“飲食店アルバイトにも休業手当を” 組合が団体交渉申し入れ

営業時間の短縮が要請されている飲食店などではアルバイトで働く人たちが休業手当を受け取れないケースが相次いでいます。
このうち大手ラーメンチェーンに対して、労働組合が休業手当の支払いを求めて団体交渉を申し入れました。

飲食店で働く人たちでつくる労働組合「飲食店ユニオン」は、13日記者会見を開き、大手ラーメンチェーン「一風堂」の運営会社に対して休業手当の支払いを求めて団体交渉を申し入れたことを明らかにしました。

組合によりますと営業時間の短縮に伴いアルバイトで働く人のシフトが大幅にカットされましたが、神奈川県内の店舗からは、シフトが確定していなかった今月下旬以降の休業手当は支払われない方針が示されたということです。

その際に店舗からはシフトが確定していない分はそもそも休業という扱いにならないという説明があったということです。

労働基準法では会社の都合で休業させた場合、休業手当を支払うことが会社に義務づけられていますが、新型コロナウイルスの影響によるものが義務づけの対象となるかはケースによって異なるとされています。

厚生労働省は休業手当の支払いの義務があるかどうかにかかわらず、支払うことが望ましいとしていて企業に対して手当の負担分を助成する「雇用調整助成金」を活用することなどを呼びかけています。

「飲食店ユニオン」の尾林哲矢さんは「アルバイトやパートを中心に、収入の減少が続いていて、貯蓄がなくなって生活に支障を来す人も多くいます。すべての働く人に補償が届くよう求めたいです」と話しています。

大手ラーメンチェーン「一風堂」を運営している力の源ホールディングスは、「労働組合と交渉中なので現段階でのコメントは控えたい」としています。

アルバイトの29歳男性「いざ都合悪くなるとアルバイト切り捨て」

神奈川県内の店舗でアルバイトとして働く29歳の男性は「休業手当を支払ってほしい」と訴えています。

男性は前回の緊急事態宣言が出された去年4月より前は、週5日ほど午後10時から午前4時までの深夜帯に働き、月におよそ18万円の収入がありました。

前回の宣言では店舗が休業となったため、その間はほとんど働くことができませんでしたが、アルバイト従業員には休業手当は支払われなかったといいます。

また、前回の宣言が解除された去年6月以降も、営業時間が午後11時までに短縮されたため、アルバイトに入れる日数や時間の減少が続き、月によっては宣言前よりも4割ほど収入が減りました。

このため男性はほかにも日雇いのアルバイトなどで働いているものの、以前ほどの収入は得られていません。

今回の緊急事態宣言により営業時間は午後8時までとさらに短縮されましたが、社員などが優先してシフトに入ることになり、アルバイトが働ける時間はさらに短くなりました。

勤務先の店舗から、シフトが確定していた今月上旬は休業手当の対象となるもののシフトが確定していなかった下旬以降は対象外だと説明され、今月の収入は5万円ほどになる見込みだということです。

男性は「アルバイトも店舗では社員と同じ仕事をしていて、ふだんは『アルバイトさんのおかげで店が回っている』と言われていました。しかし、いざ都合が悪くなると、僕たちアルバイトのことは切り捨てるんだなと、納得がいきません」と話しています。

そのうえで「このままでは生活していくことができないので、ほかの仕事につくことも考えなければなりませんが、そうやって会社は逃げきろうとしているように感じます。アルバイトに対しても休業手当を支払うよう、国も促してほしいです」と訴えていました。

休業手当とは

労働基準法では会社の都合で労働者を休業させた場合、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないとされています。

厚生労働省は、新型コロナウイルスの影響による休業が会社の都合にあたるかはケースによって異なるとしています。

たとえば、在宅勤務の検討など休業を避けるための努力を尽くしていないケースでは会社の都合とされ、会社側に休業手当の支払い義務が生じることがあるということです。

また、法律上は休業手当の支払い義務がないケースでも、労使で話しあって休業手当を支払うことが望ましいとしています。

会社は休業手当を支払った場合、その費用を助成する国の「雇用調整助成金」などを活用できます。

大企業への助成は費用の一部にとどまりますが、緊急事態宣言が出ている地域では企業の規模にかかわらず100%助成されます。

飲食業などの労働組合 雇用維持へ支援求め厚労相に緊急要請

緊急事態宣言を受け、飲食業などの労働組合が雇用の維持への支援などを求める、緊急の要請書を田村厚生労働大臣に提出しました。

要請を行ったのは飲食業や観光業などの労働組合が加盟する、国内最大の産業別労働組合「UAゼンセン」で13日、厚生労働省を訪れ田村大臣に要請書を手渡しました。

UAゼンセンによりますと、これまでに加盟組合のうち40以上の組合で、労働者の勤務先が破産・廃業したり希望退職を募ったりしているということです。

また、休業手当を支払わない企業があったという声も寄せられているということです。

このため要請書では、従業員を休業させて雇用を維持する企業が利用できる、国の雇用調整助成金について、ことし2月末まで行われている上限額の引き上げなどの特例措置を延長するよう求めています。

さらに、飲食店を利用する際の感染リスクを下げる工夫について広く周知することや、感染防止対策を講じている飲食店に対して、支援策を検討することなどを求めています。

UAゼンセンの松浦昭彦会長は「居酒屋や外食の職場が時間短縮で大変な思いをしていて緊急事態宣言の中で、倒産が加速するのではと懸念している。大臣からはしっかり取り組むという答えももらった。今後は国だけでなく各地の自治体に対しても働きかけていきたい」と話していました。