東京都 コロナ検査陽性でも入院先など決まらない人が急増

東京都では、新型コロナウイルスの検査で陽性になっても、入院先や療養先が決まらない人が急増し、入院が必要な人でも自宅で待機するケースが相次いでいます。
また都内では、急激な感染拡大によって、人工透析を受けていて新型コロナウイルスに感染した患者が入院できる病床が、ことしに入って満床の状態になっていることがわかりました。

「入院調整」難航 保健所の業務限界に

厚生労働省の専門家会議で示されたデータによりますと、東京都で入院や療養先が調整中となっている人は、
▽先月5日までの1週間では700人余りでしたが、
▽先月26日までの1週間で1700人余り、
さらに、
▽その翌週の今月2日までの1週間は3000人余りに達しました。
およそ1か月で4倍に増えていることになります。

感染の急拡大で陽性者が増加したことに加え、病床や宿泊施設がひっ迫し、入院や療養先を確保するのに時間がかかっていることも背景にあるとみられます。

東京 北区保健所では、先月から感染者が大幅に増加し、現在は先月上旬の2倍近くにあたる1日およそ50人の感染が確認されています。

職員を当初の5人から20人に増員して対応にあたっていますが、より難しくなっているのが「入院や宿泊療養の調整」です。

保健所では、感染が明らかになった人について、医療機関に入院してもらうか、自宅や宿泊施設で療養してもらうかを決め、行き先を調整します。

合わせて9人の職員が対応していますが、感染者が大幅に増加して職員の手が回らなくなっていることや、病床がひっ迫して入院先を探すのに時間がかかっていることから、新規感染者の半数近くは当日のうちに行き先が決まらないということです。

このため、本来入院すべき人が自宅で待機せざるをえないケースが相次いでいます。

こうした人たちは症状の急変が懸念され、保健所では1日2回、朝と夜に連絡を取るなどして健康状態をチェックしています。

これによって職員の負担が大幅に増しているといいます。

中には夜間に症状が急変する人もいて、その場合、職員が受け入れ先の医療機関を探しますが、どこもひっ迫し、すぐに入院できないケースも出ているということです。
北区保健所の前田秀雄所長は「保健所の業務はひっ迫し、限界に達しつつある。特に入院調整が厳しく、症状があるのに入院できない患者が出ていることが最大の懸念だ。入院だけではなく、宿泊療養についても受け入れの調整が難しくなってきている。危機感を通り越して、すでにキャパシティを超えている状態。この状況を改善するには感染者を減らすことしかなく、多くの人が現状を真剣に受け止めてほしい」と話しています。

さらに600床増目指すが めどは立たず

感染の急速な拡大を受けて、東京都は、都が設置する都立病院などで、新型コロナウイルスの患者を受け入れる病床をさらに600床増やして1700床の確保を目指します。

都内では感染が急速に拡大していて、都の専門家は、今の感染状況などが続けば、都内全体で確保している4000床を大幅に超える入院患者が出る可能性があると指摘しています。

さらなる病床の確保が急務となっていることから、都は「都立病院」と、都の政策連携団体の公社が設置する「公社病院」の合わせて14の病院で、今より600床を増やすことになりました。

都は現在、14の病院で1100床を確保していると説明していて、600床増えれば合わせて1700床になりますが、いつまでに確保できるかめどは立っておらず、なるべく早い時期に確保したいとしています。

一方、都は、ひっ迫している保健所の業務の負担軽減を図ろうと、年末年始に都内の保健所が共同で行った夜間の入院や転院先の調整業務を、さらに1か月延長して行うことになりました。

複数の保健所が参加して交代で医師や看護師などが都庁に集まって対応するということです。

都内 透析患者が入院できる病床も満床に

重い腎臓病などで人工透析を受けている患者は、新型コロナウイルスに感染すると、重症化しやすく死亡する割合も高いということで、原則入院してもらう対応がとられてきました。

しかし、急激な感染拡大によって、これまでに透析患者で新型コロナに感染した人は、7日時点で全国で700人に上り、この1週間だけで100人近く増加していて、新型コロナに感染した透析患者が入院できる東京都内の病床が、ことしに入って満床の状態になっていることがわかりました。

入院できない場合でも透析を止めることはできないため、透析患者の入院先を調整する団体は透析を行うクリニックに対し、個室での対応や時間帯を分けての対応など、新型コロナに感染した透析患者とほかの患者が接触しないように感染対策を施して、受け入れを続けるよう呼びかけています。
日本透析医会で対策にあたるワーキンググループの菊地勘委員長は「透析領域では『ひっ迫』というより『医療崩壊』が始まっている。透析を続ける一般のクリニックは感染症の専門家がいるわけではないので、精神的な負担も大きい。緊急事態宣言中に患者数を減らさないといけない」と指摘しています。

東京都医師会「医療という堤防を乗り越えている状態」

東京都医師会の猪口正孝副会長は、NHKの取材に応じ「東京は病床を4000床確保しているが、このままの増加ペースで患者が増えていった場合、今は入院患者はおよそ3000人だが、2週間後にはおよそ4000人、4週間後にはおよそ6700人になるという試算がある。確保している4000床を大幅に超え、入院できない人が相当出てくる可能性がある」と強い危機感を示しました。

こうした状況について「今は災害のような感じで、医療という堤防で川の流れを守っているが、今、患者が急速に増えて、堤防を乗り越えている状態。水があふれだし始めたところだと思う」としています。

そのうえで「今までなら入院して様子をみていた人たちの入院が厳しくなっている。不安を抱えたまま自宅療養をしなければいけないのは、かなり追い込まれた状態だと思っていい。自宅で症状が急変する可能性も高まるので、健康状態のモニタリングをしっかりしなければならない」と話しています。

さらに感染拡大は一般の医療にも影響を与えると指摘します。

猪口副会長は「新型コロナに対応する病院は救命救急も担っていて、がんや心筋梗塞、脳卒中など、一般の病気のためのベッドをコロナに回すことになるので、そうした医療がしわ寄せを受ける、支障をきたす可能性は十分にある」としています。

そのうえで「医療従事者は懸命に治療にあたっているが、救える命が救えない悲劇が起きる状況になってきている。感染者を減らす行動をとってほしい」と訴えました。