コロナ禍 こんにゃくが海外で注目?

コロナ禍 こんにゃくが海外で注目?
この寒い季節、おでんや煮物、すき焼きなど多くの料理に使われる「こんにゃく」。しかし、食の多様化を背景に、こんにゃくの家庭の消費額は、ピークだった30年前の半分まで落ち込んでいる。そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、産地の群馬県では、こんにゃく製造販売会社が苦境に立たされている。そんななか、ある動画をきっかけに、海外への販路拡大に光明を見いだしている会社がある。(前橋放送局記者 渡邉亜沙)

動画でアピール

その動画とはどんなものなのか。
ネット上で見つけ、再生してみると、まず目に飛び込んできたのは「Gultenfree! Low carb! Low calorie!グルテンフリー低糖質低カロリー)」
こんにゃくの製造過程や、工場周辺の自然環境を伝えるため、実際に外国人女性とともにロケを行っていて、3分間の動画には、会社のこんにゃくづくりに込めた思いや食品としての魅力が凝縮されていた。

こんにゃくもコロナショック

この動画を公開したのは、こんにゃく芋の収穫量全国1位の群馬県の中でも、有数の産地、富岡市にあるこんにゃく製造会社「ツトム食品」。

この会社では、飲食店のほか、学校給食などにも、しらたきや板こんにゃくといった、こんにゃく製品を卸してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や飲食店の営業時間の短縮で、ことし4月には売り上げが前年の2割程度にまで落ち込んだ。
会社で営業や商品開発を担う土屋和巳さんは、人口減少が見込まれる国内で、こんにゃくの需要を回復させるのは容易なことではなく、コロナ以前から、海外への販路拡大が不可欠と考えていた。
こんにゃくの低カロリーさをアピールできれば、健康志向が強い欧米では受けるはずだと考え、大豆の粉を練り込むことで、くさみをとり、食べやすくしたこんにゃく麺の開発を進めていた。

それがようやく完成し、展示会や商談会で海外のバイヤーに売り込もうとしていたやさきに新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大したのだ。
土屋さん
「商品を新しくして、さあ行くぞという時に、予定していたものがすべてだめになってしまった。踏んだり蹴ったりでショックだった。売り上げも落ち込み、これまでに経験したことない状態。でも、みんなが困っている状態で何かできることがないか探していた」

キーワードは「動画でバーチャル視察」

海外での商談会が相次いで中止となる中、土屋さんはリモートでの商談に目を付けたが、その時すでに、リモート商談は競合他社も次々と参入していた。

どうしたら海外の事業者に関心を持ってもらえるのか、ジェトロ群馬事務所にアドバイスを求めたところ、勧められたのが、「商談用の動画」だった。
柴原所長
「インターネットのEC=eコマース(電子商取引)の市場が大きくなるにつれて皆さんもたぶん参入してくるはずなので、競争が激化するのではないか。その競争に負けないための1つのアイデアとして動画を使ったほうがインパクトが残るんじゃないかと」
柴原所長は、海外のバイヤーが重視するのは、その製品ができるまでのストーリーや生産者の思いだと指摘する。このため、冒頭の動画のようにバイヤーに、生産現場などいわばバーチャルで視察を体験してもらうための作りにこだわったのだ。
群馬県は、農産物や加工食品の輸出の面では全国的にみて遅れをとっていたため、ジェトロは、リモート商談が主流となったコロナ禍は、チャンスと捉えているという。
柴原所長
「これまでバイヤーを招き、視察してもらい、商談を行っていた。リモートであれば、群馬にいながら午前中はエストニア、午後はアメリカみたいに。1日に数か国と、それも世界中の国と商談することができる。リモート商談という形で、群馬が遅れを取り戻せる機会ができた」

コロナ禍で健康志向も追い風に

さらに、海外でも外出自粛による“コロナ太り”などで健康志向が高まり、低カロリーのこんにゃくで作った製品に関心が集まっている。

コロナ禍で健康の大切さが改めて見直されている今だからこそ、こんにゃくの魅力をアピールしやすくなっている側面もありそうだ。
「ツトム食品」では、リモート商談を始めてから、わずか2か月でアメリカの大手ネット通販会社「アマゾン」と契約が成立。さらに5か国のバイヤーと交渉をしていて、会社は手応えを感じている。

海外のバイヤーへのジェトロのアンケートでは、商談を進めていく際、動画は非常に効果があったという答えが半数以上にのぼり、「ぜひ商品を試食したい」という感想も寄せられたという。
土屋さん
「動画があることによってすごくいい評価をいただいて、ぜひサンプルをっていう形でいつもお答えをいただいてますね。アジアだけでなくEUアメリカ各国に広まっていったらいい」
リモート商談は、長くても20分ほど。通訳をはさめば、PRの時間はさらに短くなる。百聞は一見にしかずで、文化もことばも違う海外のバイヤーにただしゃべり続けるよりも3分の動画を見せたほうが、効果的だということを裏付けた形だ。

土屋さんは、新型コロナウイルスだからこそ知恵を絞り、こんにゃくの魅力を発信できる機会ができたと言う。多くの企業が売り上げの減少に苦しむ中、アイデアさえあれば乗り切ることができる、取材を通じてそんな可能性を感じた。
前橋放送局記者
渡邉 亜沙
平成29年入局。
山口局を経て前橋局に。
県政を中心に幅広く取材。