北朝鮮 キム委員長「米国は最大の敵」朝鮮労働党大会

北朝鮮の国営メディアはキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の党大会での演説内容を伝え、このなかでキム委員長はアメリカを「最大の敵」と強調したうえで、バイデン次期政権の発足を前に核・ミサイル開発を強化する方針を表明しました。

北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が今月5日から開催されている党大会で行った演説の内容を9日、映像とともに放送しました。

このなかでキム委員長は対外政策について「最大の敵であるアメリカを制圧し、屈服させることに焦点を合わせる」と述べ、バイデン次期政権の発足を前に対決姿勢を示しました。

そのうえで、「誰が政権に就こうとアメリカの実体とわれわれへの政策の本心は変わらない。新たな米朝関係を樹立するかぎは、敵視政策を撤回することだ」と要求しました。

アメリカの大統領選挙後にキム委員長が対米政策に言及するのはこれが初めてです。

さらに、キム委員長は「核兵器の小型化、軽量化を発展させ、戦術核兵器を開発し、超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」などと述べ、核・ミサイル開発を強化する方針を表明しました。

また、開発の進展については弾道ミサイルに複数の弾頭を積む「多弾頭化」や固体燃料を使ったICBM=大陸間弾道ミサイルの開発を進めているとしたほか、原子力潜水艦の設計などにも言及し、核の放棄に応じない姿勢を鮮明にしています。

国営メディアは、「党大会は続く」と伝えていて、5日目に入っているとみられます。

キム委員長 南北関係にも言及

北朝鮮の国営メディアは、キム・ジョンウン委員長が党大会で南北関係について演説した内容も伝えました。

このなかでキム委員長は韓国について「アメリカとの合同軍事演習を中止すべきだというわれわれのたび重なる警告を無視している」として南北関係の冷え込みの責任は韓国側にあると主張しました。

そのうえで3年前(2018)の南北首脳会談で合意したパンムンジョム宣言に触れ、韓国との関係について「宣言の前に戻ったと言っても過言ではなく、統一の夢はさらに遠ざかった」としています。

そして韓国に対して「現時点で以前のように一方的な善意を見せる必要はなく、われわれの正当な要求に応えた分、合意の履行のために行動した分だけ相手をする」と述べて、首脳会談での合意の履行を要求しました。

このほか、今後5年間の新たな経済計画について、「基本的なテーマはいまもなお自力更生と自給自足だ」として、輸入への依存度を下げる考えを示しましたが、計画の具体的な内容は伝えられませんでした。

韓国報道官「南北合意を履行しようとする意志は固い」

北朝鮮のキム・ジョンウン委員長が韓国との関係について演説したことを受けて、韓国統一省の報道官は「朝鮮半島の非核化と平和定着、南北関係の発展を追求していくという韓国政府の立場は一貫している。南北合意を履行しようとするわれわれの意志は固い」とする論評を出しました。

一方、報道官は「アメリカのバイデン次期政権の発足はよい機会となる」として今後の米朝関係の改善に期待を示しました。

専門家「対決と対話の両構え」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が演説でさまざまな核・ミサイル開発に言及したことについて「アメリカの関心を高めるために核実験やミサイル発射を強行する可能性に十分注意する必要がある。しかし演説で対話を完全に否定しているわけではないのでバイデン次期政権の体制が定まるのを待っているところだと思う」と指摘しました。

そのうえでキム委員長がアメリカを「最大の敵」とするとともに「新たな米朝関係」と述べたことについて「バイデン次期政権が北朝鮮にどういう姿勢で臨んで来るのか明確でないなかで、今の段階では敵対的な姿勢を示しながら、仮にアメリカが対話姿勢を見せるならそれに応じるという両構えの姿勢だ」と述べました。

そして、今後の動向については「アメリカの出方を見極めて次の対応を決めるはずなのですぐにミサイル発射や核実験を行うとは考えにくい。アメリカとの間で北朝鮮が望む形で交渉できるかどうかを探りながら、次の一手を考えていくだろう」という見方を示しました。