銀行員が作ったアボカド 評価はいかに?

銀行員が作ったアボカド 評価はいかに?
少子高齢化に後継者不足、加えて新型コロナの感染拡大など地元の基幹産業である農業が強い逆風を受ける中、新たな特産にしようと、みずからアボカドの生産に乗り出した宮崎市の宮崎銀行。3年余りかけてようやく安定した収穫ができるようになり、このたび初めての商談に臨みました。銀行員が作ったアボカドは、どのような評価を受けたのでしょうか?(宮崎放送局ディレクター 齋藤吏恵)

品質にこだわる

宮崎県内で約6割の貸し出しシェアを誇る宮崎銀行のベテラン行員の緒方省吾さん(45)。銀行と子会社合わせて5000万円を出資して設立した農業法人の運営を任されています。

去年11月末、宮崎市郊外にある農業用ハウスを訪ねると、地元の特産にしようと3年余り前から育てているアボカドを一つ一つ丹念に確認している緒方さんの姿がありました。初めての商談を2週間後に控え、いやが上にも緊張が高まっている様子でした。

日本で消費されるアボカドの9割以上は、メキシコなどからの輸入品です。大量の需要に合わせて育ちきっていないものも一緒に運ばれてくるため、どうしても品質にばらつきが出ます。

差別化を図るため、緒方さんたちがとことんこだわっているのが品質です。
「大きさ」や「ツヤ」など、独自に定めた基準に見合うものを選び、納得したできのものしか売らないと決めています。

収穫してから2週間とされる“食べ頃”に届けられるよう、時期も慎重に見極めていました。
緒方さん
「お客様にいい状態でお届けできるように、品質と味には自信がある。市販のアボカドと食べ比べても全く違いがわかる。そこを自信に」

高級料理店で初めての商談

2週間後。

緒方さんたちが訪ねたのは高級料理店がひしめく京都の祇園。有名ガイドブックで、最高級の三つ星の評価を2年連続で受けた、日本料理店です。
すべての食材を産地や旬にこだわって選んでいるこの店。

夜のコースで2万5000円からという料金にもかかわらず、すべての席が連日、予約で埋まる人気店です。
この店では25年前から、客に人気のあるアボカドを海外から仕入れ、和の食材と合わせて提供してきました。

宮崎で育てていると知り、国産が手に入るならぜひ試したいと考えていたということで、店主の佐々木浩さんに実際に試食してもらうと…
佐々木さん
「お豆腐の濃厚なすばらしいのを食べている感じ。青臭さが無く、想像以上にクリーミー」

取り引きにつながった!

早速デザートを試作するなど宮崎産のアボカドを気に入った様子の佐々木さん。

この店では、1年を通してアボカドを使ったメニューを提供しており、どのくらい出荷できるのか尋ねました。
しかし、現時点で年間に提供できるのは1000個程度。

まずは、この冬の間だけ定期的に届ける“季節限定の食材”として取り引きすることで話がまとまりました。
佐々木さん
「もう本当にね、目からうろこ。海外産のアボカドとは全く違うもんでしたね。自分で納得した食材なのでいろんな形で宮崎のアボカドを提供していきたいです」
緒方さん
「今まで3年間やってきたことがようやく認められたっていう実感がひしひしとわいてきているところです。三ツ星料亭が使っていただけるようになったんですよってというところを武器にうちのアボカドを推し進めていきたいなと」
自信を深めた緒方さん、品質と収穫量を安定させるため、アボカド専用のハウスを1棟増設しました。

今後は、東京や大阪などにもエリアを広げて高級店向けに売り込みをかけていく方針です。
緒方さん
「宮崎銀行がアボカドを作って販売することで流通も動くし、飲食店・小売業も動く。農業を基盤に宮崎の経済を活性化できるようなビジネスモデルを創らないといけない。できるかぎり生産性を高めて、いっぱいアボカドを収穫できるよう頑張りたい」

“隗より始める”地域活性化の行方は

今回取り引きが決まったとはいえ、アボカドの生産は緒に就いたばかり。コストや手間がかかり、高級品として売り先を絞らざるをえないのが現状です。

「アボカドといえば宮崎」と言われるまでにブランド力を高めるには、販売ルートを開拓してきちんともうけを出せる、戦略的な取り組みも必要となります。

「先ず隗より始める」ことで、基幹産業である農業に刺激を与え、地方銀行本来の役割である地域経済の活性化を図ることができるのか。この珍しい取り組みに今後も注目していきたいと思います。
宮崎放送局ディレクター
齋藤 吏恵
「イブニング宮崎」で地元のユニークな人を紹介する企画リポートなどを担当