米国で流行のウイルス 国内患者から発見 慶応大学調査

新型コロナウイルスの遺伝子を解析している慶応大学のグループの調査で、現在、日本で流行しているのとは異なる系統のウイルスが、国内の患者から見つかっていたことがわかりました。
イギリスなどで広がっている変異したウイルスに対して日本では水際対策を強化していますが、グループでは、新しいウイルスが持ち込まれるリスクがあることが改めて確認されたとしています。

調査を行っているのは慶応大学医学部の小崎健次郎教授らのグループです。

グループでは全国13か所の病院で検査を受けた患者から集められた新型コロナウイルスの遺伝子を詳しく調べています。

その結果、去年11月、関東地方の病院で感染が確認された患者から、アメリカの西海岸などで流行している「20C」と呼ばれる系統の新型コロナウイルスが検出されたということです。
検出されたウイルスは感染力などの性質が変化しているという報告はないということで、グループではこの患者に海外への渡航歴が無いことなどから市中で感染した可能性があるとしています。

国内では、去年の第1波の後に残った2つの系統のウイルスが流行の主流となっていて、これとは違う「20C」の系統は去年5月以降、検疫以外では見つかっていないということです。

新型コロナウイルスをめぐっては、イギリスや南アフリカなどで見つかった感染力が強いとされる変異したウイルスに対し、水際対策が強化されていますが、グループでは海外から新しいウイルスが持ち込まれるリスクがあることが改めて確認されたとしています。
小崎教授は「遺伝子の解析から、これまでの水際対策はうまくいっていたとみられるが、海外からウイルスが入ってきているのも事実だ。全国的にウイルスの遺伝子の解析を進めて今後の状況を的確かつ迅速に把握する必要がある」と話しています。

これまで見つかった変異ウイルス

ウイルスの遺伝子は小さな変異を繰り返していて、多くの場合はウイルスの性質が変化することはありません。

一方で、新型コロナウイルスでは、ウイルスの性質に影響を与える可能性がある3つのタイプの変異ウイルスが確認されています。

1つは、去年、イギリスで確認された変異ウイルスで、感染のしやすさが最大70%程度増加している可能性が指摘されています。

症状の重さやワクチンが十分に効くかなどについては、現在調査が進められています。

WHOによりますと、1月5日現在、日本を含む世界の40の国や地域の空港検疫などでこの変異ウイルスが検出されているということです。

もう一つは南アフリカで確認された変異ウイルスで、遺伝子にイギリスで見つかったものと同じ変異があることが分かっていますが、異なる系統だということです。

症状の重さや感染のしやすさなどについては現在調査が行われています。

WHOによりますと1月5日現在で、南アフリカ以外に日本を含む6つの国や地域の空港検疫などで検出されているということです。

そして、今月はじめ、日本の空港検疫で、ブラジルから到着した人からイギリスや南アフリカとは異なる変異ウイルスが検出されました。

ブラジル保健省が日本政府に対し、4人のブラジル国内での移動経路などの情報を求め、調査を行っているということです。