が開発に成功

インターネットなどの通信の安全性を高めるため「量子暗号通信」と呼ばれる次世代の暗号通信技術の開発が進められていますが、低コストでコンパクトな装置の実現に欠かせない信号処理の手法の開発に、東京大学の研究グループが世界で初めて成功し、量子暗号通信の普及に向けて期待が集まっています。

インターネットなどの通信では、さまざまなデータが暗号化されてやりとりされていますが、スーパーコンピューターをはるかに超える「量子コンピューター」が本格的に実用化されると、今、使われている暗号は簡単に解読されてしまうおそれがあります。

このため理論上、絶対に破られないとされる「量子暗号通信」と呼ばれる、次世代の暗号通信技術の開発が進められていて、日本は去年、東芝が事業化を発表するなど、技術開発で世界をリードしています。

現在、実用化されている技術は、光子と呼ばれる光の粒に信号を載せて通信する方式ですが、極小の粒を扱うために、環境をマイナスの温度に保つ必要などがあり、設備に高いコストがかかっています。

こうした中、東京大学の研究グループは、特殊な関数を使って信号処理を行うことで、光子を使わずに常温で、光ファイバーに通した光の波を利用する方式で、暗号に同様の強度を持たせられることを世界で初めて実証しました。

研究を行った東京大学の小芦雅斗教授は「この手法を使えば低コストでコンパクトな装置の開発が可能になる。高いセキュリティーを持つ量子暗号通信の普及に弾みがつくと思う」と話しています。

この研究成果は13日発行のイギリスの科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

民間企業のデータ通信にも活用できると期待

今回、発見された常温でも量子暗号通信の暗号の強度を保てる方法を用いると、低コストでコンパクトな装置を開発することが可能となり、軍事情報など国家的な情報のやり取りだけでなく、民間企業のデータ通信にも活用できると期待されています。

たとえば、産業用のレーザー加工の機械の分野では、AI=人工知能を組み込むことで、精密加工する素材の温度や形状などのデータを学習して、最適な加工法を自動的に見つけ出す技術の開発が進められていますが、こうした学習データは、重要な産業機密となり、高い安全性が確保できる量子暗号通信の導入が期待されています。